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ミニ経済学史(46)

現在の経済学は?(24):欠けている視点(10)


吉本隆明の「歴史的産業構造の転換」論(8)

 現在の長期不況から抜け出すもっとも手っ取り早い方法は、1930年代の世界大恐慌の時にいち早く恐慌から抜け出した日本・ドイツの恐慌対策を踏襲することである。つまり、政府による強権的な施策を押し通すことである。しかし、この施策は結局ファシズム社会を呼び寄せることになり、世界第二次大戦に突入していく道でもあった(「ミニ経済学史(14)」を参照して下さい)。このよう強権的な施策の結末はもうすでに目に見えている。吉本さんはおおよそ次のような経緯をたどるだろうと論じている。

 そのやり方というのは結局ファシズムやロシアのマルクス主義にちかいものになるとおもいます。はじめは統制を敷いて、銀行はああしろ、大企業はこうしろといって、おしまいはだれの利益に集約されるかといったら、ファシズムでは大企業や大金融機関、もう一方、ロシアでは官僚です。最終的にいい目を見るのは大企業や大銀行、高級官僚であって、いずれにしろ国民一般ではありません。ファシズムとロシア・マルクス主義は双生児ですから別にちがうものではありません。国家社会主義と一国社会主義、呼び方がちがうだけで実体はいっしょです。

 彼らがはじめにやることはおなじです。一見大衆のためになりそうなことを強引にやります。むりにでも社会を変えようとします。そしてそれが推し進められ、ふたたび正常な経済状態に戻ったとき、結局そのシステムがだれにとってよかったのかといったら、大企業や官僚です。ぼくらがかんがえることは、そうではなくて、国民一般や中小企業、金融機関なら信用金庫や信用組合、それらが自由にふるまえるようにすることです。ファシズムもロシアのマルクス主義もそういう地点に落ち着かせることはかんがえてもいない。だから途中まではよかったんだけれども、最後は国家官僚、あるいは資本家とか大企業がいちばん利益を得て一般の人はそう変わりないやと、そんなところに落ち着いてしまうわけです。

 マスゴミでは相変わらずアベコベミクスの効果を喧伝する声が大きいが、「資本家とか大企業がいちばん利益を得て一般の人はそう変わりない」というアベコベミクスの落下地点がはっきりと見え始めている。安倍は大企業に対して「賃金を上げてほしい」と懇願し、その手下どもが次のようにファシズムまがいの恫喝をした。

甘利明経済再生担当相
「政府は、復興特別法人税の減税を前倒しして、(企業に)原資を渡している。 利益があがっているのに何もしないのであれば、経済の好循環に非協力ということで、経済産業省から何らかの対応がある。」

茂木敏充経産相
「経団連や連合と協力して賃金の伸び率や企業収益を調査し、東証1部上場企業については企業名も含めて公表したい。」

 一昨日(5月30日)の東京新聞朝刊がその賃上げの成果を報道していた。次のようである。

夏ボーナス 伸び最高 経団連集計 大手企業8.8%増

 経団連が29日発表した大手企業の夏の賞与・一時金(ボーナス)の第一回集計によると、組合員平均の妥結額は昨年夏比で8.80%増の88,9046円と、現行方式で集計を始めた1981年以来、伸び率でバブル期の90年(8.36%)を上回って過去最高となった。

 景気の回復傾向を受けて業績が改善しており、大企業がボーナスを増やして社員への還元を強めていることを裏付けた。

 政府がデフレ脱却のため、経済界に今春闘で異例の賃上げ要請をしたことも反映したとみられる。夏場以降、消費が拡大し、景気に好影響を与える可能性がある。一方、中小企業やサービス業では、人手不足からやむを得ず賃上げを実施しているところもあり、ボーナスを含めた人件費の増加が経営の足かせになる恐れが出ている。

 夏のボーナスの増加は2年連続。妥結額は2008年(93,0329円)以来の水準だった。

 調査は東証一部上場の従業員500以上の大手企業240社を対象にし、平均の妥結額が判明した74社を集計した。

 ごらんのように大企業対象の調査に過ぎない。中小企業の場合は、ボーナス増を行ったとしても、それは苦渋の選択であることも指摘されている。

 では一般庶民はどのような恩恵を受けているのだろうか。私の実感では、恩恵どころか家計はますます逼迫され続けている。同じ日の夕刊には一面記事でその実情が報道されている。大表題は『増税 賃上げ分帳消し』である。小表題とそれぞれの記事の基礎資料を拾うと次のようである。

「消費者物価3.2%増 4月 バブル後最大」

消費税増税後の経済指標

「家計支出 大幅反動減4.6%」

消費税増税後の家計反動

 これらの記事を受けて、石川智規記者が次のような論評をしている。

給与の伸びは1%

 全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)が大きく伸びた背景には、4月からの消費税増税分を商品価格に上乗せする「価格転嫁」が幅広い品目・サービスで実施されたことがある。1991年2月のバブル期以来という高水準の上昇だが、当時は給与が前年同月比で約5%伸びていた。今回の賃上げ率は1%程度の見込みでしかない。賃金の上昇が物価の上昇に追いつかなければ当然、個人の暮らしは苦しくなる。夏以降に消費が落ち込み、景気が再び低迷する引き金になる恐れがある。

 物価の動向は経済が活発か停滞しているのかを示す「経済の体温計」とたとえられる。今回の指数の上昇は、経済学的には日本経済を低迷させてきたデフレからの脱却に向かう光明、と見ることもできる。30日発表された有効求人倍率などの雇用関連統計も高水準を示した。経済産業省は、大手企業の43%が賃上げを実施したと発表した。

 しかし、4月の家計調査で一世帯当たりの消費支出は前年同月比で大きく減っている。3月の消費税引き上げ前の駆け込み需要の反動もあり個人の消費意欲が減退していることを示している。現在の日本経済は、輸出が想定よりも伸びない中で国内の個人消費に支えられている。消費の動向は再び景気が低迷するかどうか、重要な試金石だ。

 政府は今、法人税減税や残業代カットなどを志向し、企業重視の姿勢が色濃い。だが、家計が苦しみ消費が減れば、日本経済全体が再び低迷するおそれもある。賃金上昇を企業に継続的に促すなど家計へのしわ寄せを緩和する政策が求められる。個人と企業がともに成長できる政策運営こそ不可欠だ。(石川智規)

 現状分析にはおおむね同意できるが、政府に「賃金上昇を企業に継続的に促す」政策を提言している点はいただけない。ここで問うべきは企業首脳者たちの企業倫理だろう。企業に業績アップがあったのなら、その配分を適切に労働者にも還元するのは当然なことなのだ。現在の企業首脳や御用学者(最も典型的な御用学者は今また大きな顔をし始めた新自由主義教信奉者の竹中平蔵)の念頭にあるのは自分たちの分不相応な報酬だけで、「従業員の・・・・・・ゆとりと豊かさを実現する。」(経団連の憲章「社会の信頼と共感を得るために」の中の一文)、言い換えれば一般庶民の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に対する配慮などはみじんもない(「日本の不良会社」を参照して下さい)。

 さて、吉本さんはファシズム的な強権的政策に対して、「国民一般や中小企業、金融機関なら信用金庫や信用組合、それらが自由にふるまえるようにする」政策を提唱している。具体的にどのような政策を語っているのか、次回はそれを読んでみよう。

《追記》(6月3日)
 日刊ゲンダイも国民経済の現況について、『「経済指標」をキチンと読めば景気はこんなに悪化している』と報道しています。
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