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企業経営の社会主義化・日本編(3)



株式会社アールエフ


  アールエフは『日本でいちばん大切にしたい会社 2』で紹介されている。「赤ちゃんや子供たちの命を救いたい」をモットーにさまざまな医療機器を開発・製造している会社だ。その製品の中で特に「Sayaka」という商品名のカプセルカメラ(飲むカメラ)について、坂本氏は「ノーベル賞級の商品ではないかと思います」と賞賛している。  アールエフ紹介記事の目次は次の通りである。

株式会社アールエフ(長野県)
 「小さな命をもっと救いたい」-
 世界が驚くカプセル内視鏡を開発。「人間の幸せ」を追い求める中小企業

①夫婦でワンルームマンションからの開業
②「病弱な母親を助けたい」という思いが原点
③「飲む内視鏡カメラ」の萌芽
④病気で苦しむ人を少しでもラクにする商品を
⑤世界の医療界が驚く快挙
⑥出会いが開発させた「口腔内カメラ」
⑦もう一つの主力商品、「フィルム不要なレントゲン」
⑧「小さな命をもっと救いたい」
⑨人命を救う機器だから特許はとらない
⑩商品には女性の名前を
⑪優秀な女性がたくさん集まる会社
⑫営業に行くのではなく、お客が足を運んでくる
⑬後身育成のためには時間も金も惜しまない

 ⑨⑬がすごい。強欲資本主義の対極にある快挙だ。また⑩⑪も、どうしてなのか、興味しんしんである。それらを読む前に、まずアールエフの丸山社長の経営理念を聞いてみよう。丸山氏は次のように語っている。

 近年、高度化してきた医療機器の研究は、テクノロジーのみを追求した代償として、患者さんへのやさしさや配慮を欠いた製品が多かった。大人でさえ非常な苦しさを伴う内視鏡検査など、子供に強いる苦痛ははかり知れません。

 現在の医療機器は、そのほとんどが成人向けに研究され、それが小児にも転用されています。小児専用の研究が遅れている理由は、小児科医院の経済的事情、マーケティング規模などが考えられますが、世界的な規模で考えてみれば市場は十分でしょう。むしろ、小児用に開発された機器を大人向けにデザイン変更するほうが無理がないのです。

 本来あるべきはずの医療従事者の姿は、弱者の側に立った、患者ありきの医療のはずです。ですからカプセル内視鏡カメラの発想も、実は子供の患者さんの体を痛めまい、小さな命を救いたい、そのためには、できるだけ広範囲にいきわたるように低価格な商品でなければいけない。

 世界中の病気の予供たちに、もっと医療機器を使ってもらいたい。これが私の願いなのです。

 その理念に添って開発されている製品が⑤⑥⑦などで紹介されているが、⑤の「Sayaka」がどのような製品なのか見てみよう。「Sayaka」はまだ(2009年12月現在)犬での臨床実験の段階で販売されるまでにはもう少し時間がかかると書かれているが、次のような驚くべき製品だ。

 アールエフの開発した内視鏡は、飲み込めるのです。

 当初開発した内視鏡のサイズは、直径九ミリ、長さ二三ミリと、女性の小指の先くらいでした。普通に飲む薬のカプセルより少し大き目ですが、飲めないサイズではありません。もちろんワイヤレスで、カメラ機能をもっており、薬のように飲み込むと、内臓を撮影できるものです。写した画像は体外のモニターテレビに電送され、ライブでカラー画像を見ることができます。

 さらに、このカプセル内視鏡には、全体積の約四割にあたるフリースペースがあります。この体積の余裕と電力の豊富さから、将来的にはドラッグデリバリーシステムヘの応用が期待されています。つまり、薬をカプセルカメラに搭載し、患部の近くに来たときに薬を照射できる製品になる可能性があるのです。

 さて、⑨も丸山氏の経営理念のしからしむところであろう。

 これだけすごい技術をもっている会社は、それを隠そうとするのが普通です。ばんばん特許をとるなどしてクローズしたほうが、自社が儲かるからです。しかしアールエフは、基本的にはオープンしています。企業として利益を得なければいけませんから、特許ゼロということではありませんが、ほとんど特許申請をしないそうです。

 医療器械は商品とはいえ、人の命を救う機器です。いくら儲かるからと特許をとったとしても、もし自分の会社の生産が間に合わなかったらどうなるでしょう。その機器が使えないせいで、死んでしまう人もいるかもしれません。
「わが社は〝公知″(公然と知られた状態)という手法での特許出願です。研究者と企業の良心を動かします。共感してくださった方々が長野までわざわざ来てくださり、そのいわば〝友人″の輪は海外へと広がり、アールエフを温かく、また力強くガードしてくれるのです」
「新しい技術開発には、ライバルが必要です。技術を囲い込むと短期的には利益を確保できると思いがちですが、長期的には違います。『独占』という安心感から技術開発にブレーキがかかり、新技術が生まれにくい上壌になってしまうのです。技術の公開によってライバルが出てくると、なおいっそうの緊張感をもって競い合わなければならなくなり、結果として新しい技術が出てくるのです」

 これが、丸山社長の考え方です。

 さて、アールエフ商品には女性の名前がついている。
最初のカプセル内視鏡―「NORIKA」
最新型のカプセル内視鏡―「Sayaka」
デジタルX線センサーのレントゲン―「NAOMI」
歯科業務用口腔内カメラ―「MIHARU」

