2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《沖縄に学ぶ》(25)

沖縄問題の本質(2):行政協定と地位協定(2)

 前回で改めて知ったことを簡単にまとめると次のようになろう。
 日本政府は「行政協定」の改定を求めて「地位協定」を締結したが、最も肝要な日本国法令尊重義務規定(地位協定第16条)が抽象的、観念的な域に留まり、個別具体的な事項ごとの国内法制度による担保という実際的な規定をかく欠陥協定であった。

 その欠陥条項(第16条)の条文は次の通りである。
『日本国において、日本国の法令を尊重し、及びこの協定の精神に反する活動、特に政治的活動を慎むことは、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の義務である。』
 この条文について外務省の『日米地位協定Q&A』は「米軍には日本の法律が適用されないのですか。」という設問を設定して、次のように答えている。
一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には特別の取決めがない限り接受国の法令は適用されず、このことは、日本に駐留する米軍についても同様です。このため、米軍の行為や、米軍という組織を構成する個々の米軍人や軍属の公務執行中の行為には日本の法律は原則として適用されませんが、これは日米地位協定がそのように規定している(第3条[基地内の合衆国の管理権]、第17条[刑事裁判権]を念頭に置いているようだ)からではなく、国際法の原則によるものです。一方で、同じく一般国際法上、米軍や米軍人などが我が国で活動するに当たって、日本の法令を尊重しなければならない義務を負っており、日米地位協定にも、これを踏まえた規定がおかれています(第16条)。』

 つまり政府の解釈では、基地内では国内法は適用できないが、我が国(基地外)での私人としての活動では国内法が適用される、と言っている。まるで基地内は我が国ではなく、我が国内には基地はないと言っているように読めるが、あきれてしまう。エリート官僚の頭脳はこのような詭弁を考え出すように訓練されているようだ。そして、基地内では国内法を適用できない根拠として「一般国際法」を論拠にしているが、そのような国際法があるのだろうか。私にはそれを調べる手立てがないが、私はそのような国際法はあり得ないと考えている。だって、ドイツではボン補足協定で「自国国内法の適用をできるだけ確保」できているじゃないか。

 困ったときのネット便り。日本弁護士連合会の『日米地位協定の改定を求めて』という提言に出会った。それによると外務省が論拠にしている国際法は「領域主権の原則」という法のようだ。いま問題にしていることについて、日本弁護士連合会は次のように提言している。

 米軍や米軍基地に日本法令の適用がないという理解は、決して当たり前のものではありません。国際法の領域主権の原則は、国家はその領域内にある全ての人と物に対して、原則として排他的に規制する管轄権を有し、その制約は、当該国家自身が他国に条約・法令等で認めた場合にのみ存在するとし、また、その制約はできるだけ限定的に解されなければならないとしています。ですから、現行地位協定の解釈としても、特段の規定がない限り、原則として米軍や米軍基地内にも日本法令が適用されると解すべきなのです。 (提言)
日本法令の適用と立入権の明記を
 地位協定に、領域主権の原則に従い、日本法令が原則として適用されることと、その適用確保等のための日本側当局の基地内立入権を、明文で規定すべきです。そのことにより、日本政府も米国に対し、航空機騒音規制など、日本の法令の遵守を堂々と求めることができることになります。

 さて、今回は『日米地位協定入門』が参考書です。『地位協定入門』の「PART1」は「問い」とそれへの応答という形式で構成されているが、「〔Q&A10〕地位協定と行政協定はどこがちがうのですか?」という問いに、ずばり、「ほとんどなにも変わっていません。」と答えている。

 こう言うと驚く方もいらっしやると思いますが、実はサンフランシスコ講和条約と旧安保条約、そして日米行政協定締結の実務責任者だった西村熊雄(当時、外務省条約局長)自身が、新旧の安保条約について、見た目は変わったが内容は同じだと言っているのです(彼は旧安保条約が「はだかの鰹節」だとすれば、新安保条約は「桐箱におさめ、(略)水引(みずひき)をかけ、のしまでつけた鰹節」だと言っています)。

 内容がかなり変わったというのが定説である新旧の安保条約でさえ、現場の責任者にはそう思えたわけですから、日米行政協定と日米地位協定が本質的にほとんど同じであっても不思議はありません。

 〔Q&A9〕では「米軍が希望すれば、日本全国どごでも基地にできるというのは本当ですか?」という設問を設定して「これは悲しいことですが、本当です」と答えている。

 通常の安全保障条約や協定なら、駐兵する基地の名称や場所を条約や付属文書に書きこむのが常識です。

 フィリピンがアメリカと1947年に結んだ「米比軍事基地協定」の付属文書でも、有名なクラーク空軍基地やスピック海軍基地のほか、23の拠点がフィリピン国内で米軍の使用できる基地として明記されています。

