2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
企業経営の社会主義化・日本編(2)



株式会社ファンケルスマイル


 『日本でいちばん大切にしたい会社1』には「日本の優良会社」で紹介した日本理化学工業と伊那食品工業のほかに株式会社柳月(製菓会社)と杉山フルーツ(果物店)が取り上げられている。またコラム形式で9社が紹介されている。日本理化学工業は「社員の7割が障害者の会社」だったが、コラムで紹介されている会社の一つ「株式会社ファンケルスマイル」も障害者雇用に力を入れている会社だ。ファンケルスマイルは化粧品や健康食品などを通信販売しているファンケルの特例子会社だという。

 恥ずかしながら、私は「特例子会社」という用語を知らなかった。ウィキペディアで調べてみた。

 従業員54名以上を雇用する会社は、そのうち障害をもっている従業員を、従業員全体の1.8%以上雇用することが義務付けられている。(重度障害者の場合は2名として計算される。)

 特例として、会社の事業主が障害者のための特別な配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たす場合には、その子会社に雇用されている障害者を親会社や企業グループ全体で雇用されているものとして算定できる。このようにして設立、経営されている子会社が、特例子会社である。

 そしてウィキペディアは次のような問題点を指摘している。

 非正規雇用が多い。また、頭脳労働が優位の産業構造にあって、身体障害者がスキル次第で比較的採用されやすいのに対し、それ以外の知的・精神障害者を採用している特例子会社が少ないのが現状である。

 ファンケルスマイルはこの問題点をクリアしているようだ。坂本氏は親会社のファンケルも「5人に対する使命と責任」を果たそうとしている会社だと評価している。「5人に対する使命と責任」とは、再録すると

 優良会社に共通する経営理念であり、次のような順で関係する人々を大事にしている。
1 社員とその家族
2 社外社員(下請け・協力会社の社員)とその家族
3 現在顧客と未来顧客
4 地城住民、とりわけ障害者や高齢者
5 株主・出資者・関係機関
 このことを「5人に対する使命と責任」と呼んでいる。

 まず、ファンケルスマイルが設立された経緯を紹介しよう。

 親会社ファンケルが株式上場の際に
「上場できたのは地域社会のおかげ。だから、地域社会にお返しをしよう」
と、どのような貢献がよいかを全社員で話し合ったという。トップダウンではなく、全社員で話し合うということにまず拍手したい。

 そのとき多くの社員の方が「私たちのまわりには障害をもった方がいっぱいいます。その人たちを幸せにできるようなことをしたらどうでしょうか」と言ったそうです。

 こういう場合は、美術館とか公民館を建てる、イベントを開く、などのアイディアが出がちです。しかしそうではなく、障害者の雇用を通じて、彼ら、彼女らの自立化を支援しよう、これが、ファンケルスマイルの社員の方々の発想でした。「障害者を守る」のではなく、自立を支援しようということなのです。

 そして平成11年(1999)、ファンケルがバックアップしてつくった会社が、特例子会社のファンケルスマイルです。ですから、障害者の雇用率は90パ-セントです。立派なことです。そのような会社を、「日本を代表する」といわれているようなほかの企業は、果たして設立しているでしようか。

 ファンケルスマイル設立の反響はどうだっただろう。

 ファンケルスマイルには全国各地から、「ぜひうちの養護学校から採用してください」という声が届くそうです。

 「申し訳ありませんが、一人しか枠がありません」と言うと、養護学校から何人もの親御さんが来るそうです。親御さんたちは、
「なぜうちの息子を外すんですか」
「どうしてうちの娘はダメなんてすか」
と問い詰めてきます。納得できないのです。

 そこで、ファンケルスマイルでは、いつも3人くらいの生徒を受験させるのだそうです。

 あるときこんなエピソードがありました。

 養護学校のほうから、今年は「3人の生徒を派遣しますのでそちらで選んでください」と言われたそうです。A子さんは軽度の障害、B子さんは中度の障害、C子さんは重度の障害でした。当然、父母の方も、学校の先生方も、「A子さんが採用されるに決まっている」と思っていたようです。C子さんには、「どうせダメだろうけど、いちおうチャンスを与えてあげよう」という感じだったのです。

 採用する側でもそういう意見が大勢でした。
「C子さんは自閉症もあいまって無理でしょうから、軽度のA子さんを採用しましょう」
と社長が社員にはかったそうです。すると一人の社員がこう言ったそうです。
「私はC子さんを採りたい。なぜなら、A子さんやB子さんは、わが社が採用しなくても、きっとどこかの会社で採用してくれるはずです。しかし、C子さんは、わが社が今日、ここで採用しなければ、働く機会を永遠に失ってしまうかもしれません。働く喜びと、働く幸せを知らないまま、C子さんは息を引き取ってしまいます。そういう子のためにこそ、わが社は存在しているんじゃないですか……」
 その言葉にみんなわれに返り、「そうだ。それがわが社の存在する原点だ」と思い直し、そうしてC子さんが採用されたそうです。

 採用はされたけれども、重度の障害と自閉症を併せ持つC子さんのその後は並大抵のことではなかっただろうと想像できる。しかし、C子さんは自閉症を克服していく。その経緯は次のようである。

 (C子さんは)自閉症でしたから、半年間か一年間、誰ともコミユニケーションをとれないまま月日がたちました。ところがある日、仕事仲間から、
「あの子はしゃべらないけれど、いつも日記みたいな書きものをしている。われわれが行くと閉じてしまうけれど……」
という報告があったのです。そこでSさんという一人の社員が、筆談することを思い立ちました。

 最初は無視されましたが、心が通じたようで、だんだんと筆談するようになり、その頻度が非常に高まったそうです。そのうちC子さんは書くのが面倒になってきたのでしょう、自分の思いをすぐに伝えたくなったようで、ついに口を開いたのでした。

 C子さんは、今では普通に話せます。しかしそうなるまでには、何年も何年もかかったそうです。彼女の心を開いたSさんは、うれしいことに、やがてファンケルスマイルの社長さんになった方です。このSさんは、今でも三十数人の社員の方々と文通しているそうです。

 この方がいかに障害者である社員の方々に信頼されているかということは、すぐにわかりました。社長を見る障害をもった社員の方々の目の輝きが違うのです。この方は支持されている、信頼されていると、一目でわかりました。

 最後に坂本氏は次のようなエピソードを書き留めている。

 この会社のことも、ある新聞に書きました。

 新聞に書いたあと、私の教え子だったMという男性が、同じ教え子であった奥さんと二人で、何年ぶりかで正月に遊びに来たことがあります。そのとき、二人が連れていた子どもはダウン症でした。

 「お、珍しいなあ。よく来たね」と言うと、M君は「今年のお正月は先生にどうしても会いたかった」と言うのです。
「先生が書かれた、ファンケルスマイルの記事を見て、『ああ、先生がいる』と思いました。先生、絶対長生さしてくださいね。長生さして、この子の推薦状を書いてください。将来この子が養護学校かなんかを卒業して就職するとき、この会社に推薦状を書いてください」
 と言うのです。

 その子はまだ2歳くらいでしたが、障害を抱えた子どもの親は、その子の将来が心配で心配でたまらないのです。

 そういう多くの親たちの心の支えになっているのが、ファンケルスマイルのような会社なのです。

 地域社会への貢献の仕方は、いろいろあるでしょう。しかし、このような貢献の仕方は、お金ではできません。私たちは、そういうことをしている会社をこそ評価し、応援しなければならないのだと思います。

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