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《「真説・古代史」拾遺編》(85)

地名奪還大作戦(13):天香具山=大分県鶴見岳(1)


(今回の資料は講演録『国見の歌』です。)

『万葉集』巻一の2番歌は、その詞書では、息長足日広額(おきながたらしひひろぬか 舒明天皇)が香具山に登って国見をしたときの歌とされている。

大和(やまと)には 群山(むらやま)あれど とりよろふ 天の香具山 登り立ち 国見をすれば 国原(くにはら)は 煙(けぶり)立ち立つ 海原(うなはら)は 鴎(かまめ)立ち立つ うまし国ぞ 蜻蛉島(あきづしま) 大和の国は

 まず「定説」の頭注を読んでおこう。

舒明天皇の皇居について
 奈良県高市郡明日香村雷の東の地という。
香具山について
大奈良県磯城郡香久山村(現在、桜井市)にある。大和三山の一。

<語句の意味>について
○群山あれと―多くの山々があるが。
○とりよろふ―ヨロフは都に近くある意。
○天の香具山登り立ち―大和には多くの美しい山々があるが、中でも都に寄りそっている天の香具山、その香具山に登り立っての意。香具山は天から降った山だという伝説があったのでアマノカグヤマという。
○国原―大和平野。
〇かまめ―水鳥の一種。
〇うまし国そ―よい国である。
〇あきづしま―枕詞。大和にかかる。

 「定説」によるこの歌の解釈(訓読みの妥当性も含めて)にはおかしいことがたくさんある。まず、香具山を「大和三山の一つ」としていることを取り上げよう。古田さんは「香具山・畝傍山・耳成山」は「飛鳥三山」と呼ぶべきであり、「大和三山」というのは別の組み合わせになると言う。本題とは直接関係のない問題だが、おもしろいので、ちょっと長~い寄り道をしよう。(この問題についての参考資料は講演録『大和三山の歌』です。)

『万葉集』 巻一 第13歌・14歌
中大兄近江宮に天の下知らしめし天皇の三山の歌
香具山は 畝傍雄々しと 耳梨と 相あらそいき 神代より斯(か)くなるらし 古昔(いにしへ)も 然(しか)にあれこそ うつせみも 嬬(つま)を争うらしき
  反歌
香具山と耳梨山とあひし時立ちて見に来(こ)し印南国原(いなみくにはら)


 畝傍山をめぐって、香具山と耳梨山が争ったという説話を下敷きにした歌だ。(上の訓読では畝傍山を男に見たてているが、畝傍山を女とする説もある。その場合は「雄々し(原文は〔雄男志〕」を「愛し」あるいは「惜し」と訓読している。)

 反歌の意味が分かりにくい。「岩波」は次のように訳している。
「香具山と耳梨山とが争った時に、阿菩(あぼ)の大神が立って見に来た印南国原はここなのだなあ」  いきなり「阿菩の大神」という聞き慣れない神が出てきたが、くだんの説話(播磨風土記)を読んでおこう。

上岡の里 元は林田の里なり土は中の下なり。出雲の國の阿菩の大、大和の國の畝火・香山・耳成、三つの山相闘うと聞かして、此を諌め止(や)めむと欲(おもほ)して、上り來ましし時、此處に到りて、乃ち闘い止みぬと聞かし、其の乗らせる船を覆(ふ)せて、坐(いま)しき。故、神阜(かみおか)と號(なづ)く。阜(おか)の形、覆せたるに似たり。

 この説話によると、阿菩の大神が、仲裁に行こうと思ったが、争いが終わっていたというのだから、三山の三角関係は決着が着いているはずだ。しかし、香具山と耳梨山のどちらが勝ったのは分からない。

 三山の恋争いの伝承はほかにもある。古田さんは2例紹介している。

1 大分県
鶴見岳と由布岳という山があり、その下に離れて祖母岳(もしくは久住山)がある。この三山が争う説話で、結論は祖母岳が負けて、すごすごと現在の位置に逃げていった、というお話。鶴見岳と由布岳は近くにあって、仲むつまじいが、祖母岳はこの二山からは離れたところで寂しくしている、というわけだ。

2 岩手県
 ここでは岩手山、姫神山、早池峰山の三山がもめている。岩手山と姫神山が夫婦だったが、岩手山が横暴で、何かにつけて姫神山が気に入らず、姫神山を追い出してしまう。姫神山は泣く泣くずっと南の方にある早池峰山のところへ逃げていって泣きついた。それを聞いて怒った岩手山は、けしからんと怒鳴り込んで、姫神山を取り返した。いまは岩手山と姫神山は東西に並んでいて、仲むつまじい。早池峰山は岩手山や姫神山から遠く離れてたところで、寂しくしている。

 つまり、三山争いの説話は、一山が遠くにあって初めて説話が出来る。飛鳥三山(畝傍山・耳成山・香具山)は三山とも近すぎて、決着が付いていないことになる。また、このこぢんまりと固まった狭い地域を「大和」と言うのは大げさだ。説話が言う大和三山は「畝傍山・耳成山・香具山」ではない。

飛鳥三山(クリックすると大きくなります。)
(上から見ると飛鳥三山はほとんど正三角形を作っている。)
飛鳥三山
「行雲流水」さんから拝借しました。無断使用、ごめんなさい。)

   古田さんは、原文と比べて、「定説」が無理な訓読をしていることに大きな不審を抱く。冒頭の「香具山は」の原文は「高山波」であり、反歌の第一句「香具山と」の原文は「高山与」である。「高山」を「香具山」と訓読できるのか。これは無茶だ。

 そこで古田さんは『万葉集』原文の中の「高山」を全て調べる。「高山」が合計22個。その中で「高山」という字を「香具山」と読んでいるのはこの二つの例だけである。後は全部、高山は「高山」。第13歌・14歌の高山も「高山」と読むべきである。それはごく常識的な判断だ。では「高山」とはどこの山か。
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