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《続・「真説古代史」拾遺篇》(43)



狗奴国の滅亡(24)
崇神記をめぐって(15)
崇神の狗奴国攻め(5)


①タケハニヤスと崇神の縁戚関係 の結論

 タケハニヤスと崇神の縁戚関係が、系譜では叔父・甥の関係なのに「崇記」では庶兄弟となっている矛盾は、私には系譜の「偽入」場所を誤ったためとしか考えられない。ヤマト王権の一族でないものを一族として「偽入」した目的は古田さんの言う通りだと思う。私なりに言い換えてみる。『古事記』は次のようなことを主張したいのだ。

 タケハニヤスは崇神の庶兄である。従ってタケハニヤスの根拠地である山城や河内はすでにヤマト王権の支配下にあった。崇神のタケハニヤスへの武力行使は侵略ではなく、タケハニヤスの反逆を鎮圧したものである。大義名分は崇神の側にある。

 この大義名分を盛り込むため行われたのがタケハニヤスのヤマト王権への系譜「偽入」であった。ところが「開化記」に「偽入」すべきところを誤って「孝元記」に「偽入」してしまった。そのために系譜では叔父、「崇記」では庶兄という矛盾が生まれた。本来の「偽入」は次のようになるはずだった。

若倭根子日子大毘毘命、春日の伊那河宮に坐しまして、天の下治らしめしき。此の天皇、旦波(たには)の大縣主、名は由碁理(ゆごり)の女、竹野比真を娶して、生みませる御子、比古由牟須美命。又河内の青玉の女、名は波邇夜須毘賣を娶して、生みませる御子、建波邇夜須毘古命。又庶母伊迦賀色許賣命を娶して、生みませる御子、御眞木入日子印惠命。次に御眞津比賣命。又丸邇臣の祖、日子國意祁都命の妹、意祁都(おけつ)比賣命を娶して、生みませる御子、日子坐王。又葛城の垂見宿禰の女、〓鸇(わし)比賣を娶して、生みませる御子、建豐波豆羅和氣。此の天皇の御子等、幷せて五柱なり。

 これなら辻褄が合う。タケハニヤスは崇神の庶兄となる。

ハニヤスヒメ===開化===イカガシコメ
        │       │
      タケハニヤス   崇神

 改めて結論を言うと、『古事記』の記述では「庶兄」は異母兄を意味する。「義兄」という解釈はできない。そして、タケハニヤスの系譜はあくまで「偽入」であって、タケハニヤスと崇神とは全く縁戚関係はない。(ただし、義兄弟であった可能性は排除できない。)

 なお、いろいろ調べていたら、宣長が「古事記伝」でこの問題を取り上げていて、「我」は「汝」の誤りという説を称えていることを知った。再度問題の記事を掲載する。

故、大毘古命、更に還り參上(まゐのぼ)りで、天皇に請(まを)す時、天皇答へて詔りたまひしく、「比(こ)は爲(おも)ふに、山代国に在るが庶兄(まませ)建波邇安王、邪(きたな)き心を起せし表(しるし)にこそあらめ。伯父、軍を興して行でますべし。」とのりたまひて、…

 この「我」を「汝」とするとこれは大毘古を指すことになる。なるほど、「孝元記」の系譜では確かにオオビコとタケハニヤス庶兄弟である。しかし、『古事記』の系譜記録は娶った妃毎に長子→末子という順で書かれているので、庶兄弟間の長幼関係は明確ではないが、一応第一妃の子が長子と考えてよいのではないか。そうだとすると、オオビコの母・ウツシコメが第一妃でタケハニヤスの母・ハヤスヒメは第三妃なので、タケハニヤスはオオビコの「庶弟」であり「庶兄」ではない。宣長説では新たな矛盾が出てきて、やはり解決しない。

「11王」問題の補充

 最後に、関連事項として垂仁の系譜を調べていて反省したことがある。前々回に取り上げた「11王」である。その中に「沙本毘古」の名があることは指摘しておいたが、「11王」がどの王を指しているのか、その検討を省略していた。その検討には大事な事柄が含まれていると思い直した。改めて「11王」の王名を確認しておこうと思う。まず、「11王」問題の冒頭部分を引用する。
「十一王」 は誰か
 決定的に重要なテーマが、古事記に現れている。第九代の開化天皇の項の「十一王」の記事である。肝心の崇神天皇(御真木入日子印恵命)をめぐる、「王」たちの存在である。

①其の兄(せ)比古由牟須美(ヒコユミスミ)王
②大筒木垂根(オホツツキタリネ)王
③讃岐垂根(サヌキタリネ)王
④日子坐(ヒコイマス)王
⑤大俣(オホマタ)王
⑥小俣(ヲマタ)王
⑦志夫美宿禰(シブミノスクネ)王
⑧沙本毘古(サホビコ)王
⑨袁邪本(ヲザホ)王
⑩室毘古(ムロビコ)王
⑪丹波比古多多須美知能宇斯(タニハノヒコタタスミチノウシ)王
⑫水之穂真若(ミツノホノマワカ)王
⑬神大根(カムオホネ)王
⑭八瓜入日子(ヤツリイリヒコ)王
⑮山代之大筒木真若(ヤマシロノオホツツキマワカ)王
⑯比古意須(ヒコオス)王
⑰伊理泥(イリネ)王―日子坐王の子、幷せて十一王
⑱曙立(アケタツ)王
⑲菟上(ウナガミ)王
⑳朝廷別(ミカドワケ)王
㉑迦邇米雷(カニメイカヅチ)王
㉒息長宿禰(オキナガスクネ)王
㉓息長日子(オキナガヒコ)王
㉔大多牟坂(オホタムサカ)王
㉕建豊波豆羅和気(タケトヨハヅラワケ)王

