2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
ミニ経済学史(12)

新古典派の時代(5)―A.マーシャル(2)・需要曲線

 微分などの数学使って効用価値説を確立した新古典派は数学知らない古典派の費用価値説は時代遅れだと批判する。一方、古典派は効用価値説などは現実離れしていて非科学的だと反論する。限界革命当初は効用価値説と費用価値説はまさに犬猿の仲だったようだ。しかし、マーシャルがこの論争のけりをつけたという。すなわち、「タイムスパンを短くとるほど新古典派の理論が成り立ち、長くとるほど古典派の理論が成り立つ」というのがその結論らしい。松尾さんは、このマーシャルの解決にもかかわらず、日本の学界ではつい最近まで「労働価値説か効用価値説か」の論争が行われていたと言い、「100年前で歴史が止まってたようなものだ。」と手厳しい。しかし、効用価値説を学習中しながら、私はいくつか「?」にぶつかっている。どうなることやら、ともかく進んでみよう。

 マーシャルの理論に需要曲線・供給曲線(マーシャリアン・クロスとも呼ばれている)という概念がある。次のようである。

需要曲線・供給曲線

需要曲線・供給曲線について、広辞苑は次ぎように説明している。

「需要曲線」
「需要者がその価格で購入してもよいと考える、需要量と価格との関係を示す関数をグラフで表した曲線。」

「供給曲線」
「生産者がその価格で供給してもよいと考える、産出量と価格の組合せを示す曲線。」

 つまり、これらの曲線はなにかキチンとした式があって書かれたグラフではなく、経済の仕組みを説明するためのイメージ図と考えればよいようだ。

 需要曲線・供給曲線はミクロ経済学の教科書には必ずでてくるそうだ。なんと、中学校の社会の教科書にも出てくるという。一般に、需要曲線・供給曲線は次の図のように書き表されている。

マーシャリアン・クロス

 上の図で曲線①②のどちらが需要曲線でどちらが供給曲線だろうか。数学では独立変数を横軸にとり、従属変数は縦軸である。だからこれを初めて見たとき、私は①が供給曲線で②が需要曲線と判断した。ところが違っていた。このグラフは縦軸→横軸と言う順で読むそうだ。つまり、価格が独立変数、で数量が従属変数。従って、次のようになる。

曲線①が需要曲線
 (価格が高くなるほど需要数は減少する)。
曲線②が供給曲線
 (価格が高くなるほど供給数は増加する)。

 なぜこのような常識とは逆の設定をしたのだろうか。マーシャルがそのように設定したのを誰も修正することなく、そのまま踏襲されてきたというのだろうか。中学生も相当戸惑うことだろう。これも初心者にとっては迷惑な話だ。

 ところで、曲線①②の横軸の数量はそれぞれ需要数・供給数という意味であることは明らかだが、縦軸の価格は何を意味しているのだろうか。それぞれ需要者あるいは供給者が希望する価格という意味合だろうか。教科書④は具体的な例を用いて詳しく説明しているので、煩をいとわずそれを読んでみる。

 需要曲線の価格と曲線の意味
 「限界効用」の意味は「消費を1単位増やしたときの効用(満足度)の増加分」だった。この「限界効用」を貨幣評価で表したものを
「需要価格」
と言う。

 えっ、満足度を貨幣評価する? どういうこと? 満足度を数値化すると言うことだろう。でも満足度という主観的な感覚を数値化するなんて、できるの? ともかく説明を読んでみよう。次のように解説している。

 パンが3個ある。Aさんがそのうち1個を80円で買った。そして、2個目も売ってもらえるとしたらいくらで買うか、という問題設定をしている。(今は1個で足りるのだが、2個目を言い値で買えるとしたらと意味なのだろう。)Aさんは30円なら買うと答える。さらに、3個目を買うとしたら、と続く。Aさんは10円と答えた。次のような図になる。

限界効用量の意味

 これが「Aさんのパンに対する限界効用の貨幣評価」を表していると説明している。そしてこのように「パンが1個、2個、3個と増えるごとに、限界効用の貨幣評価が80円、30円、10円と減っていく」ことを
「限界効用逓減の法則」
と言う。そして解説は次のように続く。

 売り手がこのパンを1個20円で売ると言ったら、Aさんは何個買うことになるだろうか。この問いに対する答は2個。なぜなら、1個目と2個目は20円で買うと得をするが、3個目は損をすることになるから。上の図でいうと20円のところから引いた横線より上にでた分だけ得をするので1個目と2個目を買うことになる。

 1個目―80円、2個目―30円、3個目―10円という価格が「需要価格」である。また、横線より上に出た得した分の合計70円を
「消費者余剰」
と言う。

 以上は買い手を一人、商品をパンと仮定したモデル例だが、商品をパンと限らず「何か一つの商品」とし、買い手を社会全体に拡大して一般化してみる。

 上の理屈と同じで、その商品が1個新しく増えるごとに、それをいくらなら買いたいかという評価額を考える。大勢の買い手の中で一番高く評価した人がその1個を優先で買えることになる。この最高評価額が一般化されたときの需要価格である。2個目・3個目……の需要価格を図5-2のように書き並べて、その一番上の点を結ぶと折れ線グラフが書ける。評価者が無数に多くなり、商品の個数も多くなると、このグラフの刻みが細かくなって行く。これを近似したものを需要曲線である。図5-2をこの需要曲線で置き換えて書き表すと次のようになる。

需要曲線

 この図で言えば、評価額がKのときの需要量がJであり、斜線部分が消費者余剰ということになる。
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