2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
ひらりちゃんの童話集
「明日になったら」
明日になったら
「明日になったら、ママ、帰ってくるよね。」
ナナは、おばあちゃんのひざの上に頭をもたせてたずねました。
「ああ、ああ、帰ってくるともさ。」
おばあちゃんが言うとナナは、
「ああ、よかった。だって明日は入学式でしょ。ママがいないとこまるもん。」
と、ぴょんとはねおきていいました。
「今日はナナの好きなシチューにしてやる か。おいしいぞー。」
おばあちゃんが、かっほう着をきながら言いました。ナナは、
「ウン。おじいちゃんも、もうすぐ帰ってくるね。うれしいなー。」
と言いながらトントントンと、かいだんをのぼって自分の部屋にとびこみました。そしてピカピカの机にそっとさわってみました。それから机の下の赤いランドセルをしょってみました。そしてベッドにすわっている人形のリンをだきあげました。リンはお母さんが買ってくれた人形で、ふるとリンリンなるすずを手にもっているようせいの形をしていました。
「リン、かっこいいでしょ。このランドセル。ナナはねぇ、一年生よ。入学式にはママと行くんだ。リンはお家で留守番しててね。」
その時、ガラガラとげんかんのあく音がして、
「ただいまー。」
という声が聞こえました。
「あっ、おじいちゃん!」
ナナはリンをだいたまま、かいだんをかけおりていきました。
ホカホカゆげをたてているシチューをおいしそうに食べながら、ナナは言いました。
「おじいちゃん、ママは何時ごろに帰ってくるの。朝、ナナがおきたらいる?」
するとおじいちゃんはちょっと考えて、
「そうだなあ。明日の夕めし時かなぁ。」
と言いました。ナナはびっくりして、
「えー。それならナナの入学式にこれないじやないのー。」
と言いました。おじいちゃんは、
「うーん、そうか。明日が……。こまったな。」
とひたいにしわをよせました。おばあちゃんは、ナナを安心させようと思って、
「大丈夫だよ。おばあちゃんが、いっしょに行とうてあげるからねー。ナナちゃん。」
と言いました。でもナナは泣きながら、
「いや、いや。ママじゃなくちゃイヤー。」
と言って、自分の部屋に、かけこんでいってしまいました。おじいちゃんとおばあちゃんはまだ半分のこっているナナのシチューを、とほうにくれてながめていました。
「バカバカー。ママのバカー。」
ナナはリンをだいて、自分のベッドにもぐりこみました。まくらが涙でつめたくなってきました。
「今までずっとおりこうにしてたのにー。」
ナナは泣きつかれて、いつの間にかねてしまいました。
おばあちゃんにお母さんが帰ってくる日をききながら、ようち園にかよっていました。おじいちゃんにお母さんの帰ってくる日を教えてもらいながら、夕飯を食べました。こんな毎日がもう二ヶ月も続いています。ナナのお母さんはお医者さんです。今、他のお医者さんたちといっしょに、アフリカへ出張しています。ナナは本当にこの日まで、よくがまんしました。
朝はやく、ナナは目がさめました。ソッとおきて、リンをさがしました。リンはベットの下できゅうくつそうにねむっていました。ナナはリンのかみの毛をやさしくなでてやりました。リンリン……とかわいい鈴の音がナナの耳の中にひびきました。するとナナはとても悲しくなっておばあちゃんのねている部屋にそっと入って、ふとんにもぐりこみました。おばあちゃんはうす目をあけて、
「おや、おばあちゃんのふとんの中に、ナナねずみが入ってきたな。リンさまもいっしょかね。」
といいました。ナナはフフッとわらって、
「ねえおばあちゃん、ママのおはなしして。」
とせがみました。おばあちゃんはうんうんとうなずいて、こんな歌をうたってくれました。
ちっちゃなねずみは知ーらない。
となりのお部屋にやさしーい
お医者さんねずみがいることを
一番早い電車で来たことを。
ナナは、小っちゃいねずみは私みたい、と思ってあっと声をあげました。そしてふすまを半分あけてふり返り、
「きのうはごめんなさい。」
とおばあちゃんにあやまりました。となりの部屋にねていたお母さんのまくら元には紙づつみがありました。
「ママ」
ナナがよぶとお母さんはすぐに目をあけました。そして、
「ただいま、ナナちゃん。」
といいながらおき上り、ナナにほほずりしました。
「紙づつみはおみやげよ。」
ナナは急いで紙づつみをあけました。
「ナナちゃん、よめるでしょ。」
ナナは目をきらきらさせながら読みました。
「ナ・イ・チ・ン・ゲ・ル」
お母さんはナナにナイチンゲールの本を読んであげました。
「フローレンスは小さい時からとても心のやさしい子どもでした。……」
ナナとお母さんは、ゆっくりとさくらのさいている小学校の門をくぐりました。
「ねえ、ママ。ママはナイチンゲールみたいだね。私もナイチンゲールみたいになりたいなー。」
と言いました。それから、
「なれるように、ちゃんとお勉強するよ。」
と言って先をかけていきました。そんなナナの後すがたを、お母さんはうれしそうに見ていました。(おわり)
