2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《続・「真説古代史」拾遺篇》(40)



「倭人伝」中の倭語の読み方(4)
読み方のルール(3)


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 「愛読者」さん、重ねてのコメント、ありがとうございます。

(「愛読者」さんのコメント)
 対馬・対海何れも「ツシマ」とは読めませんから、「表音」ではなく「表意」による国名ではないでしょうか。

 同様の表現では「対蘇国」がありますが、これは倭人伝中の国名の並びから、蘇奴国(蘇の国)あるいは「蘇」に「対面・対峙」する国と思われるからですが、いかがでしょうか?

 古田さんも「瀚海」の瀚を「飛ぶように速い海流」を意味する語、「表意による海の名」とされていますよね。

 私の思考が浅く論旨に混乱がありました。次のように訂正したいと思います。

「三世紀頃の倭国という限者の意向によって名称が変更されることもあると思うが、原則として、それまで用いていた名称の音または意味と関連した漢字表記をするだろう。しかし、国の名称の場合は、その国が成立したときの命名なので、新しい国なら表意による漢字命名があって当然である。」

 今回のテーマの目的の一つは古田さんによる倭国30国の読み方を紹介することです。いずれ詳しく取り上げますが、古田さんによる「対蘇国」の読みは、「対海国」と同様に、「対」を「こたえる」という意とし、「阿蘇山の神を尊崇し、これを祭る国」と解釈しています。
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 さて、「ルール・その三」は「都市牛利」の読み方から導かれている。きっかけは上城誠さん(「古田史学の会」で活躍されている方のようです)からファックスで届けられた一枚の名刺であったと言う。その名刺の氏名は「都市佳美」だった。姓の「都市」は「トイチ」と読む。音訓併用の姓である。

 古田さんはさっそく「都市」さんを訪ねられる。こういうところが古田さんのすごいところだ。2009年のことというから83歳になられている。お年にもかかわらず、「歴史は足にて知るべきものなり」というモットーを実行している。改めて敬服の念に打たれる。

 古田さんが訪ねられたのは長崎県北松浦郡の鷹島である。北松浦半島から突出している岬と鷹島とで伊万里湾の出口を形作っている。

 久留米大学での講演のあと、長崎県北松浦郡の鷹島へ向かった。単独だった。博多の近くに住む、佳美さんの御親戚から親切にお教えいただいたのである。鷹島の宮崎旅館に着いた。都市さん一族のお家におうかがいしようとしたら、夕刻すぎ、向こうから来られた。そのお出でいただいた都市政文さんの御案内で深夜(二十二時半)、黒津へ行き、さらに翌朝松崎英雄さんの御案内で墓地に登った。明治のはじめ近くまで、都市一族の住居、そして墓地のあったとされた地点である。そのまぎれもなき「土地鑑」を得ることができたのである。「黒津」は「黒潮」の「黒」。〝神聖な″の意義である。その黒潮分流の松浦水軍の拠点、それがこの「黒津」である。

 どうやら「都市牛利」は松浦水軍と関係がある人物のようだ。ここで改めて「都市牛利」が登場するくだりを復習しておこう。

 景初二年六月、倭の女王、大夫難升米等を遣わし郡に詣(いた)り、天子に詣りて朝献せんことを求む。太守劉夏、吏を遣わし、将いて送りて京都に詣らしむ。

 其の年十二月、詔書して倭の女王に報じて曰く、「親魏倭王卑弥呼に制詔す。帯方の太守劉夏、使を遣わし、汝の大夫難升米・次使都市牛利を送り、汝献ずる所の男生口四人、女生口六人、班布二匹二丈を奉じ、以て到る。汝の在る所遠きを踰(こ)え、及(すなわ)ち使を遣わして貢献せしむ。是れ汝の忠孝、我甚(はなは)だ汝を哀れむ。今、汝を以て親魏倭王と為す。金印紫綬(きんいんしじゅ)を仮し、装封(そうふう)して帝方太守に付して仮授す。汝、其れ種人を綏撫(すいぶ)し、勉(つと)めて孝順を為せ。汝が来使難升米・牛利、遠きを捗(わた)り、道路勤労す。今、難升米を以て率善中郎将と為し、牛利を率善校尉と為し、銀印青綬を仮し、引見労賜(ろうし)して遣わし還す。今、絳地(こうち)交龍錦五匹・絳地縐粟罽(しゅうぞくけい)十張・蒫絳(せんこう)・五十匹・紺青(こんじょう)五十匹を以て、汝が献ずる所の貢直に答う。又特に汝に紺地句文錦(こんじこうもんきん)三匹・細班華罽(さいはんかけい)五張・白絹五十匹・金八両・五尺刀二口・銅鏡百枚・真珠.鉛丹各五十斤を賜い、皆装封して難升米・牛利に付す。還り到らば録受し、悉く以て汝が国中の人に示し、国家汝を哀れむを知らしむ可し。故に鄭重に汝に好物を賜うなり」と。


