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《続・「真説古代史」拾遺篇》(76)



「倭人伝」中の倭語の読み方(19)
倭語の基本法則(1)


 今回は『「21国」の読み:邪馬国(2)』という表題で、『地名学…』の「邪馬国」説を検討する予定だったが、そこに入る前に『地名学…』を読むに当たって必要な倭語の音韻に関する法則を確認しておきたい。

和語には本来濁音から始まる語はない。

 言葉は後世にさまざまな影響を受けて変化するものであり、清音が濁音に変わることもあるだろう。そういう意味で「本来」という限定を付けた。

 今は古代地名が問題になっているので、古代地名に限って論じよう。地名はもともとはそこに住む人々が、その地の景観や動植物や産物などをもとに、その実生活や精神生活を通して生み出していったものである。しかし、その地名も後世にはいろいろな変化を受けて変わっていく。特に行政上の人工的な変化がほとんどだろうと推測する。試みに吉田茂樹著『日本古代地名事典』から濁音で始まる地名を抜き出してみる。(〈〉内の引用文は左記辞典から)

①蒲生(ガモウ)・②郡上(グジョウ)・③群馬(グンマ)・④馭謨(ゴム)・⑤造果(ゾウカ)・⑥太宰府(ダザイフ)・⑦出羽(デワ)・⑧備前(ビゼン)・⑨備中(ビッチュウ)・⑩備後(ビンゴ)・⑪豊前(ブゼン)・⑫豊後(ブンゴ)

 ⑥は倭語ではない。太宰(あるいは大宰)は春秋時代からある中国の官職名。

 ⑧~⑫はもとはそれぞれ吉備(キビ)国・豊(トヨ)国と呼ばれていた国が後世になって三国あるいは二国に分けられたときにつけられた人工的な地名である。

①について。
 二例挙げられている。ともに『和名抄』からで一つは「近江国蒲生郡」、もう一つは「豊前国企救(きく)郡蒲生郷」でどちらの「蒲(がま)の生えた地」という意に取っている。

 同じ「蒲」を使った地名に蒲田(カマタ)・蒲原(カマハラあるいはカンバラ)がある。「ガモウ」ももとは「カマウ」だったのではないか(これは何の根拠もない推測)。

 手元に『日本地名ルーツ辞典』があるので、念のためこちらも調べてみた。上の二例はないが、蒲生峠(ガモウトウゲ)という例が取り上げられていた。次のように説明している。
「岩美郡岩美町蕪島(かぶらじま)と兵庫県美方郡温泉町千谷(ちや)の間の県境の峠。地元の人はカモウともいう。(以下略)」

 「カマウ」→「ガモウ」も可能性があるかもしれない。

②は行政上の人工的命名である。
〈『文徳』斉衡(さいこう)2年(855)に美濃国の「武儀(むぎ)郡の北部を割いて郡上郡を置く」とあり、岐阜県郡上市の地域をいう。武儀郡の上(かみ)に郡を設置したので、「郡上」の地名が生まれた。〉

③はもとは「クルマ」だったようだ。
〈『続紀』宝亀8年(777)に上野国の「群馬(くるま)郡」で見えるが、『藤原宮木簡』に「車評」(くるまこほり)で初見し、群馬県群馬郡、前橋市、高崎市、渋川市の一帯をいう。「くるま(車)」の意で、上毛野君の一族、車持公の部民が乗車を(のりくるま)を作った所をいう。〉

④・⑤は不確定ながら、後世における音韻変化のようだ。


〈『類聚三代格』天長元年(824)に「能満(のま)合於馭謨(ごむ)」「益救(やく)令於熊毛(くまけ)」で初見するが、実際には、益救郡を馭謨郡へ、能満郡を熊毛郡へ合併したとみられる。鹿児島県の屋久島全域の部名で、明言できないが、山ばかりの狭い土地に、多くの人が来住したので、「こむ(込)」と呼んだことも考えられる〉

⑤ 〈『和名抄』安芸国賀茂郡に「造果郷」で見え、広島県東広島市造果の地をいう。「サウカ」の訓注があるが、「さはか(沢処)」の意ではあるまいか。山中にあって、川水の集まる地域で、水たまりに草の生えた地を「沢処」と呼んだ可能性が極めて高い。 〉

 「投馬国(1)」では「倭語には濁音で始まる語はない」という法則が全く念頭になかったので、次のような妥協をしておいた。

「投馬」を「つま」と読むことが出来るのだろうか。

 「投」には「とう」のほかに「づ」という音があるが、「つ」はない。3世紀頃の倭国では「投」を「つ」とも読んでいたのだろうか。万葉仮名にはそのような例がある。「豆」「頭」「図」が「つ」という音としても使われていた。「投」の場合については、私にはこれ以上の判断材料がないので断言は出来ないが、とりあえず「つ」とも読めるとしておく。

 「投」の音の「ヅ」→「ツ」は「倭語には濁音で始まる語はない」という法則によるとしてよいようだ。
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