2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
企業経営の社会主義化(17)
<まとめ>搾取資本主義からの脱却


 どんな贅沢をしても一生のうちで使い切れないほどの資産を持ちながら、なおも労働者からの大搾取によって暴利を貪る醜悪な資本家・経営者が多い中、必要以上の利益を求めず、顧客も従業員も大事にしている企業の例を見てきた。経営者も従業員も人間らしく生き生きとしている。とてもさわやかな気持ちになった。

 しかし、そのような顧客も従業員も大事にするような企業が自然増殖することを期待することはできない。暴利を貪って飽きない種類の人間性だけがその原因ではない。資本主義というシステムの欠陥・限界がその根底にある。

 今まで見てきた例を分析すれば、資本主義システムを越えていく道筋が見えてくるだろう。と思って、このことを記事にしてみようと悪戦苦闘をしていたとき、「五十嵐仁の転成仁語」がその道筋を示すような論攷をアップしていた。五十嵐さんの論攷は冷静沈着にして強固な論理性と広い視野を兼ね備えている。「五十嵐仁の転成仁語」は私が愛読しているブログの一つです。

 さて今回は、くだんの論攷 「活路は「技術立国」に向けた人材の育成しかない」 の立論を借用して、このシリーズのまとめを書くことにしよう。(直接の引用文は「」で示した)

 まず「日本経済の回復に向けて、企業に求められる経営はどうあらねばならないか。」と問い、「その答えは、一つしかない。堅調な内需に支えられた『技術立国』の道をもう一度めざすべきだということだ。それに役立つ経営が、今の企業には求められている。」として、企業が目指すべき方策を四つあげている。

(1)労働条件の画期的な改善
 資本主義経済は消費者がいなければ成り立たない。労働者は同時にもっとも頼むべき消費者でもある。労働者をただ搾取しているばかりでは資本主義経済は衰退するほかない。現在の逼塞状態から脱出するためには、まず従業員を大事にすること、つまり雇用・賃金・労働時間、さらには厚生福祉制度の面で画期的な改善が行われる必要がある。

「安心して働くことができ、可処分所得が増え、レジャーなども楽しむことができてはじめて、内需は大きく拡大する。このような働き方を実現することは、直接的短期的には働くものの利益となるが、間接的長期的には企業のためにもなるということを忘れてはならない。希望を持って働き生活することができる、安定した豊かな社会を生み出すことこそ、日本経済回復の基礎的な条件なのである。」

(2)海外市場の拡大化
 小売企業コストコは日本にも出店していることを知ったが、たぶん中国などアジアの他の国にも進出しているだろう。願わくば、顧客も従業員も大事にするという、その経営手法を堅持したまま進出してほしいものだ。

 日本の企業がアジアの周辺諸国を市場とする場合も、儲けることだけを優先してはならない。経済的に共栄共存するという理念が優先されるべきだ。そして、そのためには周辺諸国との間の政治的安定が不可欠である。いま鳩山首相が提唱している「東アジア共同体」構想がその方向に進むことが期待される。そのためには何よりもまず、日本国内にはびこっている偏頗なナショナリズムを克服しなければならない。

「堅調な内需だけでは不十分であり、輸出の拡大も必要になる。この点では、北米偏重の貿易構造を改め、中国など周辺諸国の市場を重視しなければならない。経済発展を続ける中国は、GDPにおいて今年中に日本を追い抜くと見られている。このような巨大な消費市場とどう付き合っていくのかが、今後の大きな課題となろう。小泉政権の靖国参拝のような政治による撹乱を許さず、過去の過ちと真摯に向き合うことにより、周辺諸国の信頼を得て未来志向の関係を築くことが必要である。」

(3)人材育成をめざす経営理念
 従業員を大事にすることが従業員を育て、優秀な人材が企業に定着する。さらにそのことが「教育費」というコストの大きな削減につながる。今まで見てきた成功例に共通した側面であった。

「コストの削減を最優先する『コスト・イデオロギー』から脱却する必要がある。コスト削減に心がけることは企業経営者にとって必要なことだが、それを最優先にしてはならない。人中心の経営理念を忘れて、人材を育て技術を高めるために必要な費用まで削ってしまうことがあるからだ。また、日本の国際的な環境からすれば、低価格によって国際競争力を生み出すことはできない。中国や韓国、台湾などと価格面で競争することは不可能だということを肝に銘ずる必要がある。」

(4)技能・技術の向上・環境保全を考慮した製品開発
 介護会社コーポラティヴ・ホームケア・アソーシエイツやラスヴェガスのカジノホテルでは従業員の技能・技術の向上のための環境がよく整っていた。それが企業の発展を根底で支えている構図になっている。

 また、アウトドア衣料会社パタゴニアは「最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える」ことをモットーに新製品を開発している。また社を挙げて環境保全運動そのものにもたずさわっている。これからの企業経営には環境保全は無視して通れない問題である。

「それでは何によって競争するのか。それは技術である。日本製品の品質の高さを維持するだけでなく、ワン&オンリーの新たな製品開発やユニークなコンテンツ、ニーズへの即応性などの面で、さらに大きな技術力や独創性を発揮しなければならない。環境保全・公害対策や食糧生産、新エネルギー、医療や福祉、文化や観光などの分野における技術開発、コンテンツや魅力の創造こそが、日本経済回復の起動力となるにちがいない。」

 最後に五十嵐さんは、以上の方策は企業だけで成しえるものではなく、「企業、業界、行政などによる役割分担や総合的な対応が求められる」と指摘している。今日の政治経済の課題は、好もうと好まざるとに関わらず、システムの社会主義化なしには真の解決はできないだろう。それなしには国家社会はただ衰退していくばかりであろう。

「以上の点から、技術・技能に関する教育・訓練の役割は高まってきている。これまで企業内で行われてきたOJTだけでは不十分であり、コンピュータ技術などは企業特殊熟練のみでは対応できない。また、失業対策や再就職と組み合わせた職業訓練も登場した。その結果、技能・技術訓練を企業内から外部化するという方向性が強まってきている。この点では、職業訓練や産業訓練において、教育機関、企業、業界、行政などによる役割分担や総合的な対応が求められることになろう。企業と公的なシステムとの協働による「技術立国」に向けた人材の育成こそが、日本経済復興の唯一の活路なのではないだろうか。」

 最後に一点付け加えたいことがある。ラスヴェガスの例では、経営者と従業員との互酬的なあり方を構築する要となったのは労働組合であった。今新しくさまざまなユニオンが立ち上がり頼もしい活動を始めているが、この大きな時代転回期にのぞんで、既成労働組合も御用組合から脱皮して本来の姿に戻ることを期待したい。所属組合員のためだけでなく、広く社会全体への寄与という観点をもって、「企業と公的なシステムとの協働」に労働組合も加わり、大きな役割分担を果たすべきだ。それが低迷している組織率の回復につながるだろう。
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