 「NAOMI」は丸山社長と会社の草創期から苦楽を共にした副社長の名前からとったという。直美さんが結婚する時に、社長が「会社をこれだけよくしてくれて、ありがとうございました」という意を込めて、結婚祝いのプレゼントとして命名したのだという。
 また「Sayaka」は、「サヤカさんが一生懸命がんばってくれたおかげで、この商品を開発することができた」ということで、社員全員の投票で決めたという。

 超ハイテク産業の会社でありながら、このような商品名のつけ方をする―「小さな命をもっと救いたい」という理念から発せられるぬくもりが、会社全体にあるからなのでしょう。

 ちなみに最初の「NORIKA」は有名女優の名前をいただいたそうです。ファンだった社員がいたからだといいます。これも社員と一緒になって決めたそうですが、堅いだけではなく、そういう家族経営の町工場のような温かな茶目っ気もある会社がアールエフなのです。

 このようなところにも社員を大事にする社風がかいまみられる。

 またアールエフには、ランチミーティングというのがある。もとは昼食を摂りながら全員で行っていたようだ。現在は社員が多くなったため全員ではできいので、社長と社員、他部署の社員同士のコミユニケーションを密にするため〝くじ引きランチ″にしているという。

 社員食堂の入口に置いてある箱からくじを引いて、座る場所を決めるのです。

 ある程度会社が大きくなると、部署のなかの、またさらにそのなかの数人で昼食をとりがちです。だんだん顔ぶれが同じになって、知らない社員、あまり話をしたことのない社員も多くなってしまいますが、このくじ引きだといろいろな社員と昼食をとることになります。セクショナリズムに陥らないよう、コミユニケーションを大事にしているのです。

 アールエフの以上のような暖かみのある社風が⑪のような特徴を生む要因になっているのだろう。

 アールエフのもう一つの特徴は、女性の管理職が多いということです。営業の総責任者も開発の総責任者も女性です。

 アールエフの社員175人のうち、3分の2は男性で、3分の1が女性だそうですが、部長職は3分の2が女性で、課長職以上の管理職は半分が女性です。

 これはもちろん、女性だから優遇するという逆差別をしているのではなく、優秀な女性がたくさん集まってきているということです。

 ハイテクの分野の会社で、これほど女性を生かしきっている会社は珍しいのではないでしょうか。

 こういうアールエフですから、全国から入社希望者が殺到するそうです。メールで問い合わせがあったり直接履歴書が送られてきたりするそうですが、送られてくる履歴書の数は、月平均300通~500通だそうです。ですから年間では5000通近くになるようです。

 上場しているわけでも、広告をしているわけでもない一地方の会社に、これだけ多くの人々が入社したいと思っていることを見ても、この会社がいかに大切に思われているかがわかるのではないでしょうか。

 最後に丸山社長の夢を聴こう。

 丸山社長は後進の育成にも力を入れており、医療の大学院大学を設立したいという夢をもっています。四年制大学で電子工学などを修めた学生のための大学院大学です。

 定員は1学年15~20人ほどの少数精鋭。授業料はなんと全額無料で、さらに月20万円程度の生活補助費を支給し、卒業生には、一年以内の起業を目的に1億円まで五年間の無担保、無利息融資をするという、驚くような支援をするそうです。

 その大学院大学を卒業した人がアールエフに入社するしないは、いっさい問いません。要は、医療器械をつくる技術者を育て、医療を通じて世界中の困っている人の力になりたいのだそうです。

 それは丸山社長の、
「私たちは幸せに生きていかねばなりません。そして本来、すべての技術はそのためにのみ発展すべきものなのです。結局、最も大切となるのは技術ではなく、それを操る人間です。人々を幸せにする、そんな技術や技術者、起業家が一人でも増えるように、これからも何かできれば……」
という願いを形にしたものなのです。

 ですからその大学院では製品の開発技術のみならず医師を中心とした臨床試験や薬事法、特許法など関係法の勉強、経営マネージメント、マーケットリサーチ、販売など、製品化から企業経営に至る内容すべてを学ぶことになるそうです。

 そんな丸山社長の大学院大学設立ですが、これにはもう一つの動機があります。それは、現在アールエフで働いている社員に、学歴をプレゼントしたいということです。アールエフで身を粉にして毎日がんばっている社員のなかには、最終学歴が高校卒業、高校中退という人もいるそうです。彼らが他社や医師などから学歴について尋ねられたとき(いまだに学歴でしか人を判断できない人は残念ながら多いのです)、肩身の狭い思いをしたことがあると言うため、社員に学歴をプレゼントしたいと考えたというのです。

「当社にはかなりハイレベルな仕事をやっている社員がいます。しかし必ずしも全員が、学歴的な意味では恵まれていません。いろいろな事情で高校や専門学校しか出ていない社員がいます。実際に一線で働いて、仕事面ではまったく問題はありませんが、その社員にしてみれば寂しく思うときもあるのではないだろうか。それは仕事で人と話しているときかもしれないし、結婚するときかもしれない。その社員が、世間の価値観に触れて、『高卒や専門学校卒だから見くびられるかもしれない』と思ったとしたらかわいそうです。そんな社員にも実力相応な資格を与えてあげたい」

 丸山社長はそう言います。卒業生を中心にして、将来は長野・日本を、世界へ向けた先端医療機器の供給基地にしたい―丸山社長の夢だそうです。

 「小さな命を救いたい」―丸山社長のその夢は、確実に実現されようとしています。

 丸山社長の夢、実現するといいですね。
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