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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
企業経営の社会主義化(15)
アウトドア衣料会社パタゴニアの場合(2)


 シュイナードがパタゴニアを創業するにいたる経緯をたどると、おおよそ次のようだ。

 若きシュイナードは、登山に熱中しながら、自力で強いハーケンを作り出そうとこころざした。独学で鍛冶屋仕事を覚え、廃品集積所から鍛冶道具を買い取り、質の高いハーケン造りに成功する。それを1個1ドル50セントで売るようになった。浜でサーフィンに興じながら、浜辺で常温のままハンマーとのみを使ってハーケンを作り続けた。1日1ドル以下の生活を何カ月も続けながら、車でハーケンを売り歩き、ワイオミングやカナダやヨセミテやアルプスで山登りに熱中した。

 やがて自分が作るハーケンへの需要が高まってきたので、ヴェントゥーラに波形トタンの小屋を借り、鍛冶屋仕事の助手を数人と、販売担当者と、経理係を雇い、小さな会社を設立した。

 まもなく、ロッククライミング用のシャツを手始めに、事業をアパレル関係にまで広げていき、会社は大きく成長していった。しかし、どんなに大きくなっても、ある鉄則がしっかりと守られていた。作業小屋から数百メートルの海の波がサーフィンに絶好の状況の時には、即座に仕事を中止してサーフィンを楽しむという鉄則だった。つまり、その創業時から「仕事と遊びの区別も、勤労時間と余暇の区別も、心と体の区別も、教育と娯楽の区別も、はっきりとはつけない」経営形態だったのだ。

 パタゴニアは1970年には、アメリカ最大の、しかもたいへん特異な、登山用品メーカーに成長していた。その「特異」ぶりは次のようだ。

 従業員2100人、年間売上高25000万ドル(225億円)。毎年この売上の1%を環境団体に寄付している。ここ20年でその総額は2000万ドル(18億円)に達している。

 本社のランチル一ムはオーガニックレストランになっていて、メニュ一には豆腐サラダや、インド式ミルクティーや、8種類の全粒粉パンが並び、壁には「コンドルを救え」のポスターが貼ってある。遇に4日、ランチタイムに会社主催のヨガやピラテスの講習会があり、ときにはフライフィッシングやナイフ研ぎの講習も開かれる。

 毎年40人の従業員が2カ月の有給休暇をとって、自由に選んだ環境団体に研修に行くことを許される。イエローストーン公園でバッファローの保護活動をした人もいれば、グアテマラで熱帯林の保存活動をした人もいる。

 ハイブリッドカーを買ったり、車の燃料を、マクドナルドのフライドポテトに使った油など、料理用油のリサィクル品に替えたりした従業員には、会社から2500ドル(225000円)の補助金が出る。本社の駐車場でいちばんいい場所は最も燃費のいい車に割り当てられる。

 駐車場の10カ所以上には支柱が据えられて、ソーラーパネルが取り付けられている。パタゴニア本館一棟分の電気は、すべてこれでまかなわれている。

 社の基本方針声明に言う。
「最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える」
 このモットーが生かされた製品が開発されている。パタゴニアオリジナルのシンチラフリース・ベストは、ペットボトルをリサイクルして作られる。殺虫剤を使わず、したがって環境にやさしいオーガニックコットンだけを使用している数少ないアパレルメーカーの1つでもある。

 鳩山首相がぶち上げたCO225%削減にたいして、財界は経営が成り立たなくなると猛烈に反対しているようだ。戦時中、生活物資の不足に苦しむ庶民を恫喝(あるいは励ます意味だったかもしれない)するような標語があった。「たらぬたらぬは工夫がたらぬ」。この標語を財界に進呈したいものだ。

 さて、パタゴニアの「特異」さはまだまだある。年に6回ほど著名な講演者を招き、環境問題や登山・サーフィンなどスポ一ツを演題にした講演会が開催されている。

 本社では、2階に通じる階段の下に20本のサーフボ一ドが詰め込まれている。裸足で仕事をしても咎める者はいない。パタゴニアの研修部長ルー・セトニッカは言う。
「会社に入っても、あくまで自分らしくあってほしいですからね。」

 ヴェントゥーラには50万ドル(4500万円)をかけて新入社員用の住宅を借り上げているが、この地域に家を持てない新規採用者のために、社宅として庭付きのアパートメントを建てる計画もある。

 「特異中の特異」とも言うべき事業がある。驚くなかれ、環境問題の抗議運動に参加したい従業員には「市民的不服従」のトレーニングを受けさせ、従業員がそういう平和的な抗議活動で逮捕された場合は保釈金を払う約束になっているのだ。

 なんと魅力的な企業ではないか。パタゴニアの従業員に1人欠員が出ると、900人からの応募があるという。
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