2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《『羽仁五郎の大予言』を読む》(32)

権力が教育を破壊する(15)

教育反動(7)


「政治的中立」って何?(1)

 「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」という俳句を、さいたま市公民館が月報「公民館だより」への掲載を拒否した事件が皮切りだっただろうか。以来、自治体が「政治的中立」を理由に市民団体が主催する憲法の集会などの後援申請を拒否するケースが相次いでいる。最近では次のような事例がある。

 東京都国分寺市での事例。
 「国分寺9条の会」は2008年以来、国分寺市後援の「国分寺まつり」にブースを出し、憲法9条に関するパネル展やシール投票をしてきた。それが今年は参加を拒否された。(それをを企んだのは自民党の市議である。市議会でのどうしようもない連中のお寒いやり取りを「みんな楽しくHAPPYがいい」さんが記録しています。)

東京都調布市の事例
 『調布九条の会「憲法ひろば」』が来年一月に開く創立十周年記念イベントについて、調布市が後援しないことを決定。理由は、憲法ひろばの会則が、『「改憲」のくわだてを阻むため…』などと宣言した「九条の会」のアピール文に連帯の姿勢を示している点を問題視した。(『インターネット政党「ネット des 新党」』さんが論評している。)

兵庫県神戸市の事例
 今年の5月3日と11月3日の神戸憲法集会について、神戸市と同市教育委員会に"後援"名義使用の申請をしたが、どちらに対しても不承諾の決定。(「上脇博之 ある憲法研究者の情報発信の場」さんが論評している。)

 このような情けない動きに対して、東京新聞(4月23日)の「本音のコラム」に斎藤美奈子さん(いつも核心を突いた歯切れのよい論評で、愛読している)が次のような文を寄稿している。

中立って何

 21日のNHK午後7時のニュースが「"政治的中立への配慮"が相次ぐ」と題して講演会や展示会に対する自治体の対応を報じていた。 施設の貸し出しを断ったのは1自治体(奈良市)で2件。内容の変更を求めたのは東京都、足立区、福井県、福井市、京都市の5自治体6件。後援の申請を断ったのは札幌市、宮城県、長野県、茨城県、千葉市、静岡県、堺市、京都府、京都市、神戸市、大津市、岡山県、鳥取市、福岡市の14自治体で22件。こんなに多くの自治体が市民の自由な活動に横やりを入れていたなんてね!

 これは都道府県、県庁所在地の市、東京23区、政令指定都市を合わせた121自治体だけの調査。実際はもっと多いのだろう。内容的には憲法11件、原発7件。ほかにTPPや介護、税と社会保障など。

 この件が暗に発するメッセージは「政治的な意見を持ってはいかんよ」「政府に盾突く意見などもってのほか」という言論統制が平気でまかり通っている現実だろう。

 笑っちゃうのは、この種の「配慮」には熱心な自治体が、選挙になると急に投票を呼びかけるバカバカしさだ。「政治的に中立」で、どうやって誰かひとりに投票するのさ。このように建前と本音を使い分けるダブルスタンダードが人々の政治離れを助長する。投票率が低いと嘆く資格はないよ。

 教育関係では次のような事例がある。(以下は、高知新聞(9月12日)の記事『高知県四万十市の中学校が「琉球新報は政治色強い」と教材変更』)による)。

 高知県四万十市の中学校で、NIE(教育に新聞を)活動で、「平和・人権」をテーマにした班が「琉球新報」を利用していた。「平和・人権」班は記事を使って1学期中に2回、壁新聞を作っている。これを、四万十市の藤倉利一教育長が「政治色が強い」などと校長に指摘した。これを受けて、学校が2学期から別の新聞に切り替えた。

 記事では、他県では沖縄の地方紙を使って基地問題などを掘り下げて学習した事例があると、次の事例を紹介している。

「4年前、地元の地方紙や全国紙など計5紙を読み比べる授業を行った長野県の公立中学校では、米軍普天間飛行場の移設問題に興味を抱いた生徒たちが、沖縄県の地方紙を読んだり、大田昌秀・元沖縄県知事や住民、中学生らを取材したりし、新聞を作った。」

 もう一つ、記事は、広島大学大学院の小原友行教授(教育学 日本NIE学会会長)のまっとうなコメントを掲載している。

「面倒な社会問題を避け、自己規制をかけると、子どもは批判的思考もできず、社会現象に現実感も抱けない。むしろ論争についてこそ学ぶべきだ。・・・結論を導くのは教師ではなく、子ども自身によってでなくてはならない。・・・各紙独自の主張を把握して新聞を選ぶなどの準備をし、教師の工夫や努力、学習が必要だ。」

 このような政治権力におもねった自己規制のはしりが「山口日記事件」だった。

 もう一つ、任命制教育委員会の自堕落ぶりを示す大阪府教育委員会の現状を紹介しよう。(「都教委包囲首都圏ネットワーク」の渡部さんからのメールから引用します。)

