2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。

508 吉本隆明の「ユートピア論」(7)
閉じた「ユートピア」
2006年5月24日(水)


 この山岸会会員の話から、私はすぐ「待遇のいい監獄」というイメージを思い浮かべた。

 吉本さんは根本的な特色を2点取り出している。

(1)
『管理組織の首脳がこのユートピアの成立のために会員の等価労働など求めておらず、自己財産かまたは別途利潤を用いていることだ。山岸会の場合、養鶏と卵の販売などが伝わっている。』

 私は「山岸会」という組織があることは知っていたが、その内容については全く知らなかった。インターネットで調べてみたが、なんと山岸会の生産物(たぶん農業の)の年間売り上げは240億円(1991年度)とあった。
 また会員からの財産提供もあるようだ。1996年に「総額2億6000万円余りの財産返還を求める裁判」を提訴した人がいる。

(2)
『労働作業を求めても、欲求を充たしても、会員がそれを方法として習熟し、自分がいつでも組織首脳やその下僚にとって代わる主体的可能性を教えることはない(係りと欲求会員の完全な分離)。』

 山岸会はその組織についての理念を次のように述べているが、その理念は実行されていないことになる。

『会の組織といっても、同じ目的を持った会員同士が自発的に活動を行い、一人でやってもよいのですが、個々別々にやっても効果が薄いから、提携したり協力したり、互いの異なる考えを忌憚なく話し合って(研鑽)一致点を見いだしながら活動を行う上意下達的な組織ではありません。
 ですから本部といっても、意志決定機関ではなく、会員間の意見調整のための連絡機関であったり、個々の実践活動を支援するための世話をする補助的な実務機関であるという性格をもっています。』

 『一般社会に囲まれた閉ユートピア』は山岸会のような方法以外では成立しない、と吉本さんは指摘している。


 欲求はどんなものも叶うが、自分が金銭を手にしてその欲求を遂げることはできない(しない)。それはユートピアの外界を見聞させて、その汚れに染まらせたくないからではない。「役割」を分担させたいからだ。そういうことになる。この「分離」は、外側の一般社会を雑種社会とみなしその内側に「ユートピア」とみなした「社会」や「国家」を作ろうとするすべての管理システムを含む「社会」に当てはまる。
 けれどはじめから一般社会から閉じられた「ユートピア」は成り立たない。それはレーニンのロシア革命のように主宰者主権(集団)の利益を最優先する反ユートピアに終わるほか理路がないからだ。レーニンをはじめロシア共産党の成員が個人利益を優先する弱さをもっていたからではない。つまり人間とはそんなものだからではない。理念とその遂行にはじめから誤りがあったからだ。

 これは深刻な問題を提起する。何となればわたしの考察ではこの山岸会の方式は、現在あらゆる管理社会(「国家」)、部分社会のモデルになっていることがすぐにわかったからだ。大は「国家」(「社会」)から小は思考、宗教、教育の自由化、ユートピア化にいたるまで、大なり小なりこの方式の模倣だといえる。
 例えば管理首脳が下僚を意のままに動かせる「鉛の兵隊」に仕立てれば、すぐにファシズムやスターリン主義に変貌するし、嘘と競争とを激化すれば資本主義の政治に変貌する。これを防ぐ方法は管理制度を変える以外にない。



 「資本主義の政治」を「嘘と競争との激化」というのは、ずばり、核心をとらえていて面白い。

 山岸会では独自の教育機関(学校)も設立している。しかし、これについても「児童生徒への虐待の事実」があり「子どもの人権侵害」が問題にされているようだ。
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