2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《沖縄に学ぶ》(31)

沖縄問題の本質(8):日本には国境がない

 前回掲載した「横田ラプコン」図に「横田空域と米軍基地太平洋上から横田空域を通って米軍基地にノーチェックで米軍基地に降り立った米軍関係者他が、へリコプターで六本木にあるへリポートに移動し、日本への「入国」が完成する。」という解説文が添えられていた。今回はこれを取り上げよう。

 これまで見てきたように、1952年のサンフランシスコ講和条約により日本は独立を回復したはずなのに、アメリカの軍事占領状態が継続していた。これまで、それを明らかにしてきた証拠としてアメリカで機密解除された公文書をいくつか取り上げてきたが、その中に日本がアメリカの植民地状態に置かれていることを示す文書がある。1957年2月14日、日本のアメリカ大使館から本国の国務省にあてて送られた基礎資料を基に作成された秘密報告書がそれだ。その報告書は当時、再選されたばかりだったアイゼンハワー大統領が、世界中の米軍基地の最新状況を把握するため、フランク・ナッシュ大統領特別補佐官に命じてつくらせた極秘報告書で、「ナッシュ・レポート」と呼ばれている。

 その報告書については『沖縄問題の本質(2)』でも紹介した新原昭治著『日米「密約」外交と人民のたたかい』で取り上げられているが、矢部さんが英文から部分翻訳したものを読んでみよう。

「在日米軍基地に関する秘密報告書」

 日本国内におけるアメリカの軍事行動の(略)きわだった特徴は、その規模の大きさと、アメリカにあたえられた基地に関する権利の大きさにある。〔安保条約にもとづく〕行政協定は、アメリカが占領中に保持していた軍事活動のための(略)権限と(略)権利を、アメリカのために保護している。安保条約のもとでは、日本政府とのいかなる相談もなしに(略)米軍を使うことができる。

 行政協定のもとでは、新しい基地についての条件を決める権利も、現存する基地を保持しつづける権利も、米軍の判断にゆだねられている。それぞれの米軍施設についての基本合意に加え、地域の主権と利益を侵害する数多くの補足的な取り決めが存在する。数多くのアメリカの諜報活動機関(略)の要員が、なんの妨げも受けず日本中で活動している。

 米軍の部隊や装備(略)なども、地元とのいかなる取り決めもなしに、また地元当局への事前連絡さえなしに、日本への出入りを自由におこなう権限があたえられている。すべてが(略)米軍の決定によって、日本国内で演習がおこなわれ、射撃訓練が実施され、軍用機が飛び、その他の非常に重要な軍事活動が日常的におこなわれている。

 ほとんどは、すでにこれまでの『沖縄問題の本質』で取り上げてきて、私たちにとっては既知の事柄だが、赤字部分が今回のテーマと関連する。

 矢部さんは「横田ラプコン」図から読み取れることを、次のように解説して「日本には国境がない」と慨嘆している。

 太平洋上空から首都圏全体をおおう巨大な空域が米軍によって支配されています。日本の飛行機はそこを飛べませんし、米軍から情報をもらわなければ、どんな飛行機が飛んでいるかもわかりません。

 そしてその管理空域の下には、横田や厚木、座間、横須賀などといった、沖縄並みの巨大な米軍基地が首都東京を取りかこむように存在しており、それらの基地の内側は日米地位協定によって治外法権状態であることが確定しています。このふたつの確定した事実から導かれる論理的結論は、
 「日本には国境がない」
という事実です。

 2013年にアメリカ政府による違法な情報収集活動が発覚したとき(いわゆる「スノーデン事件」)、「バックドア」という言葉がよく報道されました。つまり世界中にあるさまざまなデータべースが、表面上は厳重に保護されているように見えても、後ろ側に秘密のドアがあって、アメリカ政府はそこから自由に出入りして情報を人手していたというのです。

 日本という国には、まさに在日米軍基地というバックドアが各地にあって、米軍関係者はそこからノーチェックで自由に日本に出入りしている。自分たちの支配する空域を通って基地に着陸し、そのまま基地のフェンスの外に出たり入ったりしているのです。だからそもそも日本政府は、現在、日本国内にどういうアメリカ人が何人いるか、まったく把握できていないのです。

