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《続・「真説古代史」拾遺篇》(95)



「倭人伝」中の倭語の読み方(38)
「21国」の比定:(14)好古都国(その二)


( 前回の記事の中に気になる点がいくつかありました。調べ直して追記・訂正をしました。元の文はそのまま残して、追記・訂正した文は青字で示しました。7月7日)

 前回、『古事記』『日本書紀』『万葉集』『風土記』で使われている「都」は「ツ」と訓まれていることを指摘した。その時に点検したのは文中や人名・神名の中で用いられている表音文字のケースであった。今回はその続きとして、地名のなかで使われている表音文字「都」を調べてみた。(吉田茂樹著『日本古代地名事典』による。)

つ[都宇] 『和名抄』備中国に「都字郡」で見えるが、『正倉院文書』天平2年(730)に「都宇郡」で初見し、岡山市の西部から、都窪郡早島町にかけての地域をいう。近くに「吉備津神社」があり、また、「津守郷」もあって、「吉備の津」の意で、「津の郡」としたと思われる。

 漢字二字で一音訓みは「紀伊」と同様、好字令の名残だろうか。ウィキペディアでは「つうぐん・つうのこおり」と訓み
『元は「津(つ)」だったが、漢字2字で地名を書く風習が出来、津が訛って「つぅ」となっていたことから「つう」とし「津宇」や「都宇」の字を当てたとされる。』
と説明している。ちなみに、現在の郡名「都窪」も「ツクボ」で「都」を「ツ」と訓んでいる。

つが[都賀]  『和名抄』下野国に「都賀郡」で見えるが、『正倉院文書』天平勝宝4年(752)に「都賀郡」で初見し、栃木県上・下都賀郡、栃木市、鹿沼市の一帯をいう。渡来系「都賀直」(あたい)を祖とする一族が入居し、開発した所をいうのであろう。

つが[都賀]  『和名抄』石見国邑智(おおち)郡に「都賀郷」で見え、島根県邑智郡美郷(みさと)町都賀の地をいう。渡来系「都賀直」(あたい)を祖とする一族が入居し、開発した土地をいう。

つげ[都介]  『和名抄』大和国山辺郡に「都介郷」とあるが、『記神武』に「闘鶏(つげ)国造」で初見し、奈良県山辺郡都祁(つげ)村の地をいう。「つげ(黄楊)」の木に由来する。

つげ[郡家]  『和名抄』武蔵国比企(ひき)郡に「都家郷」で見え、埼玉県比企部ときがわ町のあたりとみられる。「つげ(黄楊)」の木に由来するであろう。

つし〔都志]  『和名抄』淡路国津名郡に「都志郷」で見え、『垂仁紀』88年の「淡路の出石」は、この地域と思われる。「づし(出石)」の意と思われ、海浜や内陸で良石を産出したことによる。兵庫県洲本市五色町都志の地。

つち[都知]  『和名抄』能登国羽咋(はくひ)郡に「都知郷」で見えるが、『平城宮木簡』に「都知」で初見し、石川県羽咋(はくい)郡志賀町土田の地をいう。「つち(土)」の意で、泥土が多くあったことによる。

つづき[都筑]  『正倉院文書』天平11年(740)に遠江国浜名郡の「都築(つづき)郷」で初見し、中世には「津々木郷」とも記し、静岡県浜松市三ケ日(みつかび)町都筑の地をいう。「つつ(筒)き(接尾語)」の意と思われ、大崎半島が筒状に細長く伸びている所に由来するものと考えられる。

つね[都禰]  『和名抄』備後国葦田郡に「都禰郷」で見えるが、『続紀』養老3年(719)に「常城(つねき)」で初見し、広島県福山市新市町常金丸(つねかねまる)の地をいう。「つな(繋)」の転化とみられ、馬を繋いだ土地であろう。

つの[都濃]  『和名抄』周防国に「都濃郡」で見えるが、『雄略紀』9年に「角国」(つののくに)で初見し、『国造本紀』には「都怒(つの)国造」が見える。山口県周南市の一帯をいい、「つの(角)」の意で、南の海岸や海中に角の如き半島や細長い島が並んでいることに由来するであろう。

つの[都濃]  『和名抄』石見国那賀郡に「都濃郷」とあるが、『万・138』に「角里」で初見し、島根県江津市都野津のあたりをいう。紀伊系「角朝臣」一族の居住地に由来する。

 『万・138』は「柿本朝臣人麿が石見国より妻に別れ上り来る時の歌」131番の類歌(或る本の歌)である。知る人ぞ知る人麿の絶唱である。最後の5句を転載しておこう。

……愛(は)しきやし 我が嬬(つま)の兒が 夏草の 思ひ萎(しな)えて 嘆くらむ 角の里見む 靡(なび)けこの山

 『万葉集』初見の地名が出てきたので、ここで『万葉集』にある他の例を挙げておこう。全部20巻で防人の歌である。(まだあるかも知れないが、取りあえず気付いたものだけ。)

