2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《『羽仁五郎の大予言』を読む》(106)

終末論の時代(41)

「独占資本主義の終末」補充編(26)

羽仁提言「三つの原則」の検討(24)


原則3:「発展途上国との共生」(7)

アフリカでのODA問題(3)

 自発的に援助依存から抜け出るにしろ、ドナー側から援助を打ち切られるにしろ、そのときその国に何が起こるだろうか。いや、アフリカの国々はどのような政策を進めるべきだろうか。モヨさんは、全てのドナー国が、飢饉や自然災害のような個別の緊急援助は例外として、従来行なってきた援助を5年後に打ち切ると被援助国に告げた、という想定で、その後に遂行すべき政策を次のように提言している。

 まず、当該国の援助への依存を年々減らす経済計画が必要となる。たとえばドンゴ国の場合、援助は毎年14パーセント減って、現在財政収入の75パーセントを占めている援助は5年後には5パーセントに減るだろう。最初の年にドンゴ国は、援助から75パーセントではなく61パーセントの収入を得ることとなる。ドンゴ国は必要となる14パーセント分の不足資金を援助以外の方法で見つけ出さなければならない。2年目にはドンゴ国は援助以外で28パーセントの財政資金を見つけなければならず、翌年にはこれが所要資金の半分近い42パーセントとなる。

 では、その時々に出てくる不足資金をどこから捻出すればよいのだろうか。前回の冒頭でモヨさんがその資金源として「貿易・外国直接投資・資本市場・海外送金・マイクロファイナンス・貯蓄」などを挙げていることを紹介したが,まずはどこら始めるのが適切だろうか。

 最終的には当該国がどこに資金を求めるかは、その国固有の状況による。たとえば、アフリカの大多数の国がそうだが、ザンビアやケニアやウガンダのように商品作物に支えられた輸出志向の国の場合であれば、中国や他の新興経済国との貿易を増大すべきだ。また、最近新たに信用格付けを獲得したアフリカ15ヵ国の場合、ガボンやガーナの先例に続いて資本市場からの資金調達を検討すべきである。
 資金計画がいったんできあがり、ドンゴ国がいくら調達できるかが判明した後の第二段階では、それを超えて生活しないよう慎重なルールを徹底する必要がある。収入が減った家庭と同じく、ドンゴ国には二つの道がある。支出額を切り詰めるか、それとも、一定の支出を支えることができる資金をどこからか調達することである。支出の削減は、学校や病院やインフラではなく、宮殿、自家用ジェット機、パリのシヤンゼリゼでの買い物旅行といった不要不急の経費が対象とならなくてはならない[政治権力者たちが汚職により援助から手に入れた金の使い道。第4章でひどい汚職の例がいくつか記録されている]

 援助と異なる方法の資金調達によって、腐敗の余地が減り、学校、病院、インフラはいずれにせよ安価になるだろう。しかし、以前と同水準の支出を維持するためには、ドンゴ国は、他の収入手段を開拓することが必要になる。本書の提案を採用することで利用可能な資金の調達方法は、単に支出水準を維持することを助けるだけではなく、それ自体が経済の成長と課税可能な中間層の増大を促し、ドンゴ国の代替収入源を拡大するだろう。

 もちろん、政府が悪ければ、このような新しい資金が昔ながらの不正な支出に使われることを止めることはできない。いくつかのアフリカ諸国のリーダーは、ロンドンの高級デパート、ハロッズでの買い物で有名なジンバブエのグレース・ムガベ大統領夫人のように、買い物旅行にご執心なことで知られているし、さらに他の誰かが同じ誘惑に駆られるかもしれない。だが援助は口の締まらない財布のように、このような行為を毎年許していたが、本書が提案する方法で民間資金を使えば、一回限りでその資金は逃げて行く。たとえば、もしある政府が債券で調達した資金を盗用したり、輸出に懲罰的な関税をかけたりすれば、貸し手は二度と資金を貸さず、輸出業者は輸出を停止するだろう。そんなことを繰り返していくうちに、食い物にしようとする経済のパイはどんどん小さくなり、最終的には消えてなくなってしまう。ジンバブエのムガベ大統領がかくも長く続いた理由は、ジンバブエ経済が元気だったからではなく、2006年に3億ドルの外国援助が流れ込んだように、 間違いなく多額の外国援助に支えられてきたからだといえる。実際、援助がなければ、ムガベ大統領はとうの昔にいなくなっていたはずだ。また、外国直接投資については、たとえば中国のように、出し手は何らかの見返りを期待している。仮にもし流入した資金の80パーセントが盗まれたとしても、資金の出し手は、道路に出したなら道路建設を求め、商品に出したならその商品の購入を要求するだろう。資金の盗用があることは決して理想的状況とはいえないが、少なくとも一部は国の収入となり利益となる[中国とアフリカとの良好な関係は第7章で論じられている]