 フィリピンはその前年まで、本当のアメリカの植民地でした。それでもきちんと限定した形で基地の名前を書いています。ところが日米安保条約にも日米地位協定にも、そうした記述がまったくないのです。

 この重要な「基地の提供」に関する条項(行政協定・地位協定の第二条1項)を読み比べて、〔Q&A9〕・〔Q&A10〕の答えが妥当なことを確認してみよう。

 まず、行政協定・地位協定の第二条1項とそれぞれの根拠となっている安保条約の条文を並べて読んでみる。

旧安保条約 第一条
 平和条約およびこの条約の効力発生と同時に、アメリカ合衆国の陸軍、空軍および海軍を日本国内およびその附近に配備する権利を、日本国は、許与し、アメリカ合衆国は、これを受諾する。(略)」
行政協定 第二条 1項
 日本国は、合衆国に対し、安全保障条約第一条に掲げる目的の遂行に必要な施設及び区域の使用を許すことに同意する(略)」

新安保条約 第六条
 日本国の安全に寄与し、ならびに極東における国際の平和および安全の維持に寄与するためため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍および海軍が日本国において基地を使用することを許される。(略)」
地位協定 第二条 1項
 (a) 合衆国は、相互協力及び安全保障条約第六条の規定に基づき、日本国内の施設及び区域の使用を許される。(略)」
 (b) 合衆国が日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条にもとづく行政協定の終了の時に使用している施設及び区域は、両政府が(a)の規定に従つて合意した施設及び区域とみなす

 行政協定の第二条が、「日本国は、合衆国に対し、必要な基地の使用を許すことに同意する」となっているのに対し、地位協定の第二条は、「合衆国は、日本国内の基地の使用を許される」となっている。行政協定の「同意する」という文言がなくなっていて地位協定の方が後退していると思える。ともあれ、アメリカが「日本に軍隊を配備し、その拠点である基地を使用する」という権利に変わりはない。しかも(b)によれば、「使用を許される基地」とは、「行政協定が終了したときに使用していた基地」だというのだから、基本的にそのまま、なにも変わっていないことがわかる。

 「基地の提供」について、現在効力のない旧安保条約は「米軍が日本国内の基地を使用する権利」ではなく、「米軍を日本国内およびその付近に配備する権利」となっている。実はこの旧安保条約第1条がその後の新安保条約・地位協定にも引き継がれている。

 何度もくり返すようですが、これが現在の日米安保条約と日米地位協定の本質なのです。

 これまで見てきたとおり、日米安保関係の条約や協定は、オモテの条文は変わっても、ウラでその権利が受けつがれていることが多い。そして〔Q&A6〕で見たような現状(下の赤字部分)は、「米軍は基地を使うことを許される」という協定からはとても理解できないものです。ほかの国で、米軍ヘリが現地の住民をターゲットにして演習を行なうなどということがありえるでしょうか。

 つまり、アメリカがもっている権利は、「日本国の安全と、極東における平和と安全」のために必要だとアメリカがいえば、日本国内でどんな演習が行なわれても、どんな基地がほしいといわれても、部隊が自由に国境を越えて移動しても、日本側は断ることができないのです。

 地位協定が行政協定と変わっていない例がもう一つ取り上げられている。

 もうひとつ、もっとはっきりした例があります。米軍基地内での米軍の権利についてのとり決めです。日米行政協定の第三条が、
「合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、使用、運営、防衛または管理のため必要なまたは適当な権利、権力および権能を有する(略)」
となっているのに対し、日米地位協定の第三条は、
「合衆国は、施設及び区域において、それらの設定、運営、警護および管理のため必要なすべての措置をとることができる(略)」
となっています。「権利、権力および権能を有する」という高圧的な表現から、「措置をとることができる」という穏やかな表現に変わっています。しかし、この「基地の管理権」については、日米地位協定が結ばれる約二週間前に日本の藤山外務大臣とマッカーサー駐日大使のあいだで交わされた密約のなかで、
「米軍基地内でのアメリカの権利は、〔日米行政協定のもとでの権利と〕変わることなくつづく」
と合意されており、条文の変化にはなんの意味もないことがわかります。(新原昭治『日米「密約」外交と人民のたたかい』新日本出版社)

 1972年の沖縄返還に際しても、交渉にかかわったチャールズ・シュミッツ国務省顧問は「結局なにも手放さなかった」とのべています。こうした例からわかるように、米軍基地をめぐる日米交渉においては、一見アメリカが譲歩したように見える場合でも、ウラで密約が結ばれており、米軍の権利はほとんど変わっていないと考える必要があります。

スポンサーサイト
 コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
 トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://adat.blog3.fc2.com/tb.php/2054-31c42cf6
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック