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《続・「真説古代史」拾遺篇》(93)



「倭人伝」中の倭語の読み方(36)
「21国」の比定:(13)弥奴国(その三)


 4時間という長時間番組「里山100選」(NHK)を録画して、4回に分けて観賞してきた。どこの里山も美しい。「ミノ」は「美しい野」だという語源説があるのもうなずける。また、どこの里山も緑豊かな山を控え、そこから流れ出るきれいな水流に恵まれている。水は、人間に限らず、あらゆる生物に取って不可欠なものである。人が水の豊かな土地に集落を創ってきたことも当然なことだ。「ミノ」語源は「水の野(湿地)」あるいは「美の尾(山沿いの丘陵)」だという説にもうなずける。

 さて、前回に抜き出した五件の「ミノ」のうち(1)美濃国(岐阜県)は銅鐸圏ということで除外した。(5)阿波国三好郡美濃郷は「伊邪国」として比定した「祖谷」と重複するので、これも除外する。残る三例、実際に現地に行くことはかなわないので地図で確認するほかないのだが、どれも「水の野(湿地)」に適合した土地のようだ。きめてがない。「弥奴国」の比定はあきらめようかと思ったが、「愛読者」さんが指摘した「耳納」がヒントとなり、考えが進展した。「耳納」が国名に使われたとすれば、それは「伊邪国」と同様、「山」の地名を用いた例にになる。しかし、地図で「耳納」を確認していて、私は「ミノ」ではなく「ミヌ」そのものが「耳納」のすぐ近くあることに気づいた。「三潴(ミズマ)郡」である。(「ミズマ」の漢字表記は「三潴」「三瀦」と二通りあるが、「三潴」が一般的なのでこれを用いることにする。)

 「三潴」は現在「ミズマ」と読まれているが、もとは「ミヌマ」だった。『古代地名大辞典』には次のように書かれている。

 『和名抄』の訓は「美無万」であるが、『延書式』にはミヌマとある。後にはミツマとも称されたが、中世以降はもっぱらミズマとされた。その名は筑後用下流域の湿地帯で沼沢が多いことにちなむといい、現在もクリークが発達していることで有名である。

 「三潴」は「水沼」あるいは「水間」という表記で『日本書紀』にも出てくる。「神代紀上」(素戔嗚尊の誓約、一書第三)・「景行紀」(景行18年7月条)・「雄略紀」(10年9月条)である。また、『万葉集』にもある。4261番歌である。(詳しくは『「倭の五王」補論(4)』『「倭の五王」補論(5)』をご覧下さい。)

 「沼(ヌマ)」は古くはただ単に「ヌ」と呼ばれていたのではないだろうか。もしそうだとすれば、「ミ」は「水」の意味の言素(造語成分)だから、『日本語源広辞典』が挙げていた「水+ヌ(湿地)」という「ミノ」の語源説が生きてくる。つまり、「三潴」は古くは「ミヌ」であり、こここそ「弥奴国」、ということになる。これが後に地名の言素「マ」が付加されて「ミヌマ」となった。

 では、「沼(ヌマ)」は古くはただ単に「ヌ」と呼んでいたことを論証してみよう。

 『万葉集』で訓読文に「沼」がある歌を取り出してみた。全部で20首あった。そのうち8首(2.201 9.1809 11.2441 2719 12.3021 3023 14.3547 17.3935)は「隠り沼の(コモリヌノ)」という決まり文句(「草などに隠れてよく見えない沼のように」という意味の比喩として使われている。下に「下」という句がくる場合は枕詞扱いしているようだ。5首ある。)で使われている。原文は「隠沼乃」が4首(201 1809 2719 3023)で、後は「隠沼」(2441)・「絶沼之」(3021)・「許母理沼乃」(3547)・「許母利奴能」(3935)であった。(201番歌は『人麿が「壬申の乱」を詠った?(1)』で取り上げた歌です。)

 「コモリヌノ」は本来は「コモリヌマノ」であるが、五音に整えるため「マ」を省いたという解釈も可能だが、それだったら「ノ」を省いて「コモリヌマ」とする方が自然だ。原文が「隠沼」の場合も「コモリヌノ」と訓読しているが、これは「之」が欠落したものと考えられているようだ。原文通りなら「コモリヌマ」と訓むべきだ。

 他の12首の原文と訓読は次の通りだ。

7.1249
「君為 浮沼池」
「君がため浮沼の池の」
(きみがため うきぬのいけの)

09.1744
「前玉之 小埼乃沼尓」
「埼玉の小埼の沼に」
(さきたまの をさきのぬまに)

11.2707
「青山之 石垣沼間乃」
「青山の岩垣沼の」
(あをやまの いはかきぬまの)

11.2818
「垣津旗 開沼之菅乎」
「かきつはた佐紀沼の菅を」
(かきつはた さきぬのすげを)

12.3022
「去方無三 隠有小沼乃」
「ゆくへなみ隠れる小沼の」
(ゆくへなみ こもれるをぬの)

13/3247
「沼名河之」
「沼名川の」
(ぬながはの)

14.3415
「可美都氣努 伊可保乃奴麻尓」
「上つ毛野伊香保の沼に」
(かみつけの いかほのぬまに)

14.3416
「可美都氣努 可保夜我奴麻能」
「上つ毛野可保夜が沼の」
(かみつけの かほやがぬまの)

14.3417
「可美都氣努 伊奈良能奴麻乃」
「上つ毛野伊奈良の沼の」
(かみつけの いならのぬまの)

14.3526
「奴麻布多都」
「沼二つ」
(ぬまふたつ)

16.3863
「志賀乃安麻乃 大浦田沼者」
「志賀の海人の大浦田沼は」
(しかのあまの おほうらたぬは)

19.4261
「水鳥乃 須太久水奴麻乎」
「水鳥のすだく水沼を」
(みづとりの すだくみぬまを)

 「ヌ」と「ヌマ」が混在しているが、「ヌマ」は後の方に集中している。『万葉集』は必ずしも時代順に並べられているわけではないが、「沼」の「ヌ」→「ヌマ」という変化を示していると考えることはできないだろうか。

 以上より、ひとまずは「弥奴国」を「三潴郡」に比定しておこう。
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この記事へのコメント
天沼矛って古事記にありますね
2012/07/01(日) 18:54 | URL | #-[ 編集]
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