10月29日の大阪府教育委員会で、中原教育長のパワハラが立川教育委員に暴露されました。 彼は以下のようなことを立川委員に言っています。

『立川さんなんかが何を言っても何も変わりませんよ。例えば、安倍総理が集団的自衛権を言っているのに、その内閣の大臣が全く違うことを言うのと同じこと。裏切り。すべて組織で動いているんです、「同じチーム」でしょ。裏切るんですか?共産党と一緒に、後ろから知事を刺しに行くようなもの、何のためにそんなこと言うのか。』

(立川委員が「子どものため」と言ったら)

『え??何を言ってるんですか。誰のおかげで、教育委員でいられるのか、誰のおかげかって。大きな権限、こんな地位を与えられているのか、他でもない知事でしょう』

 しかも、このパワハラが暴露されたあとに松井府知事・橋下市長はともにパワハラを問題にせず中原教育長を擁護し、松井氏に至っては問題をはぐらかし、「やめるのは立川委員の方だ」というようなことまで言っています。

ここに、彼らの非民主的、暴力団的、かつデマゴギーに満ちた本質がよく出ています。全く教育や民主主義とは程遠い連中です。一日も早くゴロツキのような中原教育長をやめさせましょう。

 さて、1953年10月の池田・ロバートソン会談において、池田が「自衛と愛国心教育」を約束したことを受けて、大達の動きはさらに勢いづく。

1954年

1月8日
 中央教育審議会、教育の政治的中立性維持について答申。教育2法の立法本格化する。

この答申にすでに現在の「教育の政治的中立」という詭弁が網羅されている。教科書Aから引用する。

 この答申は日教組の運動方針、全国教研の報告書などの一部をとりあげて非難し、つぎのようにのべていた。

「公務員の身分を有する教員は、他の一般公務員と等しく、国家公務員法または地方公務員法によって、政治的行為の制限を受けているが、更に教育基本法はすべての教員に対し、一定の政治的活動禁止の規定を受けている。これは教育の中立性を重視し、教員をして特定の政治的活動から中立を守らしめようとする趣旨に出たものである。……教員の政治的中立性に関する問題のうち、最も重要なるは、高等学校、中学校教員の大部分を包容する日教組の行動があまりに政治的であり、しかもあまりに一方に偏向している点と、その決議、その運動方針が組合員たる50万の教員を拘束している点と、その教員の授業を受ける、800万の心身未成熟の生徒・児童の存在する点とにある。」
「日教組が地方公務員法に基く職員団体の任意の連合体でありその結成そのものはもとより自由であろうが、その活動の現状をみるに前述のとおりであって、その組合員たる教員が、組合の政治的方針を学校内にもち込んで、直接教育に当ることのあるを考えれば、まことに憂慮にたえないものがある。もちろん、現在すべての教員がかくのごとくであるとは信じないけれども、これを放任することは、やがて救うべからざる事態を惹起するであろう。」
「したがって教員の組織する職員団体及びその連合体が年少者の純白な政治意識に対し、一方に偏向した政治的指導を与える機会を絶無ならしむるような適当な措置を講ずべきである」。

 このように、この答申ほど、政治権力の方針に反する教育思想、教育政策をすべて「政治的」だと断定し、これらを教育界から排除することこそ、教育の中立性を侵す最たるものであることをよく示しているものは他にない。

 大達文相は、この中教審の答申を根拠にして、教員の政治活動規制の法案を起草することになる。

2月9日
 教育2法「義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」「教育公務員特例法」一部改正案要綱を閣議で決定。16日の国会に提出。

 前者は義務教育学校教職員に特定の政党等を支持・反対させる教育をおこなうことを教唆、煽動したものは懲役、罰金を科するというものであり、後者は教育公務員の政治活動を国家公務員法(102条)、人事院規則(14ー7)を適用することによって一切禁止しようとする改悪案である。

3月3日
 文部省、偏向教育事例24を衆議院文部委員会に提出。

 文部省はこれによって世論誘導を試みたが、そのなかの多くは事実に合わなかったり、与党の調査委員が「偏向の事実なし」と報告したりで、その根拠はきわめて薄弱なものであった。

3月12日
 日教組、反証資料を配布。

3月14日
 日教組、教育2法反対の振替授業闘争を実施。

3月15日
 日教組、教育防衛大会を開催。

 日教組はこの2法が軍国主義復活のためのものであり、教員だけでなく国民の自由をうばうものだとして、日曜日に振替授業を行ない、翌日各地で教育防衛大会をひらき父母にも法案反対を訴えた。日本教育学会、全国大学教授連合、全国教育委員協議会、全国連合小学校長会、全日本中学校長会なども法案に反対した。

4月12日
 参院文部委員会、事例関係者を証人として喚問。

5月14日
 参院本会議、教育2法案を可決。

6月3日
 教育2法を公布

(次回に続く)
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