2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《真説古代史・近畿王朝草創期編》(118)

「天武紀・持統紀」(34)


飛鳥浄御原宮の謎(9)
「飛鳥浄御原宮治天下天皇」とは誰か(4)


 人麿の196番歌の「浄の宮」どこの何を指しているのか。この問題の解明では地名とその地のありかが重要なカギとなる。問題となっている「井上」の「小字図」を『壬申大乱』から転載しておこう。

井上の地名図

 さて、図中に「井尻」・「池尻」という地名が見える。この地名について、柿原論文は次のように述べている。

「井尻。湧水の出る処の後方部分。昔、湧き水が此の地にあった由。」
「池尻。本山から流れて来た水の溜池であったか、又は湧水の池であったかはわからないが、尻という字から判断して本山から流れて来た水の溜地、即ち濠の一番後ろ部分ではないかと考えられる。」

 この地にかつて中心をなす一個の「井戸」があった。「井尻」・「池尻」という地名はその痕跡を示している。そして、その「井」のほとり、というのが「井上」という地名の由来と考えられる。

 「本山」は「小字図」で中央よりやや西よりの位置に見える。前回の「論拠1」で、「飛ぶ鳥」の形状のかなめとなる地であった。と同時に、この「本山」が「井上」の中心地でもあったことが分かる。古田さんは『小郡市史』から次の一節を引用している。

「本山(ほんやま)。本は元で古さを表す。最初に人が入り込んだ山(森)。中心となる土地を表現した地名。・・・本山は台地上にあって見晴らしが良く、平らに整えられ、本山の北・西・南は人工によるとみられる堀が巡らされ、地名は長者堀・尾辺田となっている。掘り土は本山の方は築地(ついじ)塀に利用され西側は墓所となっている。この本山は長者の館があったと推考できる場所であり、東側には北大門・南大門の地名が残っている。しかし、まだ発掘調査はなされていない。」

 長者堀・北大門・南大門という地名が示すように、井上には「井戸」だけがあったのではなく、立派な「館」があったことがうかがえる。長者堀について、『小郡市史』は次のように記録している。

「長者堀。長者が本山の館に居住し、その周囲の堀の一部が長者堀の地名として残っている。この長者堀は南に延びていて、高速道路が出来るときに発掘されて木簡が多数出ており、文化が早く開けた土地であることを裏付けている。ここの長者が、小郡官衙の長者と同一人物がどうかは判然としないが、井上に住居を置き、小郡官衙へ出勤していたとも考えられる。」

 「小郡」は単なる地方官衙ではなく、九州王朝の副都と思われる。 「前期難波京の謎(7)」 で引用した正木論文の一節を再掲載しておこう。

「特に、旧御原郡の井上地区に井上廃寺・井上薬師堂遺跡等の大規模遺跡がある。とりわけ同地区の上岩田遺跡では、大規模基壇を伴う瓦茸き建物、同一方向の大型建物群とそれを囲む柵列が確認され、単なる官衙(証衙)とは考え難い。時代は7世紀の中、後半時代で、小郡宮造宮を大化3年(647)とする『書紀』の記述と致する。」

 北大門・南大門については柿原論文が取り上げている。

「南大門。かつての豪族の家敷又は北薬師堂を経て、井上廃寺に行く通行用の大門のあったところではないかと思われる。」
「北大門。右の豪族の家敷に通ずる北の大門の跡の有った土地と思われる。」

 これまでの議論から、人麿の167番・168番・169番の舞台が井上である可能性が濃厚になってきた。さらにそれを「決定的に証明するもの」として、古田さんは、167番の原文で赤字によって示しておいた「上座・下座」を取り上げている。

 上座郡・下座郡は和名抄に次のように記録されている。

筑前国
 下座(しもつあさくら)郡 - 馬田(むまた)・青木・鍛饗(くはへ)、三城(みなき)・美嚢・城邊・立石
 上座(かむつあさくら)郡 - 把伎、壬生(にぶ)・広瀬・柞田・長淵・河東(何東)・三嶋


 ここまでの結語として、古田さんのコメントを直接引用しよう。

 その「上座」と「下座」が、この長歌の中に〝使用″されている。「天帰(甘木)」や「十六社(ししこそ)」、また「小」など、「現地地名」を、律儀に「作歌」の中に″閉じこめる手法″に立つ人麿だから、この一致・対応は決して偶然ではないのである。

 これら「飛鳥」「浄の宮」「上座・下座」問題によって、本来の「人麿作歌」がこの朝倉郡の周辺領域を「主舞台」としていること、確実なのではあるまいか。

 「上座」・「下座」のほかに、人麿が歌の中に秘かに使用している「現地地名」として「天帰」・「十六社」・「小」の三例が挙げられている。これらは、それぞれの歌の古田さんによる解読が正しいことを、相互的に補強しあう意味合いをもっている。ちょっと横道に入る感じになるが、次回取り上げようと思う。
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