2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《『羽仁五郎の大予言』を読む》(68)

終末論の時代(4)

ジャーナリズムの死(4):近代日本の言論不自由史(2)


 前回、郵便制度の整備が地方の上層農民の政治や社会問題などに対する意識を高める役割をになっていたと書いたが、丹羽さんは「当時の文通が、・・・国内外の情勢を、新聞の普及しない農村僻地にまで知らせ、かつ心情の率直な交換をする役割を果たしている」一例として「明治期のすぐれた良民指導者である秋田県の石川理紀之助」という人の書簡を取り上げている(その書簡文の紹介は割愛します。なお、石川理紀之助についてはネット知ることができます)。そして、
「各地人民の政治的成長は、1880年国会開設請願運動の全国的拡大となってはじめて表面化した。」
と指摘している。

 この自由民権運動の興隆を示す国会開設請願運動は、政府中枢では大隈重信たちが担い、国会開設・憲法(英米流の議院内閣制)の早期制定を強く政府に迫っていた。これに対してビスマルク憲法(君主大権を柱とする)を目論む伊藤博文・井上毅が大隈重信たちを政府から追放する(1881年の政変と呼ばれている)。 この政変で君主大権政体樹立の方向を確定した政府は、弾圧・統制のため一連の法制定・追加・改定を行なっていく。

1880年4月
 太政官布告「集会条例」
 「政治二関スル事項ヲ講談論議スル」集会や結社を警察の認可制の下におき、地方警察にその解散、不認可の権を与えた。

1882年6月
 太政官布告「集会条例」改正追加
 「政治二関スル事項ヲ講談論議スル為メ、其旨趣ヲ広告シ、又ハ委員若クハ文書ヲ発シテ公衆ヲ誘導シ、又ハ他ノ社ト連結シ及通信往復スルコト」を禁じ、違反者への体刑または罰金を定めた。

 これらの言論弾圧条例によって大きな制約を受けたのは政党活動だけではなかった。丹羽さんの文章を直接引用しよう。

 郵便制度の普及にともなって急速に深まった全国的な人的交流は、こと政治に関しては、警察によって断絶させられることになる。

 また、この時期以降、全国各地で、自然発生的に生まれた豪農商、教員、青年らの学習グループなど各種の「結社」は、地方に新たに入ってきた書籍、新聞の講読や内部討論によって、自らの民権思想を高めたが、これを一般に普及させ、あるいはグループ相互の交流・連結を進めることはきわめて困難となった。

 現在、これら学習グループの活動内容を知りうる史料の発掘が、困難であることじたい、右諸法令の発動が、地方警察によって各地農村の中にまでおよんできたことを示している。

 各地の一般人民の民権意識の高まりに大きな役割を果たしてきた新聞・定期刊行物にたいしても次のような弾圧が行われた。

1883年
 4月
 太政官布告「新聞紙条例」
 6月
「出版条例」改正

 新聞紙条例では高額の保証金納入を義務づけた。これによって、一般人民による自由な発刊が不可能になった。条例公布後1ヵ月間で、東京で16紙、大阪で4紙、地方で27紙が廃刊を余儀なくされている。

 さらに同条例では、発行禁止権を内務大臣がもつほか府県長官(東京府は警視長官)に発行停止権が与えられた。一方新聞報道にも大幅な制約を課し、
「宣布セラレザル公文及上書建白請願書ハ、当該官司ノ許可ヲ得ルニ非ザレバ、之ヲ記載スルコトヲ得ズ」(その大意、草案の掲載も不可)
とした。さらに、陸海軍卿、外務卿に軍事外交に関する記事の掲載禁止権を与えている。まるでアベコベ政権が目論んできた「特定秘密保護法」の行き着く先を暗示しているような条例だ。

 これらの条例が一般人民に及ぼした影響を丹羽さんは次のようにまとめている。

 新聞を通して、国内政治、世界情勢を把握しはじめていた地方人民にとって、右条例により新聞記事の内容がおのずから政府の意図にそって制約されたものになることは、その意識・思想形成の上に大きな影響を与えずにはおかない。

 この時期以降に作られた各地豪農の日記などを通して、われわれは、農民上層のなかに愛国主義とともに排外的思潮が育ちつつあるのを知るのであるが、新聞の周辺アジア諸国についての限られた報道がしばしばこれら日記に転写されている事実などから、そこに新聞の強い影響をみるのである。

 もっとも地方の新聞読者は、新聞の論調にたいして多くは一定の批判をもっている。しかし、対外的なニュースは、その性質上、体験や身辺の見聞などによって自ら確める術が乏しいため、最も直截に受容されるのである。

 これも、アベコベ政権の懐柔(マスゴミトップ連中との会食)と脅し(批判的論者の排除)に屈したような現在のマスゴミと、そのマスゴミの報道をそのまま受け入れてしまう約50%の愚民たちの状況と重なっている。もって他山の石とすべきだろう。
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