 都市牛利は俾弥呼が魏に送った遣使の次使だ。詔書には正使の難升米とペアで登場する。難升米の方には変化がないが、都市牛利の方は初出がフルネームだが、後は「牛利」だけになっている。

 古田さんは難升米の方は「難」が姓で「升米」が名であることを論証している。そして「ナンシメ」と読んでいる。(もしも必要が起きたら詳しく取り上げることする。)

すると都市牛利の方の「都市」は姓ではなく職名ではないかと言い、古田さんは次のような分析をしている。

 この状況から見ると、「難」姓とは異なり、「都市」の場合は「姓」というより職業もしくは職場ではないか、という問題である。

 たとえば江戸時代でも「豆腐屋の甚兵衛」と言う。「甚兵衛」だけなら、他にも〝あり得る″名前だから、「豆腐屋の」という〝職業″によって、当人を「特定」するのである。だが、その場合、一回目だけであり、二回目からはもう、その「職能」は。付ける”必要がない。それと同じである。

 すなわち、この「都市」は現代では明白に姓となっているけれど、三世紀の倭人伝のケースでは、いまだ「姓」ではなく、「職能」もしくは「職場」なのではないか。そういう問題である。

 では「都市」とはどのような職能を表しているのだろうか。

(その一)
 「ト」は戸口。神殿の戸口を指す言葉である。
(その二)
 「イチ」は市。倭国に「市」のあったこと、倭人伝に明記されている。「国国市あり。有無を交易し、使大倭(したいゐ)之を監す。」(従来の訓みでは「大倭をして之を監せしむ。」)とある通りだ。

 「神殿の戸口の周辺におかれた市場」の意である。後代の〝神社や寺を中心として作られた市場″の原型である。

 しかしこれは「十市(トイチ)」である。「都」に限った存在ではない。ところが「都市」の場合、「ト」に「都」の漢字を〝当てて″いる。すなわち、この場合は、倭国内の各国にある、一般の「トイチ」ではない。女王国の首都にある「都の〝トイチ″」なのである。女王国に〝一つだけ″の、中心の「トイチ」である。それを掌握していたのが、この松浦水軍だったのである。

 倭人伝に次の文面がある。

①(対海国)「良田無く、海物を食して自活し、船に乗りて南北に市糴(してき)す。」
②(一大国)「差田地有り、田を耕せども猶食するに足らず、亦、南北に市糴す。」

 右の「南北市糴」の表現は、「北」(狗邪韓国)と「南」(末盧国)との間の経済交流を指す言葉であろう。その「海上交流」を支え、管理していたのが、松浦水軍である。だからそのボス、責任者が、「都市の牛利」と称したのは、当然だったのである。わたしは倭人伝の中の人名表記について、さらに一歩をすすめることができたのである。

 後世(七世紀)、万葉集に出現して有名な「十市(といち)の皇女」も、大和における「トイチ」の存在を示しているものと思われる。

 このように考察してくれば、景初二年の俾弥呼の使者のナンバー・ツウにこの「都市牛利」の名のあることはその意義が明確となろう。当時の朝鮮海峡の「南北交流」の海路を支配していたのは、松浦水軍であった。その松浦水軍のルートに依って、俾弥呼は使節団を帯方郡へと派遣することが可能だったのである。

 以上により
「倭人伝の固有名詞は、倭語を「音訓両用」の漢字表記したものである。」
というルールが加わる。古田さんはこれを「都市命題」と読んでいる。

 なお、古田さんは「牛利」の方の読みは「ゴリ」または「ギュウリ」とし、はっきりとした決着をつけていない。手元の辞書(新漢和辞典)では「牛」は「漢音:ギュウ、呉音:グ」である。「ゴ」は「特殊な場合にのみ用いられる音」とされている。「ゴリ」は不当ではないだろうか。「ルール・その一」に従えば「グリ」となるが、このルールは〝妥当する可能性が高い″ということで絶対的なルールではないので「ギュウリ」もあり得る。音が「グ」の漢字は、「求」「具」など、たくさんあるのにその中から「牛」を選んだ理由はなんだろうか。一方、「ギュウ」と読む漢字は「牛」しかない。そのようなことを勘案すると「ギュウリ」が妥当だろうか。「あるいは「ルール・その三」を用いて「ウシリ」?

 名前の方は「都市牛利」という人物の正体解明には関係ないだろうから、これ以上こだわるのはよそう。

 ちなみに、「評釈倭人伝」では「ヅシゴリ」「トシゴリ」の二通りの説を挙げている。また、世界古典文学全集(筑摩書房)の「三国志」(以下、〈筑摩版〉と略記する)では「タジゴリ」という一風変わった読みをしている。「」は「ト、ツ」であり、「市」は「シ、ジ」である。「ヅシ」「タジ」などという読みは一体どこから出てきたのだろうか。
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