2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
企業経営の社会主義化・日本編(9)



「はじめに」と「プロローグ」から


 最後にまとめとして『日本でいちばん大切にしたい会社3』の「はじめに」と「プロローグ」の文章を紹介しよう。

 坂本氏は「はじめに」で「企業関係者がとりわけ大切にしなければならない」例の5人の人を指摘して、次のように続けている。

 ところが現実には、多くの経営者が、業績重視・成長重視・シェア重視・ランキング重視といった、間違った経営をしているようにみえます。業績や成長は正しい経営を行っているかどうかの結果の現象であり、目的にしてはならないのです。

 結果の現象を目的にする結果、前述の五人を、特に一人目から四人目の人々を苦しめてしまっているのが、今という時代です。このことは、うつ病等の精神障がい者の激増や、自殺者の増加、離職者の増加などを見てもよくわかります。

 そのように多くの企業が業績や成長を追い求めている一方で、赤字企業比率は年々増加し、実に三社に二社が赤字に陥ってしまっています。このことからさらなる景気対策を求める声が高まっていますが、私はそうした見方・考え方には賛同できません。本質的な問題は、別のところにあるからです。

 私はこれまでおよそ40年間、全国各地の約6500社の中小企業を訪問し、その経営の現場をただひたすら見てきました。そしてそのうちのおよそ一割の企業は、好不況にかかわらず、その業績がほとんどぶれていないことに気がつきました。それも、売上高対経常利益率で見ると、長期にわたって5パーセント前後以上を持続しているのです。なかには50年以上連続増収増益で売上高経常利益率は10パーセント以上という企業や、40年間、売上高経常利益率が20パーセント以上といった驚くべき企業もありました。それらの企業は、景気を超越し、景気を創造していたのです。つまり、景気は関係なかったのです。

 そこで、こうした企業をハード面・ソフト面から詳細に調査研究してみると、いくつかの共通する特長があることがわかります。その最たる共通項とは、「人間尊重経営」「人本経営」、つまり人を大切にする、人のしあわせを念じた経営が貫かれていることでした。これらの企業は、社員へのリストラはもとより、仕入先・外注企業などに理不尽なコストダウン要求をしたことが一度もありません。顧客のリピーター率もきわめて高く、お客が全国各地からわざわざ追いかけてくる状態です。また、障がい者や高齢者も多数雇用し、彼ら、彼女らが、健常者と一緒に元気に働いている企業でした。

 これらの企業は、人間尊重の経営、どこまでも人を大切にする経営を追求してきた結果として、高い、ぶれない利益を生み出してきていたのです。

 坂本氏の著作に学んで氏に感謝の手紙を届ける人がたくさんいるそうだ。氏は「プロローグ」でそのうちの3通を紹介している。その1通目の「日本の大手メーカーのアメリカの生産子会社の社長さんからのもの」が大変感動的なので、その感動を是非多くの人と共有したくなった。少し長いが全文転載しよう。

 私はアメリカ・インディアナ州在住の○○と申します。日本の惨状を拝見し、何もできない自分に歯がゆさを覚えながら、一方で着々と進む復興に日本の底力を感じております。
 さて、大変ぶしつけでありますが、日経新聞等で先生の記事を拝読し、メールさせていただきました。
 実は昨年11月末にビザの更新で帰国した際に、書店で先生の著書『日本でいちばん大切にしたい会社』や『経営者の手帳』を買い求めました。私が実践したかったことが本の中に凝縮されており、常に私のデスクに置いて、日々の会社運営の参考にしております。

