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《続・「真説古代史」拾遺篇》(80)



「倭人伝」中の倭語の読み方(23)
「21国」の読み:「邪馬」の意味


 ずいぶん長い寄り道をしてしまった。本道に戻ろう。

 楠原氏が「邪馬国」の比定に当たって「山(ヤマ)」の語源を問題にしているので、図書館で何冊かの語源辞典を調べてみた。 前田富祺監修『日本語源大辞典』(小学館)が諸説をまとめている。次のように12通りもある。


 不動の意で、ヤム(止)の転〈日本釈名・日本声母伝・和訓栞〉。

 どこにでもあるもので.不尽というところから、ヤマヌの意か〈和句解〉。

 ヤマ(弥間)の義〈東雅・国語の語根とその分類=大島正建〉

 イヤモエ(弥萌)の約か。〈菊地俗言考〉

 イヤモリクガ(弥盛陸)の義〈日本語源学=林甕臣〉。弥盛の義〈日本語源=賀茂百樹〉。

 イヤマル(弥円)の義か〈名言通〉。

 ヤハニ(弥土)の義〈言元梯〉。

 イヤホナ(弥穂生)の約<和訓集説〉。

 ヤはいやが上に重なる意、マはまるい意〈槙のいた屋〉。

 イハムラ(石群)の反〈名語記〉。

 ヤマ(矢座)から出た語で、マはバ(場)と同じ〈万葉周叢攷=高崎正秀〉。

 陸地の意のアイヌ語から〈アイヌ語より見たる日本地名研究=バチェラー〉。

 「イヤハヤ」と言うほかない。増井金典著『日本語源広辞典』は次の用に解説している。

やま【山】
 語源は、諸説が多く、みな信じがたい。「ヤマの二音節を分析せず、一語」そのものとみるべきと思います。「高くそびえ、盛り上がったところ」がヤマです。山の神の存在する神聖な地です。生活資材や燃料の供給地、がヤマです。近畿では、都を守る山として比叡山をさす言葉でもあります。また、演劇や音楽や文芸などで、感動の盛り上がった所を、ヤマといいます。▽中国語源【山】‥・「山の高い形」そのままの象形。例:山脈、山陽道、富士山。

 増井氏の主張を新しく知った用語を使って言い直すと、「ヤマ」は語根(以下、一音韻の場合は古田用語の「言素」を使うことにする)である。二つの言素の合成語として誰もが納得できる説が出ない限り、「二音節で一語」という取り扱いに私は賛成したい。が、今はあえて「二つの言素の合成語」という立場で論を進めよう。

 「倭語音韻の基本法則(2)の補足」で触れたように、古田さんは「玉(タマ)」「山(ヤマ)」の「マ」を同じ言素と考えているようだ。しかし、その「マ」の意味には触れていなし、「ヤマ」の意味の言素論的分析も、私が知る範囲では、まだないようだ。そこで、おこがましくも、ここで「ヤマ」の意味の「言素論」的分析をしてみよう。

 村石利夫著『日本 語源辞典』(東京堂出版)が「タマ」「ヤマ」の「マ」を同じ言素と考えて語源を分析している。次のようである。

やま[山」(名)
「弥間」
 ヤ(弥)は大層・甚だ。マは間合―空間・立体的間合。ヤマとは甚だ大きな立体、巨大な量塊をなすものの義。

たま[玉](名・接頭)
「足間」
 タはタル(足)、マは間合―立体的間合と視覚的間合。間合が充足して美しいものの意。宗教上・呪術用のもあるが、何れにしてもその装飾性が重んじられる。曲玉・管玉などあるが、球形をもってその極致とするのであろう。タマの語は、マ(間)が立体的間合と視覚的美観とをあらわし、タ(足)はその充足であるから、表面積が最小で、しかもその逆に内容が最大なるもの=球形を指示する義と、その視覚的な充足感をともに一語のうちに込めていよう。

 「間」は岩間・狭間・畝間・谷間などとも使われている。「マ」を「立体的間合と視覚的間合」とする説を採用しよう。しかし、「ヤ」の方には異議がある。「弥」の漢字としての意味には確かに「大きい」という意がある(大修館版新漢和辞典)。しかし、「弥」を「イヤ・ヤ」と読むのは国訓であり、この場合「大きい」という意味はない。『「いよいよ」の意』となっている。明解古語辞典(三省堂)では「イ(彌・八)」は接頭語に分類されている。意味は「数の多いのをいう語。たくさんの。」となっている。「イヤ」も接頭語で「①イヨイヨ・マスマスの意②イチバン・最モの意③非常ニの意」とある。「ヤ」を「大きい」意とする立論は成り立ちがたい。

 「ヤ」については次のような古田説がある。

『「ヤ」は人間が住むところを屋敷(やしき)、神様が住むところを社(やしろ)というように、祭る所を「ヤ」という。』(講演録「コノハナサクヤヒメ」)

 山・海・川など自然の地形にまつわる倭語の誕生は遠く石器時代にまでさかのぼるだろう。その頃から、山は神の住むところと考えたり、あるいは山そのものをご神体とみなす信仰があったと考えて間違いはないだろう。「ヤ」については古田説を採用しよう。すると「ヤマ」は「神聖な間(立体)」というような意となろう。古くからの信仰の対象として、邪馬壹国(岡)には高祖山があり、邪馬国(大和)には三輪山がある。

 さて、楠原氏は『地名用語語源辞典』では「やま〔山、岾、耶麻〕」は
「①高く凸起した所。語源はイヤ(弥)・マ(間)か。」
と説明している。上に挙げた諸説の中の③を踏襲しているわけだ。ただし、「イ(弥)・マ(間)」ではなく「イヤ(弥)・マ(間)」としている。

 楠原氏は「邪馬臺国」を「ヤマダコク」と読んだ。従って邪馬国を「ヤメコク」と読むわけにはいかない。当然「ヤマコク」と読んでいる。「邪馬臺=ヤマダ」説を紹介したときは、氏による「ヤマ」の意味の解釈部分を省略した。今回は「ヤマ」そのものが対象なのでそれを省略するわけにはいかない。次回ではそれを紹介しよう。
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