2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《真説古代史・近畿王朝草創期編》(183)

「天武紀・持統紀」(98)


「大化改新」の真相(21)
「品部廃止の詔」をめぐって(8)


 改めて確認しておきたいことがある。

 「大化の改新」の一群の詔は本来はどこにあったのか。詳しい検討は後に行うが、その年代はおおまかには次のように考えてよいだろう。上限は持統が大嘗祭を挙行して実質ともに天皇となった691(持統5)年11月1日。下限は近畿王朝が大宝律令を完成し自前の律令制度を確立した701(大宝元)年8月3日である。

 そしてこの間は、九州年号が存続しているのだから、九州王朝にも天皇がいたことになる。白村江での敗戦以後は当然天子という称号は使えない。九州王朝でも天皇という称号を用いていたのではないだろうか。つまり二人の天皇が共存していたことになる。ただし九州王朝から近畿王朝への権力の移譲あるいは奪取の過程にあった。一連の詔はその経過処置として近畿王朝が発したものである。このことを念頭において第二段を読んでみよう。

第二段:品部の廃止
而るに王(きみ)の名名(みなみな)に始めて、臣・連・伴造・國造、其の品部(しなじなのとものを)を分ちて、彼の名名(なな)に別く。復、其の民と品部とを以て、交雑(まじ)りて國縣(くにこほり)に居(はべ)らしむ。遂に父子(おやこ)姓を易(か)へ、兄弟(はらから)宗異(こと)に、夫婦(をうとめ)更互(かはるがはるたがひ)に名(な)殊(こと)ならしむ。一家(ひとついえへ)五(いつ)つに分れ六つに割(さ)く。是に由りて、爭(あらそ)ひ競(きほ)ふ訟(うたへ)、國に盈ち朝(みかど)に充てり。終に治れることを見ずして、相亂るること彌(いよいよ)盛なり。の粤(ここ)に、今の御寓天皇(あめのしたしらすすめらみこと)より始めて、臣・連等に及(いた)るまでに、所有(たもて)る品部は、悉に皆罷(や)めて、國家(おほやけ)の民とすべし。

 この段の初めの文を宇治谷氏は「王」を「天皇」と解釈して
「それなのに代々の天皇の御名をはじめとする名を、臣・連・伴造・国造らは、自らが支配する品部につけ、」
と訳している。「彼の名名に別く」という語句を無視している。

 この詔では天皇に対しては「御寓天皇」という語句が用いられている。「王」はそのままでよく、言い替える必要はないと思う。つまり、この「王」は九州王朝傘下の各国の王たちである。私の意訳は次のようになる。

「品部には初めは王たちの名前がつけられていたが、その品部を臣・連・伴造・國造たちが私有してそれに自分たちの名をつけて呼んでいる。」

 この詔を承っている「臣・連・伴造・國造」たちは九州王朝の臣下たちであろう。『「品部廃止の詔」をめぐって(1)』で紹介したように品部を下賜することもあったようだ。「臣・連・伴造・國造」たちが勝手に私有化したわけではないだろう。

 冒頭の「而るに」という接続詞は、前段の「聖主(ひじり)の天皇」が臣下や民を思いはかる気持ちを受けている。前段で「聖主(ひじり)の天皇」と持ち上げているのは九州王朝の天皇のことであると思った。これまでご苦労さんと、形式的ではあれ一応の配慮を示している。そうしておいて、いろいろと難癖をつけて「今の御寓天皇より始め…」と九州王朝に所属している品部を全て取り上げている。

 ここで私は『「倭の五王」補論(4)』『「天智紀」(36)』で取り上げた正倉院文書の「築後国正税帳」の記録を思い出した。それによると、近畿朝廷は738(天平10)年に筑後国からたくさんの宝物を献上させている。その中に職人を献上させた記録が残っている。「銅釜工、轆轤工3人、鷹養人30人、鷹狩り用の犬15匹」とある。これはまさしく「品部」の献上である。

 上のことから、上記の詔では「國家(おほやけ)の民とすべし」と「国家」という言葉を使っているが、品部を公民として管理するのは各地方ごとの国であった。この詔によって実際に品部を廃止したわけではなく、その私有を禁止したのだ。実際に品部を廃止したのはもっと後のことである。このことも『「品部廃止の詔」をめぐって(1)』に書いた。759(天平宝字3)年9月条に「品部(しなべ)を停(とど)め廃(や)めて公戸に混(まろか)し入れむ。その世業を相伝ふる者は、この限に在らず。」という布告が行われている。

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