2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《『羽仁五郎の大予言』を読む》(103)

終末論の時代(38)

「独占資本主義の終末」補充編(23)

羽仁提言「三つの原則」の検討(21)


原則3:「発展途上国との共生」(4)

アフリカでのODA問題(1)

 援助の効果を疑わない人たち(学者や役人等)は、援助資金の提供者(ドナー)により設定される諸条件(コンディショナリティ)が究極的には援助の成否を決定すると考えている。モヨさんは「1980年代、アフリカ向けに付されたコンディショナリティが秘密の呪文と化したのである」と述べている。以来、アフリカの国々にはその厳格な諸条件を受け入れるか、あるいは受け入れないかという選択肢に直面することになった。それらはどのような条件だったのか。

 ドナーは援助の見返りとして、次のような三条件を被援助国に求めた。

 被援助国は、ドナーないしドナーが指定する国の製品およびサービスを調達しなければならない。
 後にこれには人員スタッフをも含むようになる。ドナーは、被援助国に適切な候補者がいるにもかかわらずドナーの国民を雇用することを被援助国に求めたのだ。

 ドナーは援助により支援されるセクターないしプロジェクトをあらかじめ選定する権利を留保 することができる。

 援助は被援助国が一連の経済的および政治的な政策改革に同意する限りにおいて供与される。

 私には、「共生」とはほど遠い、「援助してやる」と言っているような上から目線の援助であるとしか思えない。以来、この三条件のもと、具体的には次のような政策を受け入れることを条件にアフリカ諸国に援助が供与されるようになった。
(1)
 国家統制的な中央計画経済から、公務員数の削減、国営企業の民営化、貿易障壁の除去といった市場指向的経済政策に政策を変更すること。
 さらにその後、新たに次の条件が加えられた。
(2)
 あらゆる形態の汚職の撲滅を期待して、民主主義を基調とした統治システム[govenance]を構築すること。

 こうした諸条件にもとづく援助の結果はどうだったのだろうか。モヨさんの解説を直接引用する。

 理論上、コンディショナリティは理にかなっていた。ドナーは援助の用途に制約を課し、被援助国はそれを遵守するはずであった。ところが実際には、コンディショナリティは悲惨な失敗をもたらした。最大の失敗は汚職と悪しきガバナンスを抑制できなかったことであった。

 世界銀行の調査によれば、85パーセントもの援助が、ばかげた企てではないものの、しばしば非生産的な目的に転用されるなど、当初意図していた目的以外のものに対して使われてきた。すでに1940年代には国際的なドナーはこういった援助の転用のリスクはよく認識していた。1947年、世界銀行のポール・ローゼンシュタイン=ロダン経済局次長は、世界銀行が発電所向けの融資と考えていても、実際には売春宿に融資していた場合さえあると述べていた。

 しかし、ここで重要なことは、コンディショナリティが明白に無視されていたことであり、コンディショナリティが公然と破られている場合でも、援助(それも巨額の援助)が供与され続けたことである。スヴェンソンは調査を通じ、ある被援助国の改革努力やコンディショナリティの履行状況とドナーからの援助の支出状況には関連がないことを指摘し、コンディショナリティが多くの援助に関する合意の中核をなしているにもかかわらず、実際上はコンディショナリティがほとんど重視されていないことを証明した。

 「コンディショナリティがほとんど重視されていない」という問題について、援助の条件の一つである「民主主義」にしぼってモヨさんの議論をたどろう。

 欧米諸国の視点からは「民主主義こそがすべてを約束している」ということになる。モヨさんはそのような主張をする学者の説をいくつか取り上げているが、ここではその代表例としてマンスール・オルソンとアマルティア・セン(ノーベル経済学賞を受賞している)という二人の経済学者の説を解説した文を引用しておこう。

[オルソンは]民主的な政府の下でこそ、経済活動を刺激する上で非常に重要な所有権の保護と契約の保証の実現が期待できると考えた。重要なことは、民主主義は平和の配当を生み出し、経済成長の先駆けとなる政治的な安定をもたらすというのである。オルソンの世界では、民主的な体制は二つの方法で民間企業の生産を助長するような機会を提供する。一つは、民間活動のための(たとえば法的・規制的)枠組みを維持することであり、もう一つは、市場が効率的に提供できないもの(たとえば遠隔地にある小さな村と大きな貿易都市を結ぶ道路など)を直接提供することである。民主主義は、その特性ゆえに、すべての人々が恩恵を受ける公共財を提供するインセンティブをもたらし、また、民主的な体制は、専制的ないし独裁的体制よりも、より多くの富の創造を可能にするというのである。』

