2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《『羽仁五郎の大予言』を読む》(102)

終末論の時代(38)

「独占資本主義の終末」補充編(22)

羽仁提言「三つの原則」の検討(20)


原則3:「発展途上国との共生」(3)

アフリカの現状

 <参考書③>の著者ダンビザ・モヨさん(以下、モヨさんと呼ぶことにする)はザンビア生まれの黒人女性で、オックスフォード大学で博士号を取得した経済学者である。2009年5月のtime誌で「世界で最も影響力のある100人」に選ばれているという。

 本書のとびらにはヨーロッパに行こうとして飛行機の車輪格納部に潜んでいて死んでしまったギニアの二人の少年(ヤギン・コイタとフォード・トゥンカラ)が持っていたという手紙文が掲げられている。
ヨーロッパの偉い人たちヘ
 アフリカの人たちはとても困っています。アフリカはたくさんの問題を抱えています。子どもの権利も認められていません。戦争もあれば、病気も蔓延していて、食べるものもありません。……私たちも学校に行きたい。お願いします、あなたがたのようになれるよう、勉強がしたい。どうか助けて下さい。

 では、アフリカの現状について具体的に学習してみよう。<参考書③>を用いるが、原書が出版されたのは2009年であり、その後変化した事項もあるが、翻訳者が(訳注)を付してくれている。また、前回にも書いたが、私はアフリカに関することや(付け加えると)経済用語に疎いので、いろいろ調べながら読んでいる。それらは私の注として[ ]で付しておく。もう一つ、前回の記事について訂正がある。前回アフリカの現状を示す表を転載したが、その表題に「サブサハラ・アフリカ」(サハラ砂漠以南のアフリカという意味)と書いてあるのをうっかり見落としていた。従ってその表にアルジェリア・エジプト・チュニジア・西サハラ・モロッコ・リビアなどの北アフリカの国々が入っていないのは当然のことでした。

 では<参考書③>の第一章を読んでいこう。

 10年前、アフリカといえば希望のない大陸といったイメージだったろう。多くの人がアフリカに対して、経済が発展する見通しはなく、汚職が蔓延し、社会資本はなきに等しく、数多くの国が専制国家で、インフラは全く未整備、といったイメージを持っていた。

 しかしこの5年ほど、アフリカがよくなる兆しが見え始めている。多くの国で5パーセントくらいの経済成長が実現しているし、民主的な選挙も行われている。

 モヨさんはその主な要因を三つ挙げている。
(Ⅰ)
 石油、銅、金、食糧といった一次産品価格の上昇が、アフリカ諸国の輸出増をもたらし、それが経済成長を促進した。
(Ⅱ)
 1980年代末に始まった市場経済化に向けた構造調整の成果が現れた。
(Ⅲ)
 多くの国で政治制度の民主化が地についた動きをし始めた。

 その結果は経済成長率の上昇・インフレ率の低下・投資環境の大幅な改善として現れ、金融政策も財政政策も理に適った安定的なものになったという(モヨさんは数字を挙げて詳論しているが省略する)。そして社会指標が顕著に改善している国もあると言い、ケニア取り上げている。ケニアでのHIV/AIDSの罹患率は、2001年に15パーセントだったが、2006年には6パーセントに低下しているという。

 続いてモヨさんは「アフリカの金融市場で起こっている画期的な出来事」を具体的に数字を挙げて解説している。

 証券取引過去5年のうち3年間、アフリカにおける株式投資収益率は世界で最も高く、平均40パーセントであった。アフリカ最大のアグリビジネス[アグリカルチャー(農業)+ビジネス(事業)で、農業関連産業]企業であるZambeef(ザンビーフ。牛肉、鶏、卵、牛乳、酪農品の生産、加工、流通から小売りまで手がけている)の2007年の収益率は、実質ドルベースで150パーセントを記録している。また2005年から2008年初めまでのナイジェリアの銀行部門の収益率は約300パーセントであった。

 アフリカの債券市場のパフォーマンスもすばらしい。アフリカの債券の収益率は、2006年は15パーセント、2007年は18パーセントであった。過去5年間に、アフリカの借入れスプレッド[Spread 金利差]は250ベーシス・ポイント[0.01%=1ベーシスポイン]も縮小した。このことは、たとえばアフリカの国が一億ドルの国債を発行したとき、5年前と比べて、毎年250万ドル節約できるということだ。アフリカの株式投資も好調で、過去10年間の収益率は約30パーセントである。

