2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《『羽仁五郎の大予言』を読む》(14)

裁判は階級的である(6)

日本の国際非常識裁判


 大日本帝国では三権分立など絵に描いた餅でしかなかったが、戦後の新生日本でも相変わらずおかしい。そのおかしい事例は枚挙にいとまない。戦後のおかしい事例の嚆矢とも言うべきものとして、「裁判は階級的である(1)」では、砂川事件と長沼ナイキ基地事件の訴訟の経緯を紹介した。また最近の事例としては、「裁判は階級的である(4)」で「沖縄密約文書の開示を求める訴訟」を取り上げた。これらの事例は日本がアメリカの属国であることを如実に示すものであった。

 では、アメリカが直接的には関わらない国内的な事件に関してはどうか。やはり三権分立など絵に描いた餅である。日本では総理大臣が最高裁判事を任命する仕組みがその元凶である。これでは裁判官は行政府に従属しているようなものだ。大方はヒラメ判事に成り下がる。従って、特に違憲を争点とする行政訴訟では行政側にべったりの判決しか出せない。

 もう一つ、日本の裁判のおかしな点がある。原告の場合であれ被告の場合であれ、一般市民が上告をする道はしっかりと保証されなければならないが、検察が上告をするのはけしからん事なのだ。羽仁さんは次のように述べている。

 田中耕太郎が「日本国民はどうも乱訴のふうがある」といったのを聞いたことがある。そんなことはないんだよ。乱訴するとすれば大企業やなんかであって、国民の方はどちらかといえば無関心なんだ。第一、訴訟を職業にしている奴はいないんだからね。しかし、いざ裁判となると、そうもいっていられないから、法廷で争うことになる。それにしても証拠を収集する能力といっても調査機関を持っているわけではないし、日記をつけているような人でも、正確に覚えていることは少ない。したがって判決を受けた結果、もっと言っておけばよかったなんてことが、必ず出てくる。無罪になればともかく、有罪だったら、国民の側が控訴して再審を求めるという理由は、かなりあって不思議はないんだ。

 ところが検察側は、訴訟が専門なんだから第一審にすべてをつくして当然なんだ、ところが、一審の判決が不服だと、まだ事実が述べつくされてないとか、残りの証拠があるとかいって再審を要求する。これは職務怠慢と批難されてもいいくらいのことであって、職権乱用ともいえる。現にフランスなんかでは無罪の判決があった場合、検事訴訟は禁止されている。裁判が長引いて国民が受ける甚大な損害は、救うことのできないものだという見解によっているんだよ。

 野坂昭如君にしたって、四畳半裁判で被告になっていれば、奥さんが心配したり、隣近所に、何かと具合が悪かったりもするだろう。第一、時間をとられる。いわんや、もっと個人にとって重大な罪に問われている場合は、裁判が続いている間というもの、本人の苦痛たるやはかり知れない。しかも、最終的に無罪になったとしても、完全には救済されない。

 したがって、大切なことは裁判所の態度なんだ。どこまで対抗措置がとれるかということなんだよ。裁判所に良識があれば、あらゆる点で、未然に救済していくことができる。

 ここで羽仁さんは裁判所の良識を示すアメリカでの判例を二つ挙げている。

 アメリカでベトナム帰りの兵士が反戦デモをやって捕まった。ところが、この事件は、事前に警察側が電話の盗聴をやって内偵していたんだ。すると裁判所は「不法な盗聴行為が検察側にあった以上、本件を棄却する」と宣告した。反戦デモそのものの罪は、もはや成立しないというわけだ。日本では、そんなわけにはいかない。たとえ検察側に違法があっても、犯罪は犯罪だという考え方が支配的なんだ。

 エルズバーグの機密文書事件のときも同じで、政府側がエルズバーグが過去にかかったことのある精神分析医のところへ不法に押し入って記録を盗み出そうとしたことが明るみに出た。裁判所はただちに機密文書漏洩の訴えそのものを棄却してしまった。いうなれば、これは国際常識なんだな。日本の裁判所は、とてもここまで到達できない。

 エルズバーグ事件については、アベコベ政権が強引に推し進めている「集団的自衛権と秘密保護法」と関連している事件として、梓澤和幸(弁護士)さんが「ペンタゴン・ペーパーズ事件 アメリカの秘密保護法(スパイ法)に抵抗した男」

「エルズバーグとはどんな男か。なぜペンタゴン・ペーパーズ告発に踏み出したか」で詳しく検証している。

 次に羽仁さんは裁判所の良識を示す日本での判例を一つ挙げている。

 もっとも日本の裁判でも、ときどき、びっくりするようないい判決がある。新宿騒乱事件の証人になった日、家へ帰ってきてから"飯田橋件"判決を聞いた。あの事件は法政大学の学生が原子力空母エンタープライズ号の入港に反対して佐世保へ行こうと飯田橋で集まったところ、警官がそれを阻止しようとした。凶器準備集合罪というのが適用され学生が逮捕されたんだが、判決によると「学生は、ひたすら平和なうちに佐世保へ行きたいと思っていただけで、これを凶器準備集合とみなすことはできない。警察官がこれを阻止しようとしたことはまったく法律的根拠がなく無罪」というんだ。佐世保へ行って何をするかわからないうちに飯田橋で捕まえちまったんだが、およそ二百人の学生に二千人もの警官を動員して全員逮捕している。明らかに警察権力の行き過ぎがあったんだ。フランスなんかでデモを取り締るというのは、交通の便を妨げているという関係においてなんで、だから水道のホースかなんかでけちらせばすむようなことなんだ。日本の場合は、明らかに別の意図があって警官が動員されたとみられるケースが多い。この飯田橋事件では、公務執行妨害罪の容疑もあったんだが、判決では「違法な公務の執行について、その妨害というのは成り立たない。したがって無罪」ということになった。

 つい二日前、上の三例と同じような判決が東京地裁で行われている。産経ニュースの「覚醒剤所持の被告に無罪」を転載させていただく。

覚醒剤所持の被告に無罪
 令状なしに捜索 「無理解が甚だしい」と東京地裁  2014.8.115:24

 東京地裁は1日、令状がないのに警察官が持ち物を捜索したのは違法だったとして、覚せい剤取締法違反などに問われた男性(39)に無罪の判決を言い渡した。検察側は懲役4年を求刑していた。

 判決によると、男性は昨年10月、東京都新宿区で警視庁四谷署の警察官から職務質問を受けた。警察官は捜索差し押さえ令状が出る前に、男性が乗っていた車内のウエットティッシュの箱を勝手に開け、抗議を受けても返さなかった。箱から覚醒剤などが見つかり、男性は現行犯逮捕された。

 西山志帆裁判官は「警察官の令状主義への無理解は甚だしい。今後の違法捜査を抑制するために、無罪を言い渡すほかない」と述べた。弁護人によると、警察官は公判で「箱の中身を取り出そうとすれば、観念すると思った」と証言したという。

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