[センは]民主的に選出された政治家は、政権を失うリスクを避け経済的な災難を回避しようとしてより用心深くなると説く。ほかにも、主に途上国の中では、民主的政府は非民主的政府と比較し70パーセント以上も国民の基礎的ニーズを満たしているという研究もある。』

 こうした考えに対して、モヨさんは次のように反論している。
 このような考えの下では、民主主義によってアフリカは救われると考えられる。すなわち、汚職や経済的な縁故主義および反競争的かつ非効率的慣行を取り除き、公職にある者がきまぐれに富を奪取するすべての機会を民主主義によってきっぱりと断ち切ることによってアフリカは救われるというのである。民主主義は、より公平で透明な経済政策を求め、長期的で持続可能な経済成長に導く政策を求めるというのである。ドナーは、あらゆる政治体制の中で民主主義(そして唯一民主主義)と経済成長との間においてのみ正の相関関係があると確信しているのである。

 民主主義が持つ潜在的に前向きの要素が欧米諸国における援助議論(および援助政策)を独占してきた。一方、欧米ドナーおよび政策担当者は、開発の初期段階において民主主義は開発とは無関係であるどころか有害ですらあると説く者の反論を基本的には黙殺してきた。援助依存の環境の下 ではそのようなことを想像するのは容易である。援助資金に依存する民主主義の下では、政府は自 らの利益に資するように所有権を改めようとする誘惑に駆られる。もちろん、それは投資に向けた インセンティブ[incentive 刺激・動機]を低減させ、成長を抑制するようになる。

 居心地の悪い真実なのだが、民主主義は経済成長の前提となるどころか、経済的便益をもたらす 法制度の採択が、競合する党派と利害の狭間で困難になる場合には、民主主義は開発の妨げになる こともある。完璧な世界では、貧しい国々が経済開発の最も低い段階において必要とするのは複数 政党制民主主義ではなく、実際のところ、経済を発展させるために必要な改革を推し進める毅然と した意思のある慈悲深い独裁者なのである(残念なことに、多くの国々の場合、慈悲深いとはいえない独裁者で終わってしまうのだが)。欧米の思考は、複数政党制民主主義という政治システムと(たとえば、効果的な法の支配、所有権の尊重および独立した裁判所等のような)質の高い制度を同一視するという誤った前提に基づいている。しかし、この二つは同じものではない。

 ここで、「慈悲深い独裁者」として思い出すのはフセイン(イラク)とカダフィ(リビア)である。欧米が押しつける民主主義(実は資源の略奪が主目的)が、それまでの一般国民の豊かで安寧秩序が保たれた生活を破壊して、生命さえ脅かす暴力がはびこる貧困困苦の生活に陥れてしまっている。現在ではシリアがその標的にされている。モヨさんの解説に戻ろう。

 現実的な問いかけは、外国援助を通じアフリカに民主主義が広まったことでアフリカは経済的に稗益したであろうかということである。この問いかけに対する回答は明白ではない。アフリカの民 主国家の中には説得力のある経済成長の数字を示そうと苦闘し続けている国がある(たとえばセネガルは2006年に3パーセントというわずかな成長を遂げた)一方、明らかな非民主的国家でも前例のない経済成長を遂げつつある国(たとえばスーダン)も見られる。

 ここで明白なことは、民主主義は、援助の擁護者が主張するように経済成長のための前提条件で はないということである。逆に、経済成長が民主主義の前提条件なのであり、そして、経済成長を 達成する上で必須とは見なされないものの一つに援助がある。

(中略)

 誰も民主主義に非常に重要な価値があることを否定していない。問題はタイミングである。

 開発の初期段階では、飢えに苦しむアフリカの家族にとって投票できるか否かはあまり重要なことではないだろう。いずれは重要になるだろうが、今日は食糧がまず重要なのであり、経済成長はその後でよい。

 試みにセネガルとスーダンの2014年の一人当たりの名目GDP(USドル)ランキング(対象: 187ヶ国)を調べてみた。
161位 セネガル 1,071.81
138位 スーダン 1,979.54
で、一人当たりの名目GDPはスーダンはセネガルの約1.8倍であった。
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