2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《『羽仁五郎の大予言』を読む》(17)

裁判は階級的である(9)

スラップ訴訟(3):経済的・社会的強者による訴訟


 最後に、経済的・社会的強者によるスラップ訴訟を取り上げよう。これまでの事例のうち、高額な賠償を求めている訴訟をまとめてみる(ウィキペディアの「スラップ」ほか、いろいろなブログ記事を利用しています)。

幸福の科学による8億円損害賠償請求訴訟

 とても複雑な訴訟だ。発端は
1996年12月
 宗教法人幸福の科学の元信者(訴訟代理人・弁護士山口広)が、多額の献金を強制されたとしてとして幸福の科学への損害賠償請求訴訟を提起。訴訟代理人が提訴記者会見を開く。

 この訴訟に対して

1997年1月
 「虚偽の事実を訴えた訴訟と会見で、名誉を傷つけられた」などと主張して、幸福の科学が元信者らに対し総額8億円の損害賠償請求訴訟を提起。

 これに対し、訴訟代理人は本訴の提起が不法行為に当たると主張して反訴。幸福の科学に対し800万円の損害賠償を請求した。

判決
 8億円損害賠償請求訴訟は幸福の科学が敗訴。反訴に対しては幸福の科学に対し山口弁護士に100万円を支払うよう命じた。判決文抜粋
「批判的言論を威嚇する目的をもって(略)請求額が到底認容されないことを認識した上で、あえて本訴を提起したものであって、このような訴え提起の目的及び態様は(略)著しく相当性を欠き、違法」(東京地裁・土屋文昭裁判長)

 なお発端となった訴訟は元信者敗訴が確定していた。原告敗訴の理由は「多額の献金を強制された」との訴えに対して、裁判官は「自らの信仰のために自由な意思に基づいて提供したものである」と断じ、訴えの事実はないと却下した。

オリコン損害賠償訴訟

2006年12月
月刊誌「サイゾー」のコメント取材に応じた烏賀陽氏の発言内容が名誉毀損にあたるとして、オリコンが損害賠償5000万円を請求して起こした裁判。

 地裁ではオリコンが勝訴したが、損害賠償金は100万円に減額されていた。上告審では高裁が和解案を提示。即日、オリコンはこの「請求放棄案」を受け入れる意志を烏賀陽側に表明した。「オリコンから烏賀陽に対して起こされた本訴に理由がないことをオリコン自身が認めた」という東京高裁の説明を受け「本訴の誤りをオリコン自身が認めた以上、反訴は理由を失った」として反訴を放棄した。

ユニクロ損害賠償訴訟

2011年6月
 週刊文春2010年12月24日・2011年1月7日合併号の二つの記事
『一人勝ち企業の光と影 独裁者柳井正とユニクロ帝国』
『ユニクロ帝国の光と影』
に対して、ユニクロと親会社ファーストリテイリングが書籍の発行差し止めと回収、謝罪広告と2億2000万円の損害賠償を求める損害賠償請求をする訴訟を起こした。

2013年10月 地裁判決
 請求は全て棄却された。ユニクロは控訴する。
2014年3月27日
 東京高等裁判所は一審判決を支持し、ユニクロの控訴を棄却した。

 この訴訟の経緯については、週間文春のサイトが「本誌が勝訴!ユニクロはやっぱり「ブラック企業」を全文公開している。その記事は「だが、従業員の労働環境について、今回の判決をどう受け止めたのだろうか。」と結ばれている。

 が、なんと2014年4月9日に、ユニクロは最高裁へ上告したそうだ。その結果がどうなったのか、検索してみたがヒットしなかった。上告からまだ4ヶ月だから、判決はまだなのだろうか。

