2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《『羽仁五郎の大予言』を読む》(62)

権力が教育を破壊する(45)

教育反動(37):遂にここに極まれり(2)


 教育再生会議の第一次報告前後には安倍内閣による教育破壊政策が強行されている。
2006年12月15日
 改悪「教育基本法」を強行採決
2007年1月24日
 教育再生会議、第一次報告提出
2007年6月20日
 「教育三法」を強行採決
2008年

 ところで、「教育基本法」改悪の時、私も国会前の反対運動に参加していて、つたない報告を書いている。
「国会前でのハンガーストライキ始まる。」
「新たなる闘いのスタート」
をご覧ください。

 さて、教育再生会議による議論はこのような法改悪スケジュールと歩調を合わせながら進められたのであった。その教育再生会議が第一次報告で提言した主な項目は次のようである。

 ゆとり教育の見直し(授業時数の10%増)

 学力の向上(全国学力調査の実施)

 いじめ対策(出席停止制度と毅然たる指導体制)

 徳育の充実と体験学習の推進

 教員の質の向上(教員免許更新制の実施)

 教育システムの改革(第三者による学校評価システムの導入、副校長:主幹等の管理職の新設)

 教育委員会制度の改善

 「社会総がかり」での教育参画

 このうち、①は2008年1月の中教審答申に基づく改訂「学習指導要領」によって具体化されて、④もその方針が「学習指導要領」に盛り込まれた。また、③は、2007年度から全国の小学校6年生および中学校3年生を対象に「全国学力・学習状況調査」が実施されることになる。さらに⑧はすでに「教育基本法」第13条に「学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする」と、その趣旨が明示されていた。

 こうして、教育再生会議の諸提言は、「教育三法」の成立によってその具体化・実効化か推し進められていくことになる。この「教育三法」と呼ばれている法律は
 「学校教育法」
 「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」
 「教育職員免許法及び教育公務員特例法」
の「一部を改正する法律」を指している。

 山本さんは、教育再生会議の提言は「臨教審以降の教育政策動向の延長線上に位置づけられるものであり、その後の教育政策のゆくえを示唆している」と言い、大きく「国家による教育管理の強化」と「教育への市場原理の導入」という二つの傾向を指摘している。この二つの傾向が「教育基本法」と「教育三法」にどのように盛り込まれているのか。山本さんの分析を追いながら私見を述べていこう。

《国家による教育管理の強化》

「教育基本法」
 愛国心や公共心の涵養といった国民の精神生活に関わる目標が規定され、その達成が強調された。さらに、家庭や地域における人々のあり方を律するような規定が設けられる一方、逆に国家権力に拘束を与える規範としての性格は弱められている。

 「教育基本法」のこうした傾向は、当然「学校教育法」や「学習指導要領」に反映される。

「学校教育法」
 第21条には10項目の教育目標が規定され、規範意識・公共の精神・文化伝統の尊重・愛国心・愛郷心などの涵養が盛り込まれた。これはその後道徳教育の強化につながり、さらに現在は道徳教育の教科化にまで魔手を伸ばそうとしている。道徳の教科化について、東京新聞の「発言」欄への投稿記事を二つ紹介しよう。

 まず、実際に道徳教育にたずさわった方の意見。道徳教育の問題点がすっきりと指摘されている。

苦悩する現場
 元教員渡辺孝子60 (横浜市栄区)

 道徳の教科化について述べます。学校で道徳の係を担当していましたが、嫌でした。結論ありきの文章を生徒に提供するのが嫌でした。

 自分で教材を提供できず、でも対立する複数の考えが導き出せるような教材をあちこち探しました。教科書会社の道徳本を随分読みましたが、満足できるのはありませんでした。生徒が自分の考えを緊張せずに披露しあえる教材が欲しかったのです。

 そういう教室の雰囲気をつくりたいと思いました。中学生でも優しい心の持ち主が、作文上手ばかりとは限りません。その逆もあることでしょう。教科にするとは、評価の根拠とは作文力でしょうか。