 国家の三要素とは、国民・領土(領域)・主権だといわれます。国境がないということは、つまり領域がないということです。首都圏の上空全域が他国に支配されているのですから、もちろん主権もない。日本は独立国家ではないということになります。

 矢部さんは続いて「ナッシュ・レポート」の赤字部分を次のように解説している。

 だんだん書いていて悲しくなってきましたが、いくらつらくても、「はじめに」で書いた「大きな謎を解く」ためには、現実をしっかり直視しなければなりません。この問題に関連してもうひとつ、非常に重要な事実があるからです。

 それは米軍基地を通って日本に自由に出入りするアメリカ入のなかに、数多くのCIAの工作員が含まれているということです。こう言うと、
 「ほら始まった。やっぱりこいつは陰謀論者だ」
と思う方がいるかもしれません。しかし、ちがうのです。先ほどど紹介した大統領特別補佐官への秘密報告書をもう一度見てください。そのなかに、はっきりとこう書かれているのです。
 「数多くのアメリカの諜報活動機関(略)の要員が、なんの妨げも受けず日本中で活動している」 とちゃんと書いてありますよね。驚くべきことではないでしょうか。こうした権利も1960年の密約によって、現在までなにも変わらず受けつがれている。

 現在でも米軍やCIAの関係者は直接、横田基地や横須賀基地にやってきて、そこから都心(青山公園内の「六本木ヘリポート」)にヘリで向かう。さらに六本木ヘリポートから、日米合同委員会の開かれる「ニューサンノー米軍センター」(米軍専用のホテル兼会議場)やアメリカ大使館までは、車で5分程度で移動することができるのです。それでも日本政府はなんの抗議もしないわけです。

 先にふれたスノーデン事件のとき、電話を盗聴された各国(ドイツやフランス、ブラジルなど)の首脳たちがアメリカ政府に激しく抗議するなか、日本の小野寺防衛大臣だけは、
 「そのような報道は信じたくない」
と、ただのべるだけでした。日本の「バックドア」は情報空間だけでなく、首都圏上空や米軍基地という物理空間にも設けられている。そのことを考えると、いまさらそんな盗聴レベルの問題について抗議しても、たしかに意味はありません。そう答えるしかなかったのだと思います。

 六本木というのは東京の都心中の都心です。そこに「六本木ヘリポート」というバックドアがあり、CIAの工作員が何人でも自由に入国し、活動することができる。そしてそれらの米軍施設内はすべて治外法権になっており、沖縄や横須賀や岩国と同じく、米軍関係者が施設外で女性をレイプしても、施設内に逃げこめば基本的に逮捕できない。これはまちがいなく、占領状態の延長です。

 PART1でお話しした私の本(『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること―沖縄・米軍基地慣行ガイド』)のメイン・タイトルにある「沖縄の人はみんな知っていること」、それは同時に「本土の日本人以外、世界中の人が知っていること」でもあるのですが、それは、
 「外国軍が駐留している国は独立国ではない」
という事実です。

 だからみんな必死になって外国軍を追い出そうとします。あとでお話しするフィリピンやイラクがそうです。フィリピンは憲法改正によって、1992年に米軍を完全撤退させました。イラクもそうです。あれほどボロ負けしたイラク戦争からわずか8年で、米軍を完全撤退させています(2011年)。綿井健陽さんという映像ジャーナリストがいますが、彼がイラク戦争を撮影した映像のなかで、戦争終結直後、50歳くらいの普通のイラクのオヤジさんが町で大声で、こんなことを言っていました。
 「アメリカ軍にアドバイスしたい。できるだけ早く出て行ってくれ。さもなければひとりずつ、銃で撃つしかない。われわれはイラク人だ。感謝していることもあるが、ゲームは終わった。彼らはすぐに出て行かなければならない」(『Little Birds イラク戦火の家族たち』)
 普通のオヤジさんですよ。撃つといってもせいぜい小さなピストルをもっているくらいでしょう。しかし、これが国際標準の常識なんだなと思いました。占領軍がそのまま居すわったら、独立国でなくなることをよく知っている。

 前出の孫崎享さんに言わせると、実はベトナムもそうなんだと。ベトナム戦争というのは視点を変えて見ると、ベトナム国内から米軍を追い出すための壮大な戦いだったということです。

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