2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《真説古代史・近畿王朝草創期編》(15)
「天智紀」(4)
天智称制の秘密(3)
「斉明天皇の埋葬記事」


 山崎説をまとめると次のようである。
 讖緯説を組み込むために「天智称制」が造作された。『「書紀」初稿』では「天智紀」の編年は4年で「斉明紀」の編年は13年であったのを、「斉明紀」の後半6年分を「天智紀」に編入するという離れ業がその造作方法であった。

 しかしその造作での書く換えに遺漏があって、「斉明紀」~「持統紀」の記事にはさまざまな矛盾・齟齬が残された。その一つとして、山崎さんは「斉明天皇の埋葬記事」を取り上げている。

667(天智6)年2月27日
 六年春二月(きさらぎ)の壬辰(みづのえたつ)の朔戊午(つちのえうまのひ)、天豊財重日足姫天皇(あめとよたからしひたらしひめのすめらみこと)と間人皇女(はしひとのひめみこ)とを小市岡上陵(おちのおかのうへのみさざき)に合せ葬(かく)せり。この日に、皇孫(みまご)大田皇女を、陵の前の墓に葬す。高麗・百済・新羅・皆御路(おほち)に哀(みね)奉る。……


 斉明の死亡は661(斉明7)年7月24日である。死後5年7ヵ月目に埋葬したことになる。この奇っ怪さを「定説」はどう処理しているのだろうか。この記事に対して岩波大系は次のような頭注を付している。
「間人皇女のなくなったのは4年2月、斉明陵に合葬したのもこれより先のことで、戊午の日付けは「是日」以下にかかる。この種の書き方は書紀に往々見える。例えば継体23年条参照。」

「天豊財重日足姫と間人皇女を小市岡上陵に合せ葬せり」の部分は飛ばして読むべきだと言っている。

 頭注が同例としてあげている継体23条とは百済との外交記事(本論に関係ないので記事の引用は略す)で、その頭注は「…実は23年のことではなく、さかのぼって7年条にみえる。…」と言う。そこで継体7年条を見るとそこの頭注は「…23年条の第1・2段はその別伝。」と書いている。つまりこの場合は重出記事(別伝)である。斉明と間人皇女の埋葬の記事は上の条文しかなく、重出記事ではない。事情は全く異なる。斉明と間人皇女の埋葬の記事をとばして読むなどというおかしな読み方はつじつま合わせの苦しい言い訳にしか聞こえない。山崎さんの論考を読んでみよう。

 特に、形式的にしろ朝鮮三国の代表の人々が「哀奉る」としています。欽明・孝徳には海外の弔使を記していますが、この斉明の埋葬記事もこれと同等に扱っているのです。皇極記2年7月の吉備嶋皇祖母命には海外の弔使は記してありません。天武の大内陵への埋葬には海外の弔使は書いてありませんが、時代の外交関係を反映する面があり、一概には断定できません。しかし、海外の弔使を記すのは天皇限りとみて誤りはないと思います。

 この天智6年には前条に続いて、「石槨の役(管理人注:石室墳墓造営の労役)を起さしめず。冀ふ所は、永代に以て鏡誡とせよ」とあって、薄葬を遺言しています。斉明の陵に、斉明と間人皇女を葬ったこと間違いないと解せるのです。

 なお、「岩波書紀」の注のように、「是日にかかる」として、その前の文章は読まなくてもよいとするが、このような日本語の文法があるはずがない。

 斉明天皇が「書紀」の通り斉明7年に死んで、天智6年に埋葬されたとすると、死後5年7ヵ月であって、継体以降の天皇のなかでは、敏達天皇(5年8ヵ月)に続いて、その埋葬までの期間が長いことになります。次に、長いのは天武の2年2ヵ月ですから、異常であることがわかります。

 私の提起している斉明・天智紀書き替えの仮説でみると、天智6年とは本来斉明13年であって、斉明が前の年に死んで斉明13年2月に埋葬されたとすれば、ごく自然のこととなります。間人皇女も4年2月ですから2年後に母と同じ墓に入ったということです。この場合、天智紀7年の条にある「或る本」(管理人注:〈或本に云はく。六年の三月に、位に即きたまふ。〉)の異伝と天智の即位は一致することになります。

 讖緯説の導入にともなって斉明紀から天智紀に書き替えたとき、斉明の埋葬記事を動かすことを失念したのでしょうか。間人皇女との合葬となっていますから、4年2月(管理人注:間人の死亡日時)以前にはできなかったし、海外の弔使や薄葬の遺言を、唐、新羅との戦いの最中(管理人注:天智元年・2年 つまり斉明死亡の直後)に移動することをためらったのであろうか。

 「岩波書紀」の注は新しい文法を作って苦肉の解釈を行ったが、私の立場では、この矛盾は書き替え時に修正を失念したからと考えられるのです。『「書紀」初稿』のままの文章が残っていたのです。

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