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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
企業経営の社会主義化・日本編(6)



株式会社樹研工業(3)


 樹研工業の社員たちの働きぶりを示すエピソードを拾ってみよう。

 知り合いの紹介で、モデルのように細く、非力な青年が入社してきました。彼は女性社員がいとも簡単に運んでいる25キロほどのプラスチックももち上げる力がなく、悪戦苦闘して、うんうん言いながら運ぼうとしていたそうです。たまたまそこを通りかかった松浦社長がそれを見て、
「その程度の原料がもてないとなると、わが社じゃ使いものにならないなあ、きみはクビだぞ」
と冗談を言ったそうです。

 すると午後、「話があります」と、若手社員数名が松浦社長のところにやってきました。なんだろうと思って話を聞くと、
「社長は午前中、○○くんに『クビだ』と言ったそうですが、もう少し待ってくれませんか。私たちが一人前にしますし、その間は彼の手伝いをしますから」
という直談判だったそうです。

 樹研工業の社員には、元暴走族とか登校拒否児の学校中退者といった、いわば学校教育からドロップアウトした人が少なからずいるそうです。就職しようと思っても、そんな彼らに門戸を開放している企業は多くありません。しかしそんな彼らは、同じ会社仲間のために、社長に直談判するほどやさしい気持ちの持ち主でもあるのです。

 経営理念が先着順採用が孕む危惧を吹き飛ばしている。社員を大事にする社風がやさしい人を育んでいる。

 100万分の1グラムの歯車を完成させたのと同じような時期に、多くの研究費を費やして同じような研究に取り組んでいたのが、全国の名だたる大学の教授たちです。その先生方が、新聞記事を読んで樹研工業に教わりに来たのです。工学博士の教授たちが、中途退学・元暴走族の若い社員に説明を受けている写真が新聞にも載りました。

「最近の若者は自分のことしか考えない」
「他人への思いやりに欠ける」
などと言われていますが、樹研工業の社員の言動は、正しい企業文化をもち、経営者が感動経営を実践すれば、どんな若者でもその可能性を育てられるのだということの実例だと思います。

 松浦社長は、
「社員が育つために大事なことは、経営者がチャンスを与えることです。口だけではなく実際に投資をしてやることです」
と言っている。そのよい例として次のようなエピソードがある。

 あるとき、入社2年目の3人の若手社員が、
「私たちも先輩が使っているようなCADを使いたいので一台買っていただけませんか?」
と言ってきました。

 松浦社長は「ダメだ」と言いました。ただ、その理由が変わっています。
「3人いるのに1台とは何事だ。1人1台ずつ買いなさい」
と言ったのです。そして3台買いました。

 そうすると3人の心に火がついて、猛烈に勉強を始めたそうです。

「そのときが、チャンスなのです。やる気になったときにポンと乗りかかる。そうすると彼ら、彼女らの世界がパッと広がるのです」

 この3人は、今では立派な戦力に育っているそうです。

 また、こんなことも言っていました。
「20代後半の職人が『こういう機械が必要なのです』と相談してきました。高い機種と安い機種の二つがあったのですが、私は彼が希望した3500万円の高いほうの最高速の機械を、すぐに発注しました。彼は今その機械に夢中になって没頭し、いい仕事をしていますよ……」

 さらに松浦社長は、
 「今の若者はタイミングよく心に火をつけてやれば、ガムシヤラに勉強し働くのです。彼らがそういうことを言い出すような雰囲気を用意するのが、会社の、経営者の役割でしょう。僕は誰がいつどんなことを言ってくるか、年中予測しています。〝彼はそろそろこの機械が必要だと言ってくるだろうな″と。それがわかるのは、毎日会社の現場を歩いて、みんなとの会話を楽しんでいるからです。僕も勉強して、機械技術の最先端を把握しています。職場は楽しい真剣勝負の場なのです……」
 と言います。

 一般の会社では役員会が最高意思決定機関となっている。しかし、樹研工業では重要事項は全社員が参加する全体会議で決定している。この会社もトップダウン管理から脱している。

 (全体会議は)会社が休みである土曜日の10時から15時に行われ、約90人の全員が集まります。誰でも参加していいし、強制ではありませんから不参加も自由です。しかしほとんどの社員が出席して、斬新なアイデアや発言を活発に出してくるそうです。おそらくこの会議が、情報やビジョンを共有する場になっているのでしょう。

 このような素晴らしい会社だから中途で辞める人はいなだろうと思うが、どうであろうか。

 そんな会社ですから、辞める人がほとんどいません。それどころか、「私が辞めたら子供を入れてくれ」という社員もいるくらいです。

 中小企業では経営者の世襲制が問題になっていますが、樹研工業では社員の世襲制が始まっています。息子や娘に幸せになってほしいわけですから、自分が信じている会社に入ってほしいという親の気持ちは痛いほどよくわかります。

 また樹研工業では、結婚や出産、子育てが終わった女性社員を正規、不正規を問わず積極的に雇用しています。その理由は、
「この人たちはベテランで、客先も半分以上わかっていて、何も教えなくても、その日のうちに即戦力になるからです」
と松浦社長は言っていました。

 ところが、男性社員のなかには、隣の芝がきれいに見えるのか、退社する人がときどきいるそうです。そんなときでも松浦社長は、
「もし、『やっぱり樹研工業がいい』と、帰りたくなったら遠慮なく帰ってこい。転職先で成功したんだったら、そのときも連絡をくれよ」と、温かく送り出すのです。

 実際にこうした武者修行(?)を終えて戻ってくる社員もいるといいます。出戻りOK。それが樹研工業という会社なのです。

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