原発フィクサー訴訟

2012年3月16日
 「週刊金曜日」(2011年12月16日号)に田中稔・社会新報編集次長が『最後の大物フィクサー、東電原発利権に食い込む』という記事を書いた。「最後の大物フィクサー」とされた白川司郎氏は、「フィクサーと表現されたこと」「東電利権に関係していると書かれたこと」が名誉毀損に当たるとして、版元の週刊金曜日ではなく、田中稔氏個人のみに総額6700万円の賠償を求める訴訟を起こした。

結果は、2013年8月、提訴した当人が訴えを取り下げて終わった。

 なお、「週間金曜日」の記事の概略など、「原発SLAPP(口封じ訴訟)被害者が法廷で明かした実名」さんが詳しくまとめている。

悪徳ファンド損害賠償訴訟
(私が勝手にこう呼ぶことにしました)

2012年7月18日
 野中郁江明治大学教授の論文「不公正ファイナンスと昭和ゴム事件」(『経済』2011年6月号)と東京都労働委員会係争事案における鑑定意見書「アジア・パートナーシップ・ファンド(APF)がもたらした昭和ゴムの経営困難について」に対して、APF・昭和HD経営者である此下益司氏ら3名が名誉を毀損されたとして、総額5500万円の損害賠償請求と謝罪広告を求めて提訴した訴訟。

2013年3月15日
 これに対して、野中さんはこの訴訟は「不法提訴」であると、反訴に踏み切った。

2014年6月19日
 東京地裁(村上正敏裁判長)は、経営者側の請求を棄却する判決を出した。提訴そのものが不法行為にあたるとした野中教授の反訴については棄却した。

 この結審では裁判官は主文を読み上げたが、そこ間1分たらず」という事だったいう。なぜ反訴まで棄却なのか、知りたいので判決文を読みたいと思ったが、検索できなかった。たぶん、この訴訟がスラップ訴訟であるかどうかという法的な判断を避けたのだろう。

 なお、この裁判については「野中裁判, 編集部から」さんが詳しく記録している。

 こうしてみてくると、企業によるスラップ訴訟は2010年代に入ってから急に増えてきたようだ。こうした企業側の倫理皆無の救いがたい増長ぶりは、悪徳企業に濡れ手に粟をもたらした新自由主義による雇用破壊と労働者に対する過酷な搾取の進行と無関係ではないと思える。

 ところで今現在、スラップ訴訟を仕掛けられている方がいる。私が「事務局長日記」時代から愛読している「澤藤統一郎の憲法日記」の澤藤さんである。

DHCスラップ訴訟

 澤藤さんはDHC(大手のサプリメント・化粧品等の販売事業会社)の代表者吉田嘉明がみんなの党代表の渡辺喜美に8億円の金銭(裏金)を渡していたこと取り上げて次のようは記事をブログにアップした。
『「DHC・渡辺喜美」事件の本質的批判』
『「DHC8億円事件」大旦那と幇間 蜜月と破綻』
『政治資金の動きはガラス張りでなければならない』

2014年4月26日
 これらの記事を名誉毀損記事だとして、DHCとその代表者が、澤藤さんを被告として名誉毀損損害賠償請求訴訟(請求額2000万円)を起こした。今回のスワップ訴訟は政治家が直接関わっているという点でこれまでにないスワップ訴訟と言えるだろう。

 このスラップ訴訟に対して、澤藤さんは敢然と受けて立ち、訴訟に向けての準備を進めると同時に、『「DHCスラップ訴訟」を許さない』と題して、これまでのスワップ訴訟にも触れながら、ブログにその経緯を公開し続けている。現時点での最新記事は第17弾(8月13日付)で、それによると第1回口頭弁論が8月20日(水)午前10時半に開かれるそうである。私はこれと言ってお手伝いをすることができないが、強い関心を持って注目し、陰ながら応援している。

 なお、これまでの記事は次のようにまとめられていて、まとめて読むことができる。

『「DHCスラップ訴訟」を許さない(第1弾~第6弾)』
『「DHCスラップ訴訟」を許さない(第7弾~第17弾)』

(今回で「裁判は階級的である)を終わります。)
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