2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
今日の話題



アベコベミクス政権と待機児童問題


 前回、現政権をアベコベミクス政権と命名したが、そのアベコベ政策を、私たちの生活に直結する経済・労働問題にしぼって具体的にまとめておこう。(「五十嵐仁の転成仁語」の論攷「総選挙後の政治情勢をどうみるか-その3」)が大変分かりやすく分析しているので、これを利用させていただく。)

 五十嵐氏は現政権の本質を次のように厳しく批判している。

 第2次安倍政権の主要幹部は、いずれも失敗した人たちばかりである。安倍首相は前回、任期途中で政権を投げ出した。副総理の麻生太郎元首相は総選挙で惨敗して民主党に政権を譲った。法相になった谷垣禎一前総裁は総裁選挙に立候補できずにその座を追われた。いずれも挫折した人々であり、「敗残者の群れ」が第2次安倍政権なのである。

 しかも、このような失敗の背景には政策的な行き詰まりがあった。それにもかかわらず、過去の政策に対する反省もなければ発展もない。官僚主導型利益誘導政治という古い自民党の失敗と、その自民党をぶっ壊すとした新自由主義的「構造改革」という新しい自民党の失敗を重ね合わせた「ワーストミックス」が安倍新政権の政策的骨格となっている。全く整合性のないこのような政策では成功するはずがない。

 以下、アベコベ振りを列挙しよう。

 家計消費支出が08年から4年連続のマイナスになっている。これを改善する施策は全く出てこない。アベコベに消費税率を引き上げようとしているのである。これでは消費支出が増えるはずがない。それどころか、次のような弊害が出てくるだろう。(「田中龍作ジャーナル」の「消費税増税にNO 「自殺者5万人に増える」指摘も」より引用)

 消費税の特質は冒頭でも述べたように貧乏人ほど重くのしかかってくることだ。反貧困ネットワーク代表理事の宇都宮健児弁護士が指摘する―

「消費税は貧困と格差を拡大する。消費税よりも金持ち層への増税で所得を再分配すること。消費税増税は低所得者に2重苦、3重苦を強いる」。

 ジャーナリストの斎藤貴男さんは「今は3万人を割っているが、消費税が増税されたら自殺者は5万人になるだろう」とみる。食べて行けなくなり、生活保護も受給できなくなったら、人間は死ぬしかないのである。

 デフレ脱却には、収入が増えて義務的な支出が減るような施策が必要である。可処分所得が増え、内需が拡大すれば景気は良くなるだろう。これとはアベコベに、アベコベ政権はデフレからの脱却と称して金融緩和という紙幣の増刷をしようとしている。景気が良くなるとはしゃいでいるのは投資家だけである。この施策は、むしろ、実体経済を壊滅的に弱体化するリスクがある。

 このことに関して、地球座というサイトでブダペスト在住の経済学者・盛田常夫氏の論文「目先の損得に一喜一憂する愚かさ」に出会った。経済には(にも、と言うべきか)全く疎い私にもとても役に立つ論理明晰な論文だ。そこから引用しよう。

 経済記事や株式・為替相場で良く使う言葉に、「市場が反応する」という表現がある。あたかも日本経済の市場全体が、ひとまとめに反応しているような表現だが、この「市場」は「金融市場」のこと。しかし、金融市場だけで国民経済が動いているわけではない。実物経済市場は金融市場とはまったく別のメカニズムで動いている。実物経済の一面は金融市場に反映されるにしても、ほんの一部にすぎない。なぜなら、金融市場で日常的に動いているお金は余剰資金や「あぶく銭」で、しかも巨額の「あぶく銭」の動向が証券や為替の相場に影響を与えているが、「あぶく銭」は実物経済とはほとんど無関係に動いているからだ。

(中略)

 円安の進行や株式市場の上昇を見て、「やはり経済は期待で動く」と主流派経済学の正しさを主張するエコノミストは多いが、それは金融市場だけに通用する話。製造業や消費者が「将来期待」で動くと想定するのは現実を無視した分析。金融市場の論理を国民経済全体のメカニズムにまで普遍化して、「期待」で経済行動を説明するのは間違い。だから、専門外の学者に、「経済学はニュートン力学以前」と軽んじられる。製造業の実態も知らないで、目に見える金融市場の動きだけを見て国民経済全体を語る経済学者は「群盲象」の類だ。これこそ主流派経済学が現実経済の分析に無力な理由だ。実物経済は金融経済の論理で動く世界ではない。製造業復活の戦略もないのに、通貨量だけを増やせば、悪性インフレになるだけだ。

