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ミニ経済学史(28)

現在の経済学は?(7):リフレ策は本当に有効なのか(1)


 イザナミ景気の再不況化という顛末は金融緩和の打ち止めのタイミングを誤ったためである、という結論だった。簡単にまとめると次のように言えよう。
 日銀が打ち出したリフレ策は当初の設備投資や純輸出に主導されて上昇しはじめた。しかし、景況が個人消費の上昇にまで波及して好況が本格化する以前に金融緩和の打ち止めが行われてしまったため再不況に陥った。

 そして、こうした景況の推移はマクロ経済学の理論通りであるという。では、そのまま金融緩和を続けたとして、本当に本格的な好況を迎えることになっただろうか。私は大いに疑問視している。経済学の断片をかじり始めたばかりの私には確かな分析力が無いので、私の疑問に応じてくれるいろいろな学者の分析を手掛かりにしよう。

疑問1
 リフレ策がある程度の効果を発揮することは疑問の余地はないと思うが、実際の市場の動向には日銀の金融政策に対する「人々の予想」だけで動くほど単純ではないだろう。素人にも「人々の予想」とは無関係なさまざまな要因が関係しているだろうことは容易に想像が付く。現在進行中のアベコベミクスで見てみよう。アベコベミクスにより株価が上昇し円安が進んだと肯定的に語る学者が圧倒的に多いようだが、内実はどうなのだろうか。植草一秀さんの分析は次のようである。(「二首長選取りこぼしは安倍政権終わりの始まり」からの引用です。)

 2013年は安倍首相にとって順風満帆の年、わが世の春を実感した年であった。

 しかし、冷静に考えれば、成果と言えるのは円安・株高が進行したくらいのものだった。安倍首相はこれをアベノミクスの成功だとアピールするが、金融変動を詳細に分析すれば、それも正しくない。

 円安が進行した最大の背景は、米国長期金利の上昇にあった。米国の10年国債の利回りは2012年7月に1.38%の最低水準を記録した。これを起点に上昇トレンドに転換し、2013年9月、12月に3%台に乗せた。この米国長期金利上昇がドル高・円安トレンドを生んだ。

 日本株価は円ドルレートに完全連動しており、ドル高=円安トレンドの実現に連動して日本株価の上昇トレンドが発生した。

 アベノミクスの第一の矢、第二の矢である、日本の財政金融政策発動はこうして生じた円安・株高の流れを補強したに過ぎない。

私はこの分析はとても説得力があると思う。

疑問2
 「人々の予想」というときの「人々」とは誰のことなのだろうか。インフレ予想を企業が設備投資の判断基準としたり、銀行や投資ファンドや投資をなりわいとしている投資家たちが投資の判断材料とするだろうことは統計資料からも納得できる。しかし、少なくとも私はその「人々」の中には入らない。私は家(もちろんローンで)や自動車を購入するときにインフレ予想だとかデフレ予想とかを考えたことはなかった。いや、そんな言葉があることすら知らなかった。また、買い物はいつも必要なときに必要な物を買うだけだった。だから買いだめというのもしたことはない。消費税導入や消費税上げのときも石油危機のときも買いだめには無縁だった。また、緊急時などの必要に備える程度の貯金はあるが投資にまわすほどはないから、というより投資にまったく関心がなかったので投資をしたことはない。「流動性選考」で投資をしないわけではない。貯金や投資について、私と同じような経済活動(?)をしている人はどの位いるのだろうか。総務省統計局に全国消費実態調査というのがある。5年おきに調査されているようだ。2004(平成16)と2009(平成21)年版の全国消費実態調査を調べてみた。

 二人以上の世帯についての統計を用いる。原資料は貯蓄高によって12区分を設けている。それぞれの各区分について貯蓄高と負債高の一世帯当たりの平均が計算されている。ここで貯蓄とは通貨制預貯金(普通貯金+定期貯金 以下では貯金と略記)・生命保険等・有価証券を合計したものである。また、有価証券とは株式・株式投資信託(株式と略記する)、債券・公社債投資信託、貸付信託・金銭信託を合計したものである。データとして貯蓄高・有価証券をピックアップする。また、それぞれの貯金・株式の内数を( )で示した。なお、金額の単位は原資料は「千円」だが、ここでは「万円」に直した。

