2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
企業経営の社会主義化(9)
介護会社コーポラティヴ・ホームケア・アソーシエイツの場合(2)



 コ一ポラティヴの会長サーピンがこの会社を興したのは1985年、ナーシングホームに代わるものについて論文を書いたあとだった。70年代にニューヨーク市のナーシングホームがひどい状況にあることが次々とあきらかになり、それに発奮して書いた論文だった。

スペインのバスク地方で従業員がオーナーの協同組合が成功しているという話に刺激を受けたサーピンは、従来の営利または非営利の訪問介護サービス組織とは違う、従業員がオーナーでもある訪問介護サービス協同組合をつくることを思いついた。

「営利でも非営利でも、従業員の扱いがよくないことに変わりはないことに気づいたんですよ。営利事業者は利益を上げるために、また非営利組織の場合は、彼らにとって労働が問題ではなく、利用者やプロのスタッフのほうがずっと大事だから、従業員の待遇が悪かったんですね」

 従業員がオ一ナーという介護サービス業界では珍しいこの会社は、多くの職場研究の専門家や介護のプロたちから、全国の低賃金労働者のモデルとして注目を浴びている。

 コーポラティヴの取締役会の役員12名のうち8名が従業員である。つまり従業員がみずからの賃金や福利厚生やボ一ナスを決定する最終的な発言権を持っているというわけだ。このことについて、会長のサーピンは次のように述べている。

「経済関係の資料などを読むと、労働者は本来愚かで利己的だという説があるようですが、ここではそんなことはまったくありませんでした。彼らが下してきた決定を見れば、彼らが一貫して、会社が生き残れるよう、今後もよりよい賃金と福利厚生を提供できる力を蓄えるようにと気遣っていることがよくわかります」

 コーポラティヴの代表取締役マイケル・エルサスも次のように会社の経営哲学を述べている。
「従業員はわれわれのあらゆる活動の中心です。ほかのことはすべてそのまわりを回っているだけです」

 コーポラティヴでは従業員が取締役会の実権を握っているので、従業員の福祉についても最善の策が考えられている。

 コーポラティヴでは、低金利のローンや一部給付奨学金を提供して、ヘルパーたちがたとえば看護師や呼吸療法士になるための教育を受けられるようにしている。

 幼い子供を抱えたヘルパーが、託児のトラブルのため約束の時間に利用者の家に到着できなかったような場合でも、会社はほかの業者のようにすぐに解雇したりはしない。また同じことが起こらないように、カウンセラーがいっしょになって子供を預かってくれるところを探すのだ。

 またコーポラティヴが頻繁に実施するちょっとしたプログラムも、従業員にとってはありがたい。従業員だけではなく、従業員と子供のためのクリスマスパーティもある。職場の仲間意識を育て、会社を単なる働く場所以上のものにするために、毎年船遊びや、何十人ものヘルパーたちが集まって映画やビンゴやダンスや工芸を楽しむ「ファンフライデー」も催される。

「前に働いていた会社では、連帯感なんて感じたことはなかったし、自分はお給料をもらって利用者のところへ出向くただの従業員としか思ったことがなかった。でも、ここでは、みんな家族みたいなんです。気分よく過ごせるいろいろな仕組みがある。悩み事があっても、いつでも相談できる相手もいるし」
とコーポラティヴに勤めて4年のザブリナ・ホリーは言った。

 コーポラティヴでは、従業員の話を聞くことも経営者の責任の一つだ。もう13年コーポラティヴに勤めているヴィヴィアン・キャリオンは言う。
「ここでは怖いものがないから、言いたいことが言える。誰も賛成してくれないようなことを言っても、そのことで非難されたりはしません。発言権があるって、そういうことでしょ? ちゃんと尊重してくれるんです。ここに来るまでいろいろなところで働いたけど、経営側はあちら、従業員はこちらって、はっきり分かれているところが多かった。間に壁をつくってしまうことが多かったけど、ここでは行き来は自由。壁なんてありません」

 コ一ポラティヴが営利事業者より高い賃金が出せる理由が三つある。一つは、一般の営利企業では、総収入の5%から8%がオーナーの利益となっている。コーポラティヴの場合は、その分をほとんど賃金につぎ込むことができる。

 二つ目。これはコストコの場合もそうであったが、患者(顧客)も従業員も大事にする経営方針がコーポラティヴの移動率をほかより断然低くしている。これは研修予算を低く抑えるのに役立っている。

 三つ目。コーポラティヴに所属している訪問介護ヘルパーは1100人で、そのうちの99%が女性である。そして、そのほぼ全員がヒスパニック系かアフリカ系アメリカ人で、70%が福祉の援助を受けた過去を持っているという。福祉の援助から抜け出す従業員が非常に多いため、研修費としてさまざまな政府補助を受けることができ、賃金に回す資金をさらに増やすことが可能になっている。

 コーポラティヴもすべてが完璧ではないと初めて声を上げたのは、マルガリータ・ピロットだろう。自分たちで選んだ取締役ではあるけれど、昇給や年末ボーナスに関して、あまりに財布の紐が固すぎるとこぼす従業員は多い。

「もっとお給料を上げてもらいたいって切実に思います。アパートメントの家賃に700ドル(63000円)払わなきゃならないから、ほんとに苦しいんですよ」
と時給8ドル25セント(約740円)のマルガリ一夕は言う。

 州政府からの払戻率が据え置かれて、特に厳しい運営を余儀なくされた5年間、取締役会は賃上げゼロの決定を下した。このゼロ回答に従業員の怒りは爆発したが、その怒りが鎮まるきっかけになったのは、取締役会の従業員オーナーも昇給ゼロだとわかったことだった。

 もう長く取締役をやっているジョアン・ポーは言う。
「従業員オーナーになったら、従業員オーナーとはどういうものかを理解しないといけない。いいことも、よくないことも、みんなで分かち合うってことですから」

 この会社は企業というよりむしろ共生・相互扶助を旨とするコンミューン型の共同体のようではないか。
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この記事へのコメント
sinjikeito21
・率直なご意見を、拾い読み致しました。以下小生の意見です。
・既説、全て社会課題です。
・此処に、今、視点を立てます。
 それは、「必要な事がその人自身に認識される」と言う事です。
・拠って、社会課題に対して必要なら、真理(存在意義)を反照(真智の真化・善化・美化)すれば良い。
・例えば、現科学農業→自然農法(自然に沿うので超科学農法)・故人で福岡正信、現在川口由一等です。
・また、見に参ります、ご自愛を。
     ありがとうございます。
H21.11.5 am 1:53
2009/11/05(木) 01:53 | URL | sinjikeito21 #-[ 編集]
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