 4359・4374・4419・4422番と4372番・4422番・4428番の原文にそれぞれ「都久之」「都久志」とある。言うまでもなく「筑紫」である。

 次ぎは防人の歌の左注に出てくる。4378番「都賀郡」と4421番「都筑郡」で、前者は上に抽出した下野国都賀郡と同じ地だが、後者は武蔵国からの防人なので上の「都筑」とは別の地である。

 ついでながら、「隋書俀国伝」に「都斯麻」(対馬)という表記がある。「魏志倭人伝」の倭語が倭人によるの表記なのに対して、これは「隋書」編纂者による表記だろうか。もしそうだとすると唐時代には音韻表記に呉音も使われていたことになる。

つの[都野]  『和名抄』日向国児湯(こゆ)郡に「都野郷」、『神名帳』に「都農神社」が見え、宮崎県児湯郡都濃(つの)町都濃の地をいう。「角(つの)朝臣」一族の任地に由来する。

つま【都麻]  『播磨風土記』託賀(たか)郡に「都麻里」で見え、兵庫県西脇市津万(つま)の地をいう。「つま(端)」の意で、播磨平野の端にある土地をいう。

つま[都麻] 『和名抄』隠岐国穏地(ちち)郡に「都麻郷」で見え、島根県隠岐の島町都万(つま)の地をいう。「つま(端)」の意で、郡の端にあることによるとみられる。

つも[都茂]  『和名抄』石見国美濃郡に「都茂郷」で見え、『三代』元慶5年に「都茂郷」で初見し、島根県益田市美都町都茂の地をいう。「つま(端)」の転化で、山地への入口にあたる地域をいう。

つら[都羅]  『和名抄』備前国児島郡に「都羅郷」で見え、岡山県倉敷市連島、藤戸のあたりをいう。『地理志料』は「つうら(津浦)」と解しているが、「つら(列)」の意で、列状の島の意かも知れない。

つる[都留]  『和名抄』甲斐国に「都留郡」で見えるが、『正倉院文書』天平宝字5年(761)に「都留郡」で初見し、山梨県都留市、大月市、富士吉田市、北・南都留郡の一帯をいう。「つる(鶴)」説、「つる(蔓)」説、「つら(列)」説とあるが、どれとも決め難い。あるいは「つら(面)」の意で、甲斐国の「おもて(面)」をいうのかも知れない。古代の官道は唯一、都留郡を経て、甲斐国府へと通じている。

 以上は先頭文字に「都」が使われている例だが、二字目に「都」が使われている例を地名だけ抜き書きしておく。宇都宮(うつのみや)・賀都(かつ)・芸都(きつ)

 「都」を「ト」と訓んでいる例は「伊都」のほかにもう一例あった。

と[都於]  『和名抄』石見国那賀郡に「都於郷」で見え、島根県浜田市旭町今市の周辺をいう。「と(門)」の意で、狭い通路にあたる土地をいう。

 この例は現在地名とは何の繋がりがまったくないので疑問を持った。島根県浜田市に比定しているのでそこをネット検索していたら「市区町村変遷履歴情報」というサイトに出会った。それによると島根県那賀郡は1940年に江津町と浜田市に編成替えされている。それぞれの構成町村は次の通りである。

江津町(那賀郡江津町,都濃村,渡津村)
浜田市(那賀郡浜田町,石見村,長浜村,美川村,周布村)

 江津町に都濃村がある。こちらが「都於」の比定地ではないか。これは先にも例があったが、訓みは「ツノ」だ。「都於」も「ツノ」である可能性大である。

(7月11日 訂正)
 上の件について図書館に行き、『角川地名大辞典』で確かめてきた。「都濃(ツノ)」の方は間違いなかったが、浜田市ではなく平田市(現在は出雲市の一部)に「都於島」があるという。ただし、「都於」を「ツオ」と訓んでいる。下に追記しておく。

  つおしま 都於島<平田市>
「風土記」にみえる島名。「都於島。磯なり」とある。「風土記抄」に「都於嶋は是亦同処、今の大国島を曰う」とあることから,現在の平田市地合(ちごう)浦の大黒島を比定地としている。岩島である。

 『日本古代地名事典』が浜田市に比定している「都於」の訓みも「ツオ」だと考えられる。

 以上、私の調べた範囲では「都」を「ト」と訓む地名例は「伊都」しかない。やはり、古くは「イツ」と訓まれていて、後に「ツ→ト」という音韻変化(通音)があったと考えるのが筋ではないだろうか。
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この記事へのコメント
なるほど!これはよく研究しなければなりませんね。
伊都=イッの可能性はどうですか?邪馬壹国=ヤマ「イッ・ゐっ」コクというのが古田氏の見解だった?ように思いますから。天孫降臨以来の古き国が前原=伊都(イッ)国、ヤマ地域に移った新しい国が邪馬壹(イッ)国とか・・「ゐ」と「い」の違いはありますが・・・単なる思い付きです。
2012/07/10(火) 18:20 | URL | 愛読者 #KUmnAu4w[ 編集]
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