 「~王」の列示は、壮観である。しかし、なぜこの人々が「命(ミコト)」ではなくて「王」なのか。従来は、説明できなかった(「十一王」以外にも、「王」が連続している)。

 これに前々回掲載した引用文が続く。

 古田さんは⑬と⑭を別人のように並べているが、⑭は⑬の「亦の名」であり実際には24名となる。なお④と㉕は崇神の庶弟である。

 古田さんが「11王」と言っているのは日子坐王の子⑤~⑰を指しているようだ。しかし、⑤~⑰は、⑭は「亦の名」だから除いて、12名なのだ。「日子坐王の子、幷せて十一王」は『古事記』本文の分注であり、古田さんが間違えたわけではない。ちなみに丸山氏の『校注 古事記』ではヒメミコも含めて「15王」なっている。ヒメミコは3名(下に示す)だから、男王はやっぱり12名。些細な問題だからと、今まで誰も問題にしなかったのだろうか。

 とりあえずは「11王」で続ける。古田さんはなぜその11名だけに限って議論しているのか、なんの説明もない。推理してみよう。上の24名を親子関係が分るように、開化も加えて編成し直してみる。(青字が父親、《 》が母親、○はヒメミコ)

 まず、開化の系譜。

若倭根子日子大毘毘(開化)
《竹野比賣》
 1比古由牟須美(ヒコユミスミ)命
《伊迦賀色許賣》
 2御眞木入日子印惠命(崇神)
 ○御眞津比賣
《意祁都比賣》
 3日子坐(ヒコイマス)王
《鸇比賣》
 4建豐波豆羅和氣(タケトヨハヅラワケ)

 ①~③は第一王子・比古由牟須美の系譜。

(A)比古由牟須美(ヒコユミスミ)王
《記載なし》
 (A)1大筒木垂根(オホツツキタリネ)王
 (A)2讃岐垂根(サヌキタリネ)王

 ④~⑰は第三王子・日子坐王の系譜。いわゆる「11王」である。

(B)日子坐(ヒコイマス)王(崇神の庶弟)
《山代之荏名津比賣》
 (B)1大俣(オホマタ)王
 (B)2小俣(ヲマタ)王
 (B)3志夫美宿禰(シブミノスクネ)王
《沙本之大闇見戸賣》
 (B)4沙本毘古(サホビコ)王
 (B)5袁邪本(ヲザホ)王
  ○沙本毘賣命(亦の名、佐波遲比賣)
 (B)6室毘古(ムロビコ)王
《息長水依比賣》
 (B)7丹波比古多多須美知能宇斯(タニハノヒコタタスミチノウシ)王
 (B)8水之穂真若(ミツノホノマワカ)王
 (B)9神大根(カムオホネ)王(亦の名、八瓜入日子王)
  ○水穂五百依比賣
  ○次御井津比賣
《袁祁都比賣》
 (B)10山代之大筒木真若(ヤマシロノオホツツキマワカ)王
 (B)11比古意須(ヒコオス)王
 (B)12伊理泥(イリネ)王

 ⑱~㉔は日子坐王の子たちの系譜となる。

(B)1大俣(オホマタ)王
《記載なし》
 (B)1・1曙立(アケタツ)王
 (B)1・2菟上(ウナガミ)王

 次の美知能宇志王は一字異なる漢字が用いられているが、⑪と同一人である。⑪の母は息長水依比賣である。この後は息長帶比賣(功皇后)の系譜を挿入したものと考えられる。さらに言えば『古事記』中巻の掉尾を飾る功の子・応神の系譜を明らかにしようとした意図が見てとれる。

(B)7美知能宇志
《丹波之河上之摩須郎女》
   比婆須比賣命
   眞砥野比賣命
   弟比賣命。
 朝廷別(ミカドワケ)王

(B)10山代之大筒木眞若
《丹波能阿治佐波毘賣》
    ↓
 迦邇米雷(カニメイカヅチ)王
 《高材比賣》
     ↓
  息長宿禰(オキナガスクネ)王
  《葛城之高額比賣》
      ↓
    息長帶比賣命
    虚空津比賣命
   息長日子(オキナガヒコ)王
   《河俣稻依毘賣》
       ↓
     大多牟坂(オホタムサカ)王

 以上から古田さんが、「開化記」に「偽入」された「呉親倭国」の「王」として「11王」に限定したことには合理性があると思う。

 しかし私は開化の子とされている①④㉕も「偽入」されたもので、「呉親倭国」の「王」ではないかと考えている。どちらでも今後の議論に関係はないのだが、一応その理由を簡単に述べると次の通りである。タケハニヤスが系譜では「命」という称号で書かれていたが、「崇記」では「王」に変わっていた。①はそのケースと同じである。④は一貫して「王」である。㉕は開化の系譜では称号なしで、二回目の登場で「王」が使われている。この二例は「天皇」の子としては初めてのケースである。
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全学連についての記述部分
全学連についての記述部分勉強になりました。ありがとうございます。
2012/01/03(火) 08:19 | URL | 高橋良平 #mQop/nM.[ 編集]
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