 以上のように、経済面でも政治制度面でも大きく改善されていく様子が見られるが、これはサブサハラ・アフリカ以外の地域でのことであり、サブサハラ・アフリカはそうした発展から取り残されている。依然として以下のようなさまざまな問題を抱えているという(以下の前半は前回転載した表の具体的は解説になっている)。

 サブサハラ・アフリカの平均所得は一日約1ドル以下であり、世界で最も貧しい地域である。現在のアフリカの実質1人当たり所得は、1970年代よりも低い。多くのアフリカの国は、40年前と同じくらい貧しいままだということだ。アフリカの人口7億人のうち半分以上が1日1ドル以下で暮らしており、サブサハラ・アフリカは世界で最大の貧困率を誇る地域であり、世界の貧困層の50パーセントを占める。1980年以降、世界の絶対的貧困は、数で見ても、貧困比率で見ても、大きく低下してきたが、サブサハラ・アフリカだけは増加し、50パーセントになった。1981年から2002年にかけてアフリカの絶対的貧困層の数はほぼ2倍に増加し、アフリカの人々は20年前より貧しくなっている。UNDP(国連開発計画)の『人間開発レポート』(2007年版)によれば、1990年にはサブサハラ・アフリカは世界の絶対的貧困層の5分の1を占める程度であったが、2015年には3分の1を占めると推定されている。

 平均余命も延びていない。60歳に満たないのはアフリカだけだ。50歳前後をさまよっている。

 1950年代に逆戻りしている国もある。スワジランドの平均余命はなんと約30歳だ[? 例の表では45.8歳となっている]。平均余命が逆行しているのは、エイズのせいである。さらにアフリカでは7人に1人の子どもが5歳になる前に死んでしまう。アフリカも他の途上国同様若者が多く、人口のおよそ半分が若者(15歳以下)だということを考えると、この数字は深刻である。

 ほとんどのアフリカの国で、成人識字率は1980年以前の水準にまで大きく低下している。識字率、健康指標(マラリアや住血吸虫・コレラといった汚染された水による病気)、所得不平等など、さまざまな問題が依然アフリカには残っている。アフリカは世界の経済成長から取り残されている。ここ数年、アフリカは平均で5パーセントの成長を達成しているが、アフリカ・プログレス・パネル(Africa Progress Panel)によれば、着実に貧困削減を実現するには7パーセント成長が必要だという。

 政治という点でも多くの国が民主化から取り残されている。

 政治はどうかというと、アフリカの半分は依然非民主国家だ。ポリティⅣ(PolityⅣ)のデータベースによれば、アフリカには少なくとも11の完全な独裁国家がある。
(コンゴ共和国、赤道ギニア、エリトリア、ガボン、ガンビア、モーリタニア、ルワンダ、スーダン、スワジランド、ウガンダ、ジンバブエ)

 アンゴラのドス・サントス、赤道ギニアのオビアン、ガボンのボンゴの三人の国家元首は1970年代からその地位にある。ガボンのオマール・ボンゴ大統領は1969年12月2日に就任したので40年以上その地位にあった(訳注:オマール・ボンゴ大統領は2009年6月死去したが、8月の大統領選挙で子息のアリ・ボンゴが当選した)

 ブルキナファソのコンパオレ、カメルーンのビヤ、ギニアのコンテ(訳注:コンテ大統領は2008年12月死去)、ウガンダのムセベニ、ジンバブエのムガベは、1980年代から政権を握っている。

 1996年以降、11の国(アンゴラ、ブルンジ、チャド、コンゴ民主共和国、コンゴ共和国、ギニアビサウ、リベリア、ルワンダ、シエラレオネ、スーダン、ウガンダ)で内戦が起きている。2008年5月に発表された世界平和度指数(Global Peace Index)ワースト10のうち、アフリカには四ヵ国が入っており(悪い順でいえば中央アフリカ、チャド、スーダン、ソマリア)、大陸別に見ると最も多い。

 モヨさんは「なぜこうもアフリカはうまくいかないのだろうか。」と自問する。

 なぜアフリカだけが世界の経済成長から取り残されているのだろうか。最近の調査では、破綻国家(failed satates)ワースト10のうち7ヵ国がアフリカの国だが、これはなぜなのだろうか。アフリカ人は他の大陸の人より能力が劣っているのだろうか。アフリカのリーダーは、先天的に欲ばりで、無慈悲で、汚職を好むというのだろうか。アフリカの政策担当者は、本質的に無能だというのだろうか。アフリカが他の地域より遅れているのはなぜか。21世紀になっても、他の地域の発展の流れに乗れそうもないのはなぜか。
 その答えは、アフリカに対する援助にある。

 ということで、次回はアフリカでのODA問題を取り上げよう。
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