 弊社はアメリカ○○州にある日系の鋳物製造会社です。従業員数は現在400名です。昨年一月までは日本の別会社がオーナーでしたが、そこの伝統で「従業員は使用人。代わりはいくらでもいる」という考えが根底にありました。
 私が昨年一月末に再建社長として単身派遣されたときには、従業員の心は荒れ果て、毎日のようにケガが起こり、スクラップは5パ-セント、生産性も上がらす、当然赤字垂れ流しの状態でした。さらに離職率は実に40パ-セントを超えており、5人に2人が辞めていくありさまでした。
 赴任初日に全員を前にあいさつしようとしたとき、床に座った従業員たちの上目づかいで刺すような視線を感じ、正直頭の中が真っ白になりました。「生産は続ける。安全と品質に留意し、協力してほしい」と私なりに精いっぱいの英語でスピーチする、全員が立ち上がり、それまでの厳しい視線から一転、歓迎ムードになりました。
 彼らは、自分たちは全員解雇されるものと考えていたことを後から聞きました。そのとき、「この人たちと家族をなんとしてもしあわせにしたい」と心から思ったのです。
 それから、まずはアメリカ人の人事部長と徹底的に話をし、日本でいう長期雇用をめざした労務政策を打ちたいことを理解してもらいました。そして従業員との対話、それも現場の管理職との昼食懇談から始めました。
 出て来る、出て来る、不満や不安の大爆発です。日本でいう「3K職場」、こちらでは「4D職場」(Dangerous,Dirty,Difficult,Dark)と私は名づけました。危険だし、汚いし、大変な作業だし、暗いし、これで不満なく働けというのが無理な職場でした。それに対して、これまでの経営陣は「儲かっていない」ことを理由に、いっさい環境対策をしてこなかったのです。
 私はすぐに天井に大型のファンを、また溶解炉近くにはスポットクーラーを設置、さらに、各職場に冷水器も導入しました。
 またある日、週一回の全体ミーティングで調査をしました。「今朝、食事をしてきた人、手を上げて!」と私は質問しました。手が上がったのはわずか6、7人でした。
 実は、会社内で弁当が盗まれる事件が続出していました。そこで、「もしかすると、この人たちは朝食をとっていないのかもしれない」と思ったのです。
 弊社のある街は人□が5000人、これといった産業があるわけでもなく、働ける人はまだよいほうで、生活水準がきわめて低いのです。
 弊社の従業員の7割は地元の住民ですが、住む家はトレーラーハウス、車もドアやフェンダーの色が違ったりバンパーがなかったりなどの古いもので、大変貧しいのです。
 そこで私は少しでも従業員のお腹を満たしてあげたいと思い、人事部長に「就業前や休憩時間にサッと食べることができて、栄養のあるものはないか?」と尋ねました。人事部長は「バナナだ」と答えてくれました。
 私は人事部長にお願いをし、試しに食堂に無料でバナナを置いてみました。
 案の定、すぐになくなりました。
 そこで私は人事部長に、「箱ごと置けばいい」と提案したのですが、「持ち帰る人がいるので、それはやめたほうがいい」と反対されました。私は「それでもいいから、まずは出してくれ」と頼みました。
 次の日の夕方、食堂近くを通りかかると、何人かがバナナをポケットに入れているのを目にしました。「人事部長が言った通りか……」と裏切られた思いになりました。
 しかし、何の気なしに、部屋の窓から外を見ると、駐車場に彼らを迎えに来ている家族の車の中から子どもが出てきて、お父さんと「ハグ」、そしてその子どもに何か言いながら、ポケットのバナナを渡している光景を見たのです。私は、その睦まじい光景を見て、バナナを出してよかったと心が満たされました。
 次の日の夕方、人事部長を誘い、食堂の近くで、帰宅する従業員の様子を見ていました。従業員がポケットにバナナを入れる光景を見た人事部長は、私に「ミスター○○、私が言った通りだろう」と勝ち誇ったように言いました。
 私は人事部長を窓際に連れて行き、「まあ、もう少し見ていてごらん……」と言いました。そして前の日と同じ光景を見たのです。
 人事部長の目には涙があふれ、そして一言、「ミスター○○の言っていることの意味がよくわかった。明日からバナナだけではなく、リンゴとオレンジも出していいか……」とまで言ってくれたのです。
 次の日からは、リンゴとオレンジも、カゴに入れて置かれるようになりました。それ以降、弁当が盗まれることもなくなりましたし、倒れる人も激減しました。
 それからしばらくして、トマトとキュウリが食堂のテーブルの上に置かれているのを見ました。不思議に思って、人事部長に「メニュー増やしたの?」と聞きました。すると人事部長が「あれは従業員の○○が家で採れたのを持ってきたんだ……」と言うのです。
 私は何だかうれしくなって、すぐに現場へ行き、持ってきてくれた○○と握手をしました。そのとき彼は、「われわれは、あなたが、自分たち家族のことを考えていろいろやってくれていることに感謝している。あなたは最高のボスた……」と言ってくれました。私は涙があふれ出てきました。
 私のつたないブロークン・イングリッシユたけでは十分真意が伝わりにくいので、毎週「社長メッセージ」という形で、従業員に発信を続けています。その内容は先生の著書からキ-ワードをかなり拝借しております。おかげさまで、業績も夏から黒字に転換、利益を還元すべく、従業員の給料も10パ-セント程度上げ、年末には少しでしたがボーナスも出すことができました。
 10月以降は離職率がなんと2パーセントに激減、そうなると品質、生産性ともに上昇し、利益体質に転換することができたのです。

 長々と雑駁なメールになってしまいましたが、私が一番申し上げたかったことは、先生のお考えは日本だけでなく、アメリカでも通用する、いやむしろ義理人情に厚いアメリカでこそ、成果が上がるのではないかということです。
 これからも先生のお考えをベースに、この会社の従業員と家族のしあわせを追求していきたいと思っております。
 日本で被災された人々の心が癒されること、そして一日も早い復興がなされることを、遠いアメリカから、心から祈念しています。時節柄どうかご自愛のほどを。
 一足早い、満開の桜の写真を添付いたします。

 「人を大切にする」経営理念をもつ社長を得て、社員たちは生き返ったようだ。それにしてもそれ以前の労働条件のひどいこと。1%の貪欲を満たすために奴隷並みの扱いを受けている99%を象徴するような有様だった。

 これは他人事ではない。小泉・竹中が導入したアメリカ式新自由主義が日本の労働者をもとんでもない状況に追い込んでいる。厚生労働省の発表(2011年)によると、1800万人(全労働者の3割)が有期契約労働者だという。そして、彼らの74%は年収200万円以下なのだ。

 言うことやること全てアベコベミクス政権はこのような悪政を改めるどころか、産業競争力会議とか規制改革会議などという経団連の代弁者で構成される会議が労働者搾取をさらに過酷にするようなことを議論しているという。日刊ゲンダイが「サラリーマンは全員アルバイトになる 首切り法案 戦慄の中身と進行状況」という記事(4月16日付)で取り上げている。その中から、山井和則衆院議員(民主党)のコメントを転載しておこう。

「結局、この内閣は大企業のための内閣なのですよ。産業競争力会議に入っているのは経営者だけですからね。甘利大臣は労働問題を話し合うときは労働者の代表を入れるべきだ、と言っていましたが、だったら、すぐにやって欲しい。それをやらずに解雇のルールづくりを話し合っている。いまは慎重答弁ですが、参院選が終わったら、首切り自由な国になってしまう可能性があります」
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 コメント
この記事へのコメント
国民の幸せは・・
感動的なお話紹介していただいて有難うございました。
無意味で刺激的なツイッターを垂れ流している政治家に、無理矢理でも読ませてみたいですね。
アメリカ流の成果主義・短期(株主)利益重視が、結局は国民の幸せには繋がらないこと、つくづく実感しました。感謝!
2013/04/19(金) 09:40 | URL | 愛読者 #KUmnAu4w[ 編集]
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