2004(平成16)年版
 貯蓄高による区分 世帯数(%) 貯蓄高(貯金) 有価証券(株式)有価証券所持世帯(%)
 150未満 12.44   60.8 (34.4)    0.6  (0.5)    1.8 (1.3)
 150~300 10.53  220.7 (110.7)    3.6  (2.8)    4.7 (3.8)
 300~450 10.13  369.3 (186.6)    7.7  (5.6)    8.1 (6.5)
 450~600  9.45  520.0 (256.4)   13.6  (9.2)   10.3 (7.4)
 600~750  8.33  668.0 (333.3)   21.2 (15.2)   14.1(10.5)
 750~900  6.53  820.0 (416.1)   31.7 (21.3)   17.8(13.5)
900~1200 10.70 1039.8 (541.6)   42.8 (30.5)   21.4(16.1)
1200~1500  7.12 1332.7 (718.3)   74.4 (47.5)   26.3(19.9)
1500~2000  7.64 1724.4 (937.0)  118.1 (77.2)   32.5(24.9)
2000~3000  8.04 2437.4(1419.5)  221.6(140.8)   41.4(31.4)
3000~4000  3.90 3438.7(2049.2)  391.9(223.9)   52.3(39.4)
4000以上  5.18 6528.4(3922.1) 1156.5(686.8)   67.2(53.7)
―――――――――――― ―――― ――――
平均     1555.7(887.1)   170.9(103.9)   24.0(18.5)

2009(平成21)年版
 貯蓄高による区分 世帯数(%) 貯蓄高(貯金) 有価証券(株式) 有価証券所持世帯(%)
 150未満 11.20   66.9 (49.5)    1.0  (1.0)    2.6 (2.3)
 150~300  9.08  216.9 (142.8)    5.2  (4.3)    6.5 (5.1)
 300~450  8.83  366.8 (235.2)   10.8  (8.2)   10.2 (8.3)
 450~600  7.53  519.0 (325.7)   17.6 (12.1)   13.4(10.5)
 600~750  7.02  667.3 (406.1)   27.4 (19.5)   13.4(10.5)
 750~900  5.43  819.2 (482.2)   36.9 (26.8)   18.9(15.3)
900~1200  9.27 1036.3 (625.1)   61.1 (40.9)   24.7(19.4)
1200~1500  6.75 1333.5 (807.5)   93.3 (64.8)   30.7(24.1)
1500~2000  8.39 1723.8(1066.9)  150.0 (95.5)   38.4(29.5)
2000~3000  9.94 2427.5(1537.6)  274.2(157.6)   47.2(36.1)
3000~4000  5.69 3440.7(2183.3)  465.1(271.5)   55.8(43.4)
4000以上  8.65 6504.6(3918.4) 1348.0(756.3)   71.1(57.3)
―――――――――――― ―――― ――――
平均     1520.8(936.7)   201.8(117.7)   26.6(21.0)

 こうした統計には組み込めない事柄がある。

 例えば、資産の一部を貴金属で所有したり、貸金庫や自宅の金庫で保有している人もいるだろう。あるいは最近よく話題になる「タックス・ヘイヴン」を利用して脱税をしている場合もあるだろう。その額は、莫大は資産を所有している人ほど、上の統計の貯蓄や有価証券を大きく上回るであろう。

 また、貯金について言えば、それが「流動性選好」の結果の貯金なのか、緊急時の必要に備えての貯金なのかはその金額だけでは簡単に判断できない。不意の病気・怪我や家屋の修繕、あるいは人生の後始末(生命保険のような遺産のことではない)に備えたりするほかに、未成年の子供がいる世帯ではその教育費を考慮する必要もあり、子供が多ければその額は相当なものになろう。

 このような統計資料からは読めない事柄は置くほかない。ともかく、上の資料から何か読み取ることができるかどうか、考えてみよう。
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「買いだめしたことなし。消費税導入や消費税上げ、石油危機のときも買いだめ無縁。必要に備える程度の貯金はあるが投資にまわすほどはないから、というより投資にまったく関心がなく投資したことはなし」
私も「全く同じような経済活動」の人間のひとりです!
2014/01/21(火) 21:00 | URL | 愛読者 #KUmnAu4w[ 編集]
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