 以上のようなアベコベ政策を阻止するには次の参議院選で鉄槌を下すしかないだろう。五十嵐氏は次のようにまとめている。

 生活苦の増大→消費の減少→国内市場の縮小→景気悪化→生活苦の増大というデフレスパイラルを逆転させることが喫緊の課題になっている。それによって、積極的な雇用創出→賃上げ・時短→可処分所得・自由時間の増大→消費の増大→景気の拡大という「天国の循環」を実現しなければならない。

 せっかくの総選挙であったにもかかわらず、生活を守れるような政権を実現できなかった。その課題を自ら引き受け、自衛するしかない。さし当たり、春闘での賃金引き上げ、消費税増税の阻止、福祉・雇用の安定と働くルールの確立と順守をめざすべきであろう。

 ところで、3月から4月にかけて東京新聞が待機児童問題を精力的に取り上げていた。私の身近にも待機児童問題を背負っている若い夫婦がいるので、他人事ならぬ思いで記事を読んだ。

 政治家は少子化問題を憂えてみせるけど、何ら有効な政策も打ち出せないでいる。結婚もできないような低賃金の歯止めや企業の一方的な解雇の禁止などとともに育児支援の充実こそが少子化問題解決の要である。ところが前回に触れたように、アベコベに産業競争力会議・規制改革会議が、サラリーマン全員をアルバイトにするような首切り法案を画策しているという。

 育児支援については保育所の充実のほかに、希望者には3歳まで育児休業を認める制度が必要だと考えていた。ただし、1年で職場復帰したら、居場所がなくなっていたとか、さまざまなパワハラを受けて退職に追い込まれたといった報道を度々目にする。不良企業の体質が変わらなければ新たな問題を引き起こしかねない。私は常々このように考えていたところ、なんとアベコベ首相が「3年間の育児休業」を主張し始めた。東京新聞(18日付夕刊)から転載する。

首相「育休3歳まで延長」
 待機児童5年でゼロに

 安倍晋三首相は18日午前の民放番組で、女性の雇用環境を改善するため、育児休業が取得できる期間を現行の育児・介護休業法が定める最長1歳6ヵ月までから3歳までに延長する考えを明らかにした。

 首相は、女性が働きやすい環境の整備を「成長戦略の中心的な柱だ」と強調。育休については「3年間は子どもを抱っこし放題してもらい、3年後からはちゃんと会社に戻れるように支援したい」と延長の必要性を強調した。保育所の待機児童数についても「5年間でゼロを目指していきたい」と指摘。具体的な対策として、全国ワーストの待機児童数を3年で解消した横浜市の手法を全国で生かすことを挙げた。

 この言や良し、といいたい所だが、果して実行できるかが問題だ。11年度の都知事選で東京新聞が候補者へのアンケートを行っている。
「共働き世帯の増加で保育園の待機児童が増えるなど、子育て環境の充実が求められている。子育て支援にどう取り組むか。」
という問に対して石原は次のように回答をしている。
『待機児童の解消、新生児集中治療室(NICU)の増床など、「少子化打破緊急3か年事業」を強力に前進させる。妊娠・出産・小児医療をさらに充実させるとともに、すべての子育て家庭のニーズにサービス選択で応える「ベビー東京・キッズ東京」を創設し、子育て世代を強力にバックアップしていく。』
 虚言もいいとこ、ほとんど何もやらずに任期半ばで職務を放り出した。東京は相変わらず待機児童がわんさかいる。オリンピック招致に使った税金を子育て支援に使っていれば待機児童問題はとうに解決しているはずだ。

 また、首相は横浜市の成功例を取り上げているが、今横浜市は保育所は充実したけれども、保育士不足で悩んでいる。仕事の重要さに見合った待遇(勤務条件や賃金)が行われていないからだ。この面の改善施策も同時に行われなければならない。『保育士確保厳しく 「認可園」拡充したけど』(東京新聞4月3日付け朝刊)から引用しよう。

 待機児童の多い自治体を対象に、厚生労働省が行った2011年度の調査では、8割が「保育士不足」と答えている。保育ニーズの高まりに逆行して、保育士不足に拍車をかけている背景には待遇の悪さがある。