「明日になったら」
明日になったら
「明日になったら、ママ、帰ってくるよね。」
ナナは、おばあちゃんのひざの上に頭をもたせてたずねました。
「ああ、ああ、帰ってくるともさ。」
おばあちゃんが言うとナナは、
「ああ、よかった。だって明日は入学式でしょ。ママがいないとこまるもん。」
と、ぴょんとはねおきていいました。
「今日はナナの好きなシチューにしてやる か。おいしいぞー。」
おばあちゃんが、かっほう着をきながら言いました。ナナは、
「ウン。おじいちゃんも、もうすぐ帰ってくるね。うれしいなー。」
と言いながらトントントンと、かいだんをのぼって自分の部屋にとびこみました。そしてピカピカの机にそっとさわってみました。それから机の下の赤いランドセルをしょってみました。そしてベッドにすわっている人形のリンをだきあげました。リンはお母さんが買ってくれた人形で、ふるとリンリンなるすずを手にもっているようせいの形をしていました。
「リン、かっこいいでしょ。このランドセル。ナナはねぇ、一年生よ。入学式にはママと行くんだ。リンはお家で留守番しててね。」
その時、ガラガラとげんかんのあく音がして、
「ただいまー。」
という声が聞こえました。
「あっ、おじいちゃん!」
ナナはリンをだいたまま、かいだんをかけおりていきました。
ホカホカゆげをたてているシチューをおいしそうに食べながら、ナナは言いました。
「おじいちゃん、ママは何時ごろに帰ってくるの。朝、ナナがおきたらいる?」
するとおじいちゃんはちょっと考えて、
「そうだなあ。明日の夕めし時かなぁ。」
と言いました。ナナはびっくりして、
「えー。それならナナの入学式にこれないじやないのー。」
と言いました。おじいちゃんは、
「うーん、そうか。明日が……。こまったな。」
とひたいにしわをよせました。おばあちゃんは、ナナを安心させようと思って、
「大丈夫だよ。おばあちゃんが、いっしょに行とうてあげるからねー。ナナちゃん。」
と言いました。でもナナは泣きながら、
「いや、いや。ママじゃなくちゃイヤー。」
と言って、自分の部屋に、かけこんでいってしまいました。おじいちゃんとおばあちゃんはまだ半分のこっているナナのシチューを、とほうにくれてながめていました。
「バカバカー。ママのバカー。」
ナナはリンをだいて、自分のベッドにもぐりこみました。まくらが涙でつめたくなってきました。
「今までずっとおりこうにしてたのにー。」
ナナは泣きつかれて、いつの間にかねてしまいました。
おばあちゃんにお母さんが帰ってくる日をききながら、ようち園にかよっていました。おじいちゃんにお母さんの帰ってくる日を教えてもらいながら、夕飯を食べました。こんな毎日がもう二ヶ月も続いています。ナナのお母さんはお医者さんです。今、他のお医者さんたちといっしょに、アフリカへ出張しています。ナナは本当にこの日まで、よくがまんしました。
朝はやく、ナナは目がさめました。ソッとおきて、リンをさがしました。リンはベットの下できゅうくつそうにねむっていました。ナナはリンのかみの毛をやさしくなでてやりました。リンリン……とかわいい鈴の音がナナの耳の中にひびきました。するとナナはとても悲しくなっておばあちゃんのねている部屋にそっと入って、ふとんにもぐりこみました。おばあちゃんはうす目をあけて、
「おや、おばあちゃんのふとんの中に、ナナねずみが入ってきたな。リンさまもいっしょかね。」
といいました。ナナはフフッとわらって、
「ねえおばあちゃん、ママのおはなしして。」
とせがみました。おばあちゃんはうんうんとうなずいて、こんな歌をうたってくれました。
ちっちゃなねずみは知ーらない。
となりのお部屋にやさしーい
お医者さんねずみがいることを
一番早い電車で来たことを。
ナナは、小っちゃいねずみは私みたい、と思ってあっと声をあげました。そしてふすまを半分あけてふり返り、
「きのうはごめんなさい。」
とおばあちゃんにあやまりました。となりの部屋にねていたお母さんのまくら元には紙づつみがありました。
「ママ」
ナナがよぶとお母さんはすぐに目をあけました。そして、
「ただいま、ナナちゃん。」
といいながらおき上り、ナナにほほずりしました。
「紙づつみはおみやげよ。」
ナナは急いで紙づつみをあけました。
「ナナちゃん、よめるでしょ。」
ナナは目をきらきらさせながら読みました。
「ナ・イ・チ・ン・ゲ・ル」
お母さんはナナにナイチンゲールの本を読んであげました。
「フローレンスは小さい時からとても心のやさしい子どもでした。……」
ナナとお母さんは、ゆっくりとさくらのさいている小学校の門をくぐりました。
「ねえ、ママ。ママはナイチンゲールみたいだね。私もナイチンゲールみたいになりたいなー。」
と言いました。それから、
「なれるように、ちゃんとお勉強するよ。」
と言って先をかけていきました。そんなナナの後すがたを、お母さんはうれしそうに見ていました。(おわり)
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