2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《『羽仁五郎の大予言』を読む》(18)

権力が教育を破壊する(1)

大日本帝国のゾンビたちの復権


 『羽仁五郎の大予言』の第三章・第四章は教育問題を語っている。それぞれの表題は「文部省を廃止せよ」「権力が教育を破壊する」である。「文部省を廃止せよ!」は羽仁さんが参議院議員として国会で論陣を張っていたときのテーマの一つであるが、今回からの表題は第四章の「権力が教育を破壊する」を選ぶことにした。また、取り上げる話題も第三章と第四章の順序にとらわれず、第三章と第四章を行ったり来たりすることになるだろう。なお、文部省は現在は文部科学省と改名しているが、ここでは「文部省」を用いていくことにする。

 もちろん、教育を破壊し続けている権力とは文部省だけを指すのではない。それは、一時下野したとはいえ、戦後の政治を牛耳ってきた高級官僚と自民党(ここでは1955年の「保守合同」以前の保守政党も含めて自民党とひとくくりして扱うことにする)、高級官僚・自民党を経済力で操っている財閥を指す。文部省はその権力の忠実な尖兵に過ぎない。そしてさらに、そこに利権に垂涎して群がっている御用学者・マスゴミなどの取り巻き連中たちが加わる。もちろん、彼らが破壊してきたのは教育だけではない。彼らは敗戦後の新生日本の基本理念である日本国憲法そのものを破壊し続けてきたのだ。その目的を貫徹するための最も重要な戦略が「人心の籠絡」である。「まだ無垢な子供の頃から洗脳せよ」、つまり、彼らには教育の破壊が必須事項なのだ。

 その破壊作戦はいつから始まったのか。それはアメリカ(GHQ)の占領政策の変化がもたらしたものだった。その発端は1947年の2・1ストに対するGHQによる中止命令、その後に続くレッドパージである。新生日本が始動してたったの2年足らずのことである。これを境に大日本帝国のゾンビたちの復権が始まる(その復権の経緯については「日本の支配者は誰か」で詳しく取り上げているので参照して下さい)。

 さて、矢崎さんは羽仁さんとの対話では本題に入る前に30分ほど雑談をやるそうだ。第三章の冒頭にはそのときの雑談が記録されている。その中に復権したゾンビの例が出てくる。また後半には「裁判は階級的である」の続編のような話もあるので、全文掲載しよう。

矢崎
 この間、刑法改正の小野清一郎さんにお目にかかったんですが、平然として「この草案は治安維持法ですよ」なんていう。なにしろ83歳と聞いていたんで「あなたは先に亡くなるからいいけど、後に残る人間が迷惑するようなものを作られてはたまらない」と抗議したんです。すると「このままでは国会は通らないだろうし、4・5年先にボロボロになって、やっと通るかどうか……」なんておっしゃる。「刑法学者は、草案をこしらえるまでが仕事で、あとはどうなってもいいんです」という。どうやら改正草案を作っただけで大満足されている様子でした。

羽仁
 ぼくは、小野清一郎をよく知ってるんだよ。あいつは戦犯なんだ。戦争中、矢部貞治や蝋山政道なんかと、東大で一緒に政治学をやっていたくらいだから、かなり右なんだ。その矢部の日記の中に「今日もまた教授会。小野清ヒステリーを起こす」なんて書かれている。つまり、戦争協力ということに対し、教授たちが冷淡だといって怒っている。戦後は公職追放令で追放されたが、それが口惜しくてたまらなかったらしい。追放解除後、法務省に泣きついて、特別顧問にしてもらった。法務省も必要じゃないんだよ。でも仕様がないから刑法改正の草案でも作ってもらおうということになったんだ。憐れみのつもりであてがったにすぎないんだろうが、それがいつの間にかできた(笑)

矢崎
 こわい話ですね。

羽仁
 そう。宮沢俊義なんかはびっくりしている。「小野君を慰さめるつもりで相手していたが、だんだんと逆にこっちが食われちゃうようなものになった」といっていた。

矢崎
 羽仁さんが参議院で法務委員をなさっていた頃、すでに小野さんは法務省の特別顧問をしていたんですね。

羽仁
 だいたい20年間も法務省でタダ飯を食ってたんだよ。

矢崎
 とても柔和な感じで親しみ深いというか……。

羽仁
 それが奴の手なんだなあ。人を丸め込むのがうまい。「おっしゃることはよくわかる」とかいってね……(笑)

矢崎 しかし年齢的にどうしても抵抗を感じますね。

羽仁
 年齢とは関係ないね。この間、どこかの高校で、校長が生徒の気持はだいたいわかるといったあとで「私も歳だから、わからないことがあるかも知れん」ていったら生徒が「年齢は関係ない。羽仁五郎を見ろ!」つて叱ったそうだ(笑)

矢崎
 刑法のことはいずれゆっくりお話をうかがうことにして、今日は教育のことをお聞きするつもりです。刑法の問題が本当の争点になるのは、早くとも2、3年先になるように思いますが……。

羽仁 ぼくは"刑法改悪反対百人委員会″というのを一年くらい前からやっているが、最近ようやく盛り上ってきた。弁護士連合会が強力な反対を唱え始めたし、各新聞も怒り出した。『ジャパン・タイムズ』まで文句をつけているからね。破防法の時ですら反対しなかった『ジャパン・タイムズ』だから。
 今朝、盛岡地裁で「公務員法17条にある"公務員の争議権の禁止"というのは憲法違反」という判決がでた。最高裁に正面から斬りかかったわけだ。

矢崎
 例の"自衛隊違憲法"の福島判決に対する最高裁の見解というのは「最高裁をさしおいて、違憲判決を出すとは何事か」といったいわば脅しをかけていますね。

羽仁
 法律的には正しくない見解なんだ。第一審裁判所にだって違憲判決を出す資格があるんだよ。ドイツには憲法裁判所というのが別にあるんだが、それでも第一審裁判所で違憲判決を出すことができる仕組みになっている。

 次回から本論に入ります。
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