2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《続・「真説古代史」拾遺篇》(130)



「倭人伝」中の倭語の読み方(73)
官職名(7):「一大率」とは何か(5)


 前回では省略した宮﨑氏の文章中に私には読解できない文章があった。その文章の意味を理解しようと試みていて、「斯馬国」についての新しい発見があった。それを記録して置くことにした。「一大率」問題から見ると番外編ということになる。

 宮﨑氏は「一大率」の治所を「今山」に比定した。その傍証として、次のような文章を書いている。

 またこの今山は文献的な問題にも興味をそそられる。唐の張楚金の翰苑に「邪屈、伊都傍、連斯馬」と倭国について記されていることに関してである(最近太宰府天滿宮所蔵の国宝となっている同書がそのまま原本通り復刊されている。すばらしい出来で一見の価値があると思う)。邪屈を誤記と学者の間は解されてきたが、同書にはあとの文章に邪馬嘉国とも出てくるので、屈が馬の誤りならば後の耶馬嘉も那屈嘉と書いてあってもよさそうなものであるが、ここではその論議が目的ではないから、鵜呑みにしておこう。

 文章の意味は、邪屈が伊都の傍らにあって、斯馬に連なっている、というのだから、この邪屈は、今山の意味として受け取れないだろうか。斯馬に連なるといった表現は、実に同地の情景にぴったりで、そしてこの邪屈が今山だとすれば、文章の意味もすっきりと合理的に理解できるのである。

 『翰苑』からの引用文を邪屈・伊都・斯馬という三地域の位置関係を示す文と解釈して、さらに「邪屈」を主語として「邪屈は伊都の傍らにあって、斯馬に連なっている」と訳し、「邪屈」とは今山のことだと言っている。氏は「伊都国」を周船寺近辺としているので、確かに今山は伊都の傍らにある。では今山は「斯馬」に連なっているだろうか。このことは宮﨑氏による「斯馬国」の比定地が分らないと判断できない。私は、「21国」の比定地検討のとき、「井の中」の諸説については水野氏による紹介文を用いていた。『「21国」の比定:(9)斯馬国』を読み直してみた。水野氏は宮﨑氏を高く買っているようだが、どういう訳か「斯馬国」には宮﨑説がなかった。そこで再度図書館に出かけて『まぼろしの邪馬台国』を調べてきた。「斯馬国」の比定地は次のようになっていた。

「肥前国杵島郡(きしまのこほり)、藤津(ふじつ)郡。現、佐賀県杵島、藤津の両郡に杵島山を中心としてひろがっていた国(ただし干拓地を除く)。」

 今山が「斯馬国=杵島山」に連なっているなんで判断がどうして出てくるのだろうか。全く理解ができない。ここでもう一度上の文を読み直してみたら
「斯馬に連なるといった表現は、実に同地の情景にぴったり」
と言っているではないか。「連なる」を「(情景が)似ている」と言う意に解しているようだ。「連なる」にそんな意があるとは思えないが、今はそれを置くことにして、「斯馬国」比定の本文を読んで納得した。氏は
「現在の杵島山は、邪馬台国時代にはまったくの島であった。」
と言っている。今山は宮﨑氏が典拠にしている「弥生期の博多湾」地図では完全に島だ(『「21国」の比定:前回の訂正などなど』を参照してください)。氏にとっては「情景がぴったり」なのだった。

 これで氏が言わんとしたことは分かったが、仮に氏による「斯馬国」の比定地が正しいとしても、この引用文だけで「邪屈=今山」という推断は不当だ。「邪屈」などという地名はここにしか出てこないばかりか、「邪屈」と「今山」には音韻的にも意味的に全く共通点がない。宮﨑氏の文によると「屈」を「馬」の誤記とする論者もいるようだが、この場合、『翰苑』の文は「邪馬は伊都の傍らにあって斯馬に連なっている」となるが、この文に該当する比定を行っている論者は一人もいない。『翰苑』からの引用文がこのような理解不能な文になってしまうのは、どうやらこの文を誤読していることが原因だと思われる。そこでこれを機会に『翰苑』を学習することにした。

 手元にも図書館にも『翰苑』はないのでネット検索をししてみた。原文を掲載しているサイトのほかに塚田敬章という方の「翰苑の解読と分析」という論文があった。『翰苑』全文の解読を試みているが、残念なことに納得しがたいことが多い。また、古田氏の『邪馬壹国の論理』所収の「『翰苑』と東アジア」もヒットした。しかし、そこでは『翰苑』の新羅の項が取り上げられているだけなので、私の目下の目的にはそぐわない。そこでもしやと思い、「新・古代学の扉」を検索してみた。なんと、古田氏が『「謎の四世紀」の史料批判』と『邪馬壹国の史料批判』で『翰苑』を詳論しているではないか。これを教科書にしよう。かなり長くなりそうなので、稿を改めることにする。
スポンサーサイト
 コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
 トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://adat.blog3.fc2.com/tb.php/1803-3b6caf8e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック