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《真説古代史・近畿王朝草創期編》(89)

「天武紀・持統紀」(5)


「持統紀」の蝦夷朝貢記事(1)


 「持統紀」の蝦夷朝貢記事は688(持統2)年と689(持統3)年にある。これを34年遡上させると654(白雉5)年・655(斉明元)年となる。『「斉明紀」の北方遠征』で取り上げたように「斉明紀」の蝦夷関連記事は異常なほど多い。みな他史料からの盗用であった。「持統紀」の蝦夷朝貢記事が「斉明紀」からの盗用であるとすると、孫引き、いや「孫盗用」という離れ業を行っていることになる。まず、「持統紀」の蝦夷朝貢記事を読んでみよう。

688(持統2)年
A 11月5日
 蝦夷百九十餘人、賦調(みつき)を負荷(お)いて誄る。

 これは「天武の葬儀記事(1)」で掲載した記事で、蝦夷が天武の弔問にやって来たことになっている。

B 12月12日
 蝦夷の男女二百一十三人に飛鳥寺の西の槻の下に饗(あへ)たまふ。仍りて冠位を授けて、物賜(ものたま)ふこと各差(おのおのしな)有り。

 この記事も持統2年の最後の記事ということで、「天武の葬儀記事(1)」の掲載した。

689(持統3)年
C 1月3日
務大肆陸奥國の優[山+耆]曇(うきたま)郡城養(きかふ)の蝦夷、脂利(しり)の古男・麻呂・鉄折(かなをり)、鬢髪(ひげかみ)を剔(そ)りて沙門(おふし)と為らむと請(もふ)す。詔して曰く、「麻呂等、少くとも閑雅(みやび)ありて欲(ものほりす)ること寡(すくな)し。遂に此に至りて、蔬(くさびら)食(くら)ひて戒(いむこと)を持(たも)つ。所請(まう)すままに、出家し修道すべし」とのたまふ。

 上の記事中、「城養蝦夷脂利古男」(原文)を通説は「城養の蝦夷脂利古(しりこ)が男(こ)」と訓じている。ここでは正木さんの訓読に従った。その論証は次のようである。

(1) 蝦夷に親(族長か)の名を付けて紹介する例はない
(2) 麻呂、鉄折の名前は二字。 (3) 脂利古男の「脂利=しり」は、北海道南部に多く登場する蝦夷ゆかりの地名
(4) 脂利古男は「他に見えず」といい「脂利古」が名前である論証は何も無い

 こと等から「城養の蝦夷、脂利の古男、麻呂と鉄折」と解釈すべきではないか。特に、(3)の地名「しり」について、陸奥(優[山+耆]曇は出羽とされる)の事例ではないが、斉明紀五年是月の条に「後方羊蹄(しりへし)」という蝦夷郡地名が出てくる。さらに現在でも倶知安町を中心とする「後志(しりべし)支庁」には尻別川が流れ、尻別岳がそびえる。そしてその尻別川は「羊蹄山」を取り巻いて流れているのだ。これに限らず、松前半島には知内川(しりうちがわ)、周辺には奥尻島、後志利別川など「しり」地名が溢れ、蝦夷ゆかりの地名であることを示している。

 以下の論述がこの正木さんの訓読が正しいことの傍証となるだろう。

D 1月9日
・・・是の日に、越の蝦夷沙門道信に、佛像一躯、灌頂幡・鐘・鉢各一口、五色株各五尺、綿五屯、布一十端、鍬一十枚、鞍一具賜ふ。・・・

 上記の記事に対応すると思われる蝦夷朝貢記事は655(斉明元)年にみえる。

E 7月11日
 難波の朝(みかど)にして、北〈北は越ぞ。〉の蝦夷九十九人、東(あづま)〈東は陸奥ぞ。〉の蝦夷九十五人に饗(あへ)たまふ。并て百濟の調使一百五十人に設(あへ)へたまふ。仍(なほ)、柵養(きかふ)の蝦夷九人・津刈(つかる)の蝦夷六人に、冠各二階授く。
F
 是歳、・・・蝦夷・隼人、衆を率て内屬(まうきしたが)ふ。闕(みかど)に詣でて朝献(ものたてまつ)る。
(注:内属→属国になること)

 さて、「持統紀」の記事が「孝徳紀」・「斉明紀」の記事の盗用であると言えるだろうか。正木さんは登場する蝦夷人の人数に着目して、その「孫盗用」の論証を行っている。

 A~Dを34年遡上させてEにつなげてみよう。

A 654(白雉5)年11月 →190余人
B 654(白雉5)年12月 → 213人
C 655(斉明元)年1月 →  3人
D 655(斉明元)年1月 →  1人
   (C・Dの出家した蝦夷3+1=4)
E 655(斉明元)年7月 → 209人
      (99+95+9+6=209)

 Bの段階で213人の蝦夷が来ていた。そのうち4人が出家した。「213-4=209」。⑤の「持統紀」の人数とピッタリ一致する。偶然だろうか。

 正木さんは論文①~④を集大成したもの(『日本書紀』「持統紀の真実」)を『古代に真実を求めて第11集』に発表していた。これを図書館から借りてきて、いま読んでいる。その論文には、さらに詳しい人数分析が追加されていた。次回紹介しよう。
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