 また、提供された教材のテーマを的確に捉える理解力でしょうか。言葉で伝える力が道徳の力でしょうか。現役の先生たちの苦悩が見えてきます。

 次は中学生の投稿。このようにしっかりした中学生がいるとは、ガキ大将で遊んでいた自分の中学時代を顧みて、ほとほと感心してしまった。

正解ない道徳 評価おかしい
  中学生 松元恵莉13 (東京都立川市)

 文部科学省は「道徳」の教科化を、小学校では2018度から、中学校は19年度から実施するそうです。授業で検定教科書を使い学習評価も始まります。文科省は「読むだけの読み物道徳から、考え、議論する道徳への転換を目指す」と説明。学習評価は1~5の数値式ではなく記述式にする方針です。しかし、私はこの案に反対です。

 道徳は正解のない教科で評価するのは変だと思います。道徳の教科書通りの考え方に強制させられてしまう不安も感じます。特に「愛国心」という言葉を強調しすぎていて「まるで戦争中みたいだな」と思いました。中学校は19年度からなので、私たちは教科となった道徳の授業を受けることはありませんが、見直すべきだと思います。

 「学校教育法」ではもう一つ第37条が問題である。従来の校長・教頭・教諭・養護教諭のほかに、副校長・主幹教諭・指導教諭などを置くことができるものとされた。山本さんは
「教員構成における中間管理職の増員と学校管理体制の強化は、ある意味では、学校の裁量権を拡大しその責任体制を明確にする方策と理解することができるかもしれない。だが実際には、この法改正が、管理職と一般教員との間にどのような関係をもたらすのか、また、学校管理体制の一元化が却って教育行政における上意下達の官僚的支配を強化することにならないのかなど、注視すべき問題が少なからず残されている。」
と危惧されているが、これはもう明らかに「上意下達の官僚的支配」と「教員の分断支配」を狙ったものである。東京都では先取りをして、2000年には人事考課制度を実施し、それをを背景に、2003年から「主幹」制を導入している。その結果都立高校はどうなったか。私は『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たち』の最後の記事として「都立高校の現況」という記事を書いているので、紹介しておきます。

「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」
 第50条の規定により、教育行政に対する国の権限が強化された。具体的には、国は教育委員会の運営について、是正・改善に関する「指示」や「是正要求」を行う権限を有するものとされた。すなわち、教育委員会に対する国のチェック機能を強化することで、国の意志がより鮮明に反映できるように教育行政の仕組みが改められたのである。

 教育委員会については昨年(2014年6月13日)「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」が成立している。この改正法は、
①首長による大綱の策定
②総合教育会議の設置
③教育長と教育委員長を一本化した新たな責任者(新教育長)の設置
④教育委員会のチェック機能の強化
⑤国の関与の見直し
などを盛り込んでいる。④は教育委員会による「上意下達」という教育現場支配の強化であり、⑤は「教育委員会に対する国のチェック機能」のさらなる「強化」にほかならない。

「教育職員免許法」
 この法律にいわゆる教員免許更新制が導入され、2009年4月から、原則としてすべての教師に10年ごとに30時間以上の更新講習が義務づけられた。この制度は教育再生会議においては「不適格教員の排除」の一環として打ち出されたものであったが、不適格教員の実態に対する客観的・実証的な検証が不十分なまま、全教員の適格性が定期的にチェックされるシステムがつくられたのであった。またその一方で、この制度導入のそもそもの理由をなした不適格教員に対しては、「教育公務員特例法」の改悪により、「指導改善研修」を課したり、免職その他の必要な借置を講じたりすることができるようになった(第25条第2項および第3項)。この問題について、山本さんは次のように論評している。

「教員の資質向上という方針は、裏返しにいえば、現職教員に対する不信感が重大な背景をなしているといえる。その不信感が、実証的データではなく情緒的な印象に基づくものであるとすれば、この施策の問題性は明らかといわざるをえない。」

 例えば、反知性主義・歴史歪曲主義に従わずに真実を追究しようとする教員の排除、といったような事例に用いられる可能性もなきにしもあらず、ではないか。
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