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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
企業経営の社会主義化(14)
アウトドア衣料会社パタゴニアの場合(1)


 パタゴニアは他に類を見ない特異な会社だ。完全なフレックスタイム制を取っている。そして、従業員には仕事だけでなく、遊びにも仕事と同じくらいまじめに取り組ませているという。例えば、従業員はランチタイムを次のように過ごしている。

 毎日のように、ランチタイムになると、デザィナーも、販売担当者も、情報技術者も、受付係までが2時間サ一フィンに興じ、何人かは太平洋を見渡す丘の43キロの自転車100分間コースを走る。そのほか大勢の従業員が7、8キロのジョギングをし、少数ながらカヤックを操る人もいる。

 汗まみれのサイクリングシャツの一枚は、アンディ・ウェリングのものだった。カリフォルニア州ロサンゼルスのダウンタウンから北西に100キロ近く行った、ヴェントゥ一ラのパタゴニア本社に勤める営業部長である。ランチタイムのサイクリングから戻ってシャワ一を浴びたばかりのウェリングは、頬を紅潮させていた。41歳、体を鍛えることに熱心な彼は、週のうち3、4日はランチタイムに自転車を漕ぎ、毎週開かれる寄せ集めサッカー試合にも出場する。サイクリングのために昼休みを2時間とる日は、その分の遅れを取り戻すために、家で数時間仕事をすることも少なくない。

「ほかの会社で働けば、今よりかなり収入はいいだろうけど、サイクリングやサ一フィンで生活の質も体型も保てることを考えれば、収入の差なんて問題じゃない」
とウェリングは言う。

 完全フレックス制だから、長期休暇も取ることができる。「11回もフリスビーの世界チャンピオンになった本社の受付係など、サーフィンスクール運営のために、毎年夏には3ヶ月の休みをとるほどだ。」

 パタゴニアの創業者で筆頭オーナーのイヴォン・シュイナードさん自身が率先して長期休暇を楽しんでいる。シュイナードさんは長年にわたり、一度に6カ月も会社を留守にして、アルプスでアイスクライミングを楽しんだり、南太平洋でフィッシングに興じたり、南アメリカでサーフィンや山登りなどと、世界中を遊び回っているという。シュイナードさんはご自身の人生哲学と会社の経営方針を次のように語っている。

「(創業当時)ビジネスマンになりたい人間は一人もいなかったので、仕事と遊びの境をなんとなくあいまいにしておきたかったんですよ。毎日背中を丸めて仕事ばかりしている生活なんて、真っ平だった。階段を二段ずつ駆け上がっていきたかった。そうなると、ビジネスのルールはあらかた破ることになる。そしてそうなると、フレックスタイム制にするしかない。と、こういうことだったんです」

 人事管理の理念を説明するのに、シュイナードはしばしば19世紀フランスの文学者フランソワ=ルネ・ドゥ・シャトーブリアンの言葉を引用する。

「人生の達人は仕事と遊びの区別も、勤労時間と余暇の区別も、心と体の区別も、教育と娯楽の区別も、はっきりとはつけないものだ。本人にもどちらがどちらともわからない。ただ、なんであれそのときしていることを通してひたすら至高の状態を追い求め、働いているのか遊んでいるのかの判断は人に任せるのである」

 大方の企業経営者は根底において、労働者は強い規制と監視を怠れば怠けるのもだ、というような貧しい人間理解のもとで会社経営を行っているように思われる。パタゴニアのような完全なフレックスタイム制には仰天し、これでは会社は成り立たないと考えるに違いない。また、オーナーが6ヶ月も会社を留守にすることなども全く理解できないだろう。

 そのころ(創業のころ)シュイナードは自身の経営哲学を、冗談まじりに「MBA」と称していた。経営学修士のことではない、マネジメント・バイ・アブセンスの略、つまり「不在による経営」ということだ。

 従業員を信頼し、自分が留守のあいだも、もちろんサーフィンをしながら、きちんと仕事をやってくれると信じていたのだ。

 自伝『社員をサーフィンに行かせよう』のなかでシュイナードは、もしビジネスマンになるのなら、古い慣習を打破するビジネスマンになるつもりだったと語っている。

「通常のビジネスル一ルを守っていたら、絶対に幸せにはなれないこともわかっていた。航空会社の雑誌広告で見かける、スーツに身を包んだ死人のような人たちからは、できるだけ遠い存在になりたかった。もしどうしてもビジネスマンにならなければならないのなら、自分のやりたいようにやるビジネスマンになろうと思った」

シュイナードには、パタゴニアの従業員に確実に仕事をさせ、他に類を見ないフレックスタイム制を悪用させない(と本人の言う〉簡潔な経営哲学がある。

「信頼できる人間を雇うこと。自分の仕事に情熱を持ち、自分が今していることに情熱を持つ人間を雇うこと。それができれば、あとは放っておいても、彼らがちゃんと仕事をしてくれます」

 人事担当副社長のシャノン・エリスは、パタゴニア独特のフレックスタイム制が生産性に悪影響を及ぼすことはないと言う。

「むしろ頭をすっきりさせる効果があるんです。従業員の多くが、ここのやり方がどんなにユニークか認識していますから、それを危うくするような真似をするつもりはないでしょうね。みんなわかっているんです。ランチタイムにサ一フィンに行くぞ、だけど、もし何かへマをやってここにいられなくなったら、もう二度とこんなことはできないだろうなって。これは自分で管理しなくてはならないニンジンなんです。そこを大事にしないと、結局また別の企業で働くことになってしまう。みんな別のところで働いた経験を持っていますから、もう戻りたくないって、そう思っているんです」

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