2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
企業経営の社会主義化(3) 小売企業コスコトの場合(2)

 労働者を最大限搾取しようと競っているような新自由主義信奉者にはシネガルが従業員を優遇することが理解できないらしい。そこで「ローマカトリック教徒の家庭で育ったからではないか」などと信仰心にその理由を求める者もいるという。これに対してシネガルは次のように応じている。

「われわれは貧民救護修道女会じゃない。他人のためなんかじゃなく、ただうまみのある商売をしているってだけですよ」

 コストコを立ち上げたとき、シネガルは、こんな低価格は低賃金で労働者を搾取しないかぎり実現できないのではないかと、顧客に疑われるのが心配だった。そこで、コストコのビジネスモデルをつくり上げるのに、従業員には国内の総合小売企業のどこよりも高い賃金を設定することに決めた。それによって労働者を搾取していると客に疑われずにすむだけでなく、確実に熱気ある生産性の高い職場になるはずだと信じていた。

 シネガルは株主より従業員や顧客が優先されるのは当たり前だと考えている。コストコ社員のハンドブックの冒頭にその考えがはっきりと書かれている。

「私たちは任務を果たすため、次のような倫理規定を胸に業務に励みます。
①法を守る。 ②会員様を大事にする。
③従業員を大事にする。
④仕入れ先を尊重する。
 全社を挙げてこの四項目を実践すれば、私たちの最終目標は達成できるでしょう。最終目標とは、
⑤株主に報いる、
ことです」

 企業経営のことなど全く知らない私にとって、次々と意外なことが明らかにされる。

 従業員に十分な給与を与える戦略が、実は経費の節減になっている。なぜだろうか。

その一 従業員の教育費削減につながる。

 アメリカでは毎年、小売企業に勤める労働者の60%が辞めていく。つまり、平均的な労働者は1年半をわずかに上回るほどしか勤めないという。これはたぶん日本でも大差がないのではないだろうか。
 しかしコストコでは、移動率は20%で、平均的な従業員は5年勤める。一年以上勤める従業員だけを見ると、移動率は6%に落ち、平均勤続年数は17年近くになる。

 新規採用者を使える従業員にするために行われる教育には、従業員一人当たり2500ドル(255000円)かかると言われている。(従業員の教育費がこんなにかかるとは、企業内事情に全く疎い私には、にわかに信じられない。)移動率の低いコストコは大変な節約ができることになる。その分を価格下げに回して、顧客に還元している。

 ウォルマートではどうか。主として賃金や福利厚生が少ないことから、移動率は毎年50%前後になる。その結果、国内の店だけで毎年60万の従業員を雇い入れて教育しなければならい。その費用は1年に10億ドル(900億円)を超えるという。

その二 内部窃盗率の低下

 手厚い給与と福利厚生は、即、優れた顧客サービスを提供するよく働く忠実な労働力を生むというのも、シネガルの信念である。そしてその忠実さが内部窃盗率の低下につながっているという。コストコの内部窃盗率は売上の0.1%で、小売業界でも一、二を争うという。業界の平均内部窃盗率はその15倍だっそうだ。

 その高賃金ゆえに、コストコの求人には大勢の応募者が押し寄せ、倍率はたいてい15倍ほどになる。
「入りにくく、辞めにくい、そういう会社です」
とコストコ経営幹部のジョエル・ベノリールは言った。
「コストコでは、もらっている分だけちゃんと働こうと、みんな実によく働きます。厳しい勤労モラルも浸透している。われわれは従業員に言うんです。長く、懸命に、きびきび働け、三つのうちどれか一つでも抜けたらだめだ、とね」

 コストコの2007年の総売上は640億ドル(5兆7600億円)に対して利益は2億ドル(180億円)しかない。ウォール街のアナリストたちは、コストコの従業員の待遇をもっと厳しいものにしたり、価格をほんの少しずつ上げていけいったりして利益を増やすよう、しつこく勧めるそうだ。だがセネガルの信念は揺るがない。

 商品の低価格と品揃えのよさ、さらに従業員の働きぶり、これらがコストコに顧客を引きつけている。すでに2500万人の個人会員(会費50ドル)と500万の小規模法人会員(会費100ドル)が加入しているという。
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