 民間の認可保育所の場合、国や自治体から支出される運営費に、保育士の人件費も含まれている。だが、国の基準に基づく給与水準は十分とは言い難い。12年の国の賃金構造基本統計調査によると、民間保育士の平均給与は月約21万円。全業種平均の約33万円を大きく下回る。

 待遇面から長続きしない人も多く、保育の質にかかわってくる。

 国は今月から、待遇改善策として民間保育所に勤める保育士の給与を引き上げる。試算では最大月8000円程度の上積みとなる。

 全国福祉保育労働組合(東京)の澤村直(ただし)副委員長は「待遇改善は前進したとはいえ、金額的、制度的にまだ不十分。今の労働条件のままなら、いくら器を増やしても保育士は増えない」と指摘する。

 今日の東京新聞朝刊に「3年間の育児体業」に対する読者の声が報道されていた。

 安倍晋三首相が19日、経済団体に要請した「3年間の育児体業」。選択肢の一つとして評価する声がある一方「長い育休より、復帰後の細やかな支援を」との意見も多い。

 横浜市の教員女性(40)は、次女(二つ)出産の際、2年間育児休業を取った。「たっぷり一緒にいられて良かった。3年取りたい人が取れるようにするのは賛成」と話す。

 6歳になる双子の男児を出産し、2年半休業した東京都世田谷区の看護師女性(43)は「勘を取り戻すのに苦労した」。会社員女性(35)も「IT系は3年もブランクがあるとついていけなくなるし、収入が減って家計も困る」と話す。

 男児2人を育てる横浜市の派遣社員女性(36)は「育休を延ばすより、時短勤務を小学6年まで使えるようにしたり、学童保育を増やしたりしてほしい」と訴える。

 「堂々と育休を取りやすいのは正規職員。雇用形態による格差を解消することも必要」と指摘するのは、さいたま市の専門職女性(41)だ。

 企業は新たな課題を突き付けられた。大手の多くでは休業関連の整備が一段落し、子育て中の女性を戦力化する施策が最近の課題だ。あるメーカーの人事担当者は「今はどうしたら早く復職してもらえるかを議論しているのに」と当惑する。

 首相は、女性の役員登用も経済界に要請したが、大手商社の人事担当者は「休業が長いと戦力に復帰しづらくなり、女性役員の育成と矛盾している」と指摘した。

 母子保健の現状に詳しい助産師の吉田敦子さん(52)は「今の子育て世代は、インターネットに依存し地域とのつながりが薄く、長い育休をとっても親子だけで孤立しがちだ。育児が楽しめる人ばかりではない。『三年間抱っこし放題』より、いろんな人に抱っこされる環境が必要では」と話している。

 それぞれもっともな意見だと思う。こうした当事者たちの声に応える柔軟で真に「人にやさしい」政策を立て実行するのは、不良企業が不良のままでは難しいだろう。そして、不良企業の優良企業化は不可能だろう。アベコベミクス政権は「人にやさしい」とはアベコベで「財界にやさしい」のだから。
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この記事へのコメント
また金の心配か
本当に困ったことです。これまでもも何とか暮らしてきたが、これ以上税金が増えるともう限界かも知れませんね。過去橋本政権で消費税上げて、とたんに不景気になりました。どうも経済政策は大企業優先で、企業がが儲かれば給与が上がる式の考え方から脱却できない、それがもう固定観念になっていて、そこから脱却できない、専門と称する経済学者も専門的な、金融の細かいことばかりで、現実の民衆の経済実態なんか割っていないようです。小泉、竹中路線以来、株主、CEO優先の考えに、つまりはアメリカ流の考えにシフトしたみたいですね。それまでは、のほんは雇用者に優遇し、株主のことは考えていないとアメリカから批判されていたようにも記憶しているのですが。高度成長期も労働者が人間的扱いを受けていたかは疑問ですが、少なくとも給与は上がり、終身雇用制で首になる不安はなかった。しかし、いまは正規雇用はなく、不安定なアルバイト、不正規雇用で、それもいったん会社をやめるとと次の職がない。作家の辺見庸さんもふれていますね。今の安部政権も労働の流動化などと称して解雇しやすくなる方向に舵を切っていますね。自分にできえることが何もなく、もどかしいですが、参議院選挙自公政権に多数を与えてはならないと思います。
2013/04/24(水) 10:53 | URL | 佐藤悦市 #/FvLA8uI[ 編集]
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