2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《沖縄に学ぶ》(22)

沖縄の歴史(19):再びヤマト世へ(5)

沖縄返還協定(2)

(以下で条約や共同声明と、それに関する公式説明などはデータベース「世界と日本」の『日本政治・国際関係データベース』を利用しています。)

 1960年の日米安保条約改定の付属交換公文には、次の一文がある。
『合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行われる戦闘作戦行動(前記の条約第五条の規定に基づいて行なわれるものを除く。)のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする。』

 ここで言う事前協議について日本政府は、
「アメリカ軍部隊の配備が変更される場合、核兵器が待ち込まれる場合、そして日本有事(条約第5条のこと)以外の直接出撃のために在日アメリカ軍基地が使用される場合にアメリカ政府から事前に通告を受け、その都度日本政府が認めるかどうかを決める制度である」
と国民に説明してきた。しかし、1969年11月22日の佐藤・ニクソン共同声明の裏側で、沖縄のアメリカ軍基地の自由使用と共に事前協議の空洞化も行なわれていた。この安保条約の交換公文をそのまま沖縄に適用することになると、これまで在沖米軍基地を「自由使用」してきた米軍に対して大きな制約を課すことになるからである。

 この事前協議の空洞化は、日米共同声明の後に行なわれた佐藤首相のナショナル・プレス・クラブでの演説前にほぼ同時に行なわれたウラル・A・ジョンソン米国国務次官による共同声明の背景説明と愛知外相による内容説明の違いから浮かび上がってくる。日米双方の説明会は主として日米共同声明の第4項、第6項、第8項、そして経済条項に重点をあてたものであった。

 まず第4項についての説明では愛知外相は「事前協議」に4度触れているが、その初出は次のようである
①「韓国および台湾についての総理の見解は,現在の極東情勢の下において,わが国が韓国および台湾の安全を,日本の安全確保との関連で,一般的にどのように認識しているかを明らかにしたものであります。総理がすでに記者会見で述べたとおり,特に韓国に対する武力攻撃が万一発生すれば,これは当然わが国の安全に重大な影響を及ぼすものであります。従つて万一かかる事態が起つた際,これに対処するため,仮に米国より安保条約上の事前協議が行なわれれば,政府はこの一般的認識を判断の重要な要因として,その態度を決定することは,もとより国益上当然のことと考えられます。
 実に曖昧模糊とした文脈だが、最後(4度目)は次のように締めくくっている。
②「以上の各地域についての意見交換を通じて,いうまでもないことながら,日本側としてはいわゆる事前協議に関する「許諾の予約」を如何なる意味でも全く行なっていないという当然のことを,念のためつけ加えさせていただきます。」
 これに対してジョンソン国務次官は佐藤首相の演説から次の一文を引用している。
③「したがってこうした万一の場合(韓国への武力攻撃)においてアメリカが日本国内の施設区域を武力攻撃に対処するための戦闘作戦行動の基地として使用する事態が生じたさいは,前述の認識のうえに立って事前協議にたいし肯定的かつ敏速に態度を決定する方針である

 ①と③は佐藤首相の同じ演説を対象にしていると考えられるが、①の「政府はこの一般的認識を判断の重要な要因として,その態度を決定する」という解釈と、③の「肯定的かつ敏速に」(つまり常に「イエス」)という解釈の違いはどうしたことだろう。この違いを愛知外相は②で『「許諾の予約」を如何なる意味でも全く行なっていない』と改めて念を押している。

 次に第7項についての説明では、愛知外相は次のように説明している。
④「両首脳の話し合いの結果はすべて,共同声明にもられており,秘密の了解というようなものは全然ありません。この項に明らかなように現行安保条約および関連取決めはそのままなんの特別取決めなしに沖繩に適用されるという,わが国の基本的立場を米国が受入れたことがはっきりしました。かくして返還後の沖繩に事前協議制が全面的に適用されますので,いわゆる「自由使用」「自由発進」などは全くなくなります。ここにいう「関連取決め」とは安保条約とともに国会の承認をえている条約第6条の実施に関する交換公文,すなわち事前協議の取決めとか,吉田・アチソン交換公文等に関する交換公文,相互防衛援助協定に関する交換公文および地位協定をさすのであります。これに関連して,総理は極東諸国の安全は日本の重大な関心事であるとの日本政府の認識を明らかにした上,かかる認識に照らせば,本土並みの態様による沖繩の返還は,米国が極東諸国の防衛のために負つている国際義務の効果的遂行の妨げとなるようなものではない旨の見解を表明し,大統領が同意見の旨述べております。このことは当然ながら個々の具体的事態につき事前協議の際の許諾をあらかじめ予約したり保証したことではございません。
 ジョンソン国務次官は
「第七項も同じく重要ですが,書いてあるところで,すでに意味は明確だとおもいます。」としか言っていないが、その第7項の最後の部分は次のようである。
⑤「総理大臣は、日本政府のかかる認識に照らせば、前記のような態様による沖繩の施政権返還は、日本を含む極東の諸国の防衛のために米国が負つている国際義務の効果的遂行の妨げとなるようなものではないとの見解を表明した。大統領は、総理大臣の見解と同意見である旨を述べた。」

 ④と⑤の「米国が負つている国際義務の効果的遂行の妨げとなるようなものではない」という文は事前協議の答えは常に「イエス」であると言っていると読める。しかし、④は「事前協議の際の許諾をあらかじめ予約したり保証したことではございません」という注釈を加えている。そして、④はさらに「秘密の了解というようなものは全然ありません」という言わずもがなの一文を入れている。これは自ずから、日本国内に向けて、懸命に「密約」を隠そうとしていることを物語っている。

 このような事前協議を空洞化する密約があったことは実際に沖縄返還で行なわれたことを検証すれば明らかになるだろう。奥田さんは次のように検証している。

 100万の「日本人」が敗戦後四半世紀以上にわたって米軍による直接軍事占領下に置かれた「政治」と、巨額な費用をかけて構築した沖縄の基地機能維持という「軍事」の妥協の結果、またもや沖縄県民に不当な差別、犠牲、そして忍従が強いられることになった。つまり、事前協議体制の柔軟な適用は沖縄全域にわたる米軍基地の維持、強化、そして固定化を決定的なものにする可能性を高めたのである。

 実際、1972年に米国から日本に沖縄の施政権が返還された直後、在沖米軍基地のうち嘉手納米空軍基地、普天間米海兵隊航空基地、そしてホワイトビーチ米海軍基地に国連軍地位協定第5条第2項「国連軍は米軍に提供された基地を使用できる」が適用されると閣議決定された。

 69年11月の佐藤・ニクソン日米首脳会談のときに協議された問題は核兵器の持込みについてではなく、実際は、朝鮮半島有事と台湾海峡有事の際およびヴェトナム紛争に在日米軍基地を米軍が使用できるか否かという点についてであった。また、核兵器の「持込み」と言っても、米国の理解では、船舶での持込みや寄航は織り込み済みで、問題は地上核の配備であった。そのため、日米両政府は国連統一司令部の指揮下に置かれる日本駐留の米軍は日米安全保障委員会の対象外であること、また、朝鮮および台湾有事の際は「再持込み」が"保証"されることを確認し、そのうえで「密約」を交わした。

 沖縄の施政権返還は、日米両政府にとって、在沖米軍基地の整理・縮小ではなく、在日米軍基地の軍事的機能を最大限に拡大・強化することにほかならなかったのである。

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