 本書が提案するモデルの第三の段階は、制度・機構の強化である。われわれの提案の核心は説明責任(アカウンタビリティ)である。良き公共財を提供し、民間部門が繁栄できる透明かつ健全な環境を保証する責任がある人々は、それに失敗したとき責任を取らなければならない。アカウンタビリティの欠如は、まさに援助モデルのアキレス腱でもある。

 デービッド・ランデスは『国家の繁栄と貧困』(Landes 1998)の中で、成長と発展のために理想的な政府について以下のように述べている。
「私的財産権を保障し……貯蓄と投資を促進し、個人の自由の権利を保障し……専制の乱用と犯罪や腐敗の双方を防止し、契約による権利を守らせ……公に知られる原則により統治される……安定した、えこひいきや地位による利益配分のない実直な、税を引き下げて社会の余剰利益を求めない、効率的で貪欲ではない統治を行う政府といえよう。」

 しかし、これは大多数のアフリカ人が暮らしている世界ではない。援助に依存する彼らの世界では、政府はこれらの任務にものの見事に失敗してきた。

 続いて、アフリカ援助の成功例として、先ほど登場した中国のアフリカ進出についてまとめた部分を引用しよう。

 アフリカを終末に運ぶ四頭建ての馬車である汚職、疾病、貧困と戦争は、容易に国境を越え、西側諸国をアフリカ諸国と同様の危険にさらす。そして、収奪され欧州の銀行口座に送られた資金はテロ活動家の資金となる恐れがあり、疾病、貧困、戦争は、法的権利を持たない難民と歯止めのきかない移民の波を誘発し、西側諸国の経済に法外な負担を強いる恐れがある。

 西側諸国が全く無視していても、また好むと好まざるとにかかわらず、中国のアフリカ進出が続いている。世界的な優位を狙う彼らがその組織的活動を強めているのがアフリカである。中国人は何においても経済を最優先に考えているが、彼らはそのうちアフリカ全体で銀行、土地、資源を所有するだろう。そのとき、彼らの聖戦は終わる。彼らは勝利を得るだろう。

 中国による支配を今の一般的アフリカ人が心配しているかいないかという問いは、的外れである。アフリカの人々がどれだけ自由と権利を重視しているかを過小評価すべきではない。彼らは自由と権利を重視しているのだ。しかし、ドンゴ国の田舎の女性にとっては、目下の関心は40年後の彼女の政治的自由の危機よりも、今夜の食卓に食べ物を乗せることにある。そして中国は、今日の食卓上の食べ物、明日の子どもの教育、そして予見可能な将来に彼女の仕事を支える経済基盤を約束しているのだ。

 西側諸国の犯した間違いは、何かを与えるのに際して、何も対価を求めなかったことである。中国の成功の秘密は、彼らのアフリカヘの急進出のすべてがビジネスだったことだ。西側諸国はアフリカに援助を贈り、成果を気にしなかった。このことが、利権集団を作り、膨大な数の人々を富から排除したために、政情不安を引き起こした。

 一方、中国は、現金をアフリカに送り、見返りを求めた。その見返りによって、アフリカの人々は仕事や道路や食料を得て生活を向上させ、少なくとも当分の間、表面的な政治的安定が得られている。経済こそが重要なのだ。シンガポールの例のように、たとえ民主主義がなくとも、中間層市民が経済的により裕福になれば平和がもたらされることが証明されている。アフリカの例では、もし平均的ケニア人が現状より経済的既得権や利害関係を持っていなかったとすれば、2008年の騒乱はもっと長引いていたであろう。他の社会同様、常に不幸にして経済活動に十分に参加できず経済成長の恩恵に与れない周縁部の人々がいるため、そのような騒乱状況が、長引くだけ長引いたかもしれない。中国のアフリカヘの進出は続き、西側諸国は危険を冒してまでそれを無視している。

 十年一日のごとき開発処方便や過去のものとなった古い組織に、何らかの役割があるのであろうか。アフリカが持続的成長と貧困削減を真に達成するよう支援するためには、間違いなくこれらはいらない。その目標を達成するためには、あたかも悪魔との取引で身を滅ぼしたファウストの契約のような、今の援助に依存した開発政策を切り捨て、開発論議を支配している硬直化した政策や手続きから離れる必要がある。幸いにして、正しい方向に向かっての動きが、遅々としてではあるが、出てきている。公の批判を気にしてか、あるいは開発ゲームの中での主導的役割が低下していることを恐れてか、国際機関はその主張のトーンを変えている。

