2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
ミニ経済学史(36)

現在の経済学は?(15):欠けている視点(1)


 多くのこと(特に数式やグラフ)をはしょりながらの不十分な学習であったが、一通り経済学史を終えた。最後に現在の経済学についての疑問点をまとめておこう。

 前回紹介したように、教科書⑦が日本型雇用慣行の崩壊の原因として次の2点を指摘していた。

(1)「IT革命やロボット技術の進展」
(2)「人口減少や低成長の時代」

 しかし、私は、このような歴史的な産業構造の転換が雇用慣行の変化をもたらす要因であることは分かるが、これだけが理由でアメリカ型の弱肉強食の新自由主義が日本型雇用慣行を崩してきたとは思えない。産業構造の転換の行き着く先が新自由主義と呼ばれる弱肉強食のアメリカ型の雇用であってよいはずがない。「路頭に迷う失業者や、飢えに苦しむ人」を生み出してきた本当の元凶は別にあると思う。この現在日本の労働者が置かれている状況は産業構造の転換が真の原因ではなく、財界の意図を汲んだ政治的な作為が真の原因である。そう、その元凶は労働者派遣法である(以下はウィキペディアの「労働者 派遣法」「労働者派遣事業」を参考にしている)。

 第1次オイルショック後の1975年頃から労働者派遣業者が急速に増えて来たことに対応して、1985年に労働者派遣法が制定された。この法律は本来は派遣労働者の保護を目的としたものである。正規の法律名は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」と言い、その第一条で次のように謳っている。

「この法律は、職業安定法(昭和22年法律第141号)と相まつて労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の就業に関する条件の整備等を図り、もつて派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする。」

 そして、その対象の業種は汎用的技能に関わるものに限られていた。次の16種である。
ソフトウェア開発
事務用機器操作
通訳・翻訳・速記
秘書
ファイリング
調査
財務処理
取引文書作成
デモンストレーション
添乗
建設物清掃
建築設備運転・点検・整備
案内・受付・駐車場管理等
機械設計
放送機器等操作
放送番組等の制作

 この法律は1996年に改定されて、対象業種は26業種に拡大されたが、なお汎用的技能に関わるものに限定されていて、それなりの合理性を保っていた。

 それが1999年改悪されて
《「港湾運送・建設・警備・医療・製造」以外》
というように業種がポジティブリストからネガティブリストとなり、派遣業種が一気に拡大された。そして、2004年の改悪で製造業務がリストから除外され、製造業務の派遣が解禁される。これらの改悪を先導したのはオリックス会長宮内義彦が議長を勤めた『規制改革会議』である。宮内は規制改革会議議長を1996年から2007年までの11年間も務めている。従って、小泉の悪政「聖域なき構造改革」にも深く関わっていたことになる。2004年の改悪についての一文をウィキペディアからそのまま引用する。

「このときに適正なセーフティーネットや雇用者に対する派遣先企業の責任が全く盛り込まれなかったため、今日の安易な『派遣切り』に結びついたといわれる(ちなみに宮内は、規制改革会議議長を1996年から2007年の小泉内閣終了まで11年間に渡って務めている)。2009年に時の厚労相・長妻昭は製造業務における単純作業への派遣及び受け入れを改めて禁止したい意向を示し、法案も存在するが、民主党政権成立以後も一年単位で繰り返されている内閣総辞職と新内閣構成、また2013年には自民党が政権復帰したこと(第2次安倍内閣)により、法案成立の目途は立っていない。」

 長妻元厚労相による改正案は「成立の目途は立っていない」どころか全く無視されて、2014年3月11日、安倍内閣は労働者派遣法の決定的な改悪案を閣議決定した。この改悪案の危険性を佐々木亮(弁護士・ブラック企業被害対策弁護団代表)さんが「派遣労働の不安定さの理由と派遣法改正案が持つ危険性」で分かり易く解説している。佐々木さんは派遣労働の本質分析して、今回の改悪案を「派遣労働者をおそらく爆発的に増やすであろう」と結論している。

 いま日本を席巻しているアメリカ型新自由主義は、ナッシュ均衡として落着したのではなく、財界の意を汲んだ極めて政治的な作為による雇用慣行の破壊である。
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クールヘッドで
「ぶっこわす!改革だ!」という「ワンフレーズポリティックス」に拍手・喝采し、高い支持を与えた国民が、結局「非正規雇用の増大と所得水準の大幅低下」という「つけ」を払わされたわけですね。
 散々あおったメディアの責任も重いですが、やはり一人一人が報道に踊らされず常に自ら考えるようにしないとまた騙される気がします。
 安部政権の集団自衛権や尖閣問題対応、「みんな・維新」などの評価、さらに「STAP細胞騒動」についても「クールヘッド」で対応したいですね。
2014/04/10(木) 09:35 | URL | 愛読者 #KUmnAu4w[ 編集]
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