 誰が新しい開発の方向性をより具体化できるのかという視点から、開発援助機関の上層部に新興世界の発想をより多く取り入れようという圧力がテクノクラートや政治家から出ている。実際、2008年、世界銀行は、これまで欧米人が占めていた同行第二位のポストであるチーフ・エコノミストに中国人のジヤスティン・リン(林毅夫)を選んだ。

 また、官民協働(Public-Pribate Partnership)とか債券資本市場(Debt Capital Market)や海外居住者向け債券(Diaspora Bond)などの民間資本からの開発資金の調達(Private-Capital Solution)といった用語が、開発専門用語の中に浸透してきた。この動きは、今ある開発モデルを単に生き延びさせるのではなく、それに多分に疑問を呈し、民間部門の役割をより重要視する流れの中で起きている。これは疑いなく良いスタートである。また、ヘッジ・ファンドや国際銀行やプライベート・エクティ・ファンドといった何十億ドルのいわゆるスマート・マネーがアフリカに向かいだしている。アフリカにとっての民間資本の時代は今まさに始まったところであり、その傾向が続くよう大事に育てていくことが必要である。

 これまでの過ちを止め、文字どおりの厄災を正し、アフリカ経済を強固な基盤の上に乗せるためには、しなくてはならないことはたくさんある。援助国や国際援助機関は開発イデオロギーを、多分に国家統制主義的だった1970年代の誤った経済政策から、ワシントン・コンセンサスの背後で生まれ今日論じられている良い市場重視政策へと切り替えるよう勧奨されなければならない。その一方、われわれは彼らに対し、援助の排除なくしては、新しく、より良くなるはずの開発の体制が、見かけ倒しで無駄で、さらには災厄でさえあり続けるだろうということを気づかせる必要がある。

 アフリカの開発が陥っている袋小路の現状は、開発のために何が役に立ち何が役に立たないかについて、新しいレベルの自覚、より大幅な革新、さらには真摯な誠実さを求めている。そして、一つ確実にいえることは、援助への依存は役に立たなかったということである。援助依存の悪循環を止めようではないか。

 ここで<参考書3>終わることにして、次回は<参考書2>を用いて日本のODA援助の問題点を調べることにする。

〔追記〕
 ネット検索をしていて、「Forbes JAPAN」というサイトで『日本では見えない「アフリカの政治、社会、ビジネス」の実態』という表題のモヨさんへのインタービュー記事に出会った。残念ながら、全文ではなく抜粋記事だが、現在のアフリカの様子が語られていてとても参考になると思ったので、転載させて戴くことにした。

 (中略)一方で、アフリカには、多くの可能性があるのも事実だ。意外と知られていないが、現在、アフリカの少なくとも20カ国が信用格付けを取得し、株式市場も存在する。株式市場の流動性も確実に高まっており、アフリカ全体で取引される銘柄は約1,000で、その85%以上が非市況銘柄(ノンコモディティ)だ。個人消費の伸びによって、小売り・物流・通信・金融などの分野が、株式市場を牽引している。

 政治の面でもここ数年で自由で民主的な体制へと大きな転換が見られた。アフリカ諸国で安定した市場としては、経済規模第1位のナイジェリアに加え、ケニア、タンザニア、ウガンダ、ボツワナなどの国が挙げられる。現在、東アフリカ諸国は、ケニアを中心にウガンダやタンザニアなどが、経済統合を目指して、域内協力を進めており、この地域の将来には、私はかなり楽観的な見方をしている。

 ケニアを例にとれば、携帯電話の普及率が、2013年には71%まで伸びた。その普及により、さまざまな情報が得られ、生活が便利になった。たとえば、農村部で飼っている牛を売ることにしたとしよう。A町では50ドル、B町では70ドルで売れる。その情報は携帯電話から得られる。携帯電話による情報流通の改善が、経済活性化に寄与し、生活を豊かにするという循環が始まっているのだ。あるいは、医者が町に来ることを知らせるメールを受け取ることもでき、それは医療環境の改善につながる。

 アフリカの投資といえば中国の積極的な進出が話題だ。昨年、私は習シー近チン平ピン国家首席と北京で会談する機会を持ったが、中国のアフリカ進出は、非常にグローバルな視点に立っていることを確信した。中国は、自国経済の長期的発展のために、アフリカに戦略的に進出しようとしている。一般的に、中国の投資対象は一次産品や天然資源に限定された単純な投資プランだと思われがちだが、じつは、アフリカの大手銀行の株を20%保有するなど、小売業や銀行にも投資し、その投資が戦略的かつ市場本位の合理的な考え方に基づいたものであることがうかがえる。  アフリカの人々は、一方的で柔軟性のない戦略でアフリカに進出されることは決して望んでいない。当事者間でいままで以上にビジネスや投資機会に関して、慎重かつ綿密な協議が行われることを期待している。 (以下略、)

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