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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《「真説・古代史」拾遺編》(82)

地名奪還大作戦(10):淡海の海=博多湾内?(2)


 「淡海の海」は琵琶湖ではないことがはっきりしたが、ではそれはどこの海なのだろうか。いろいろな仮説が出されている。


 最初に問題提起をされた木村さんは、万葉集の中の、「おふみ」・「ちどり」「いさなとる」を含む全ての歌を調べて、「淡海の海」が琵琶湖ではあり得ないことを確認している。そしてその海は博多湾近辺の海ではないかとしているが、はっきりとした論証はない。新庄さんもこの説を論じている。


 古田さんは『和名抄』にある邑美(おふみ)に着目して、鳥取県を候補とし、「いにしえ思ほゆ」を倭国誕生(大国の国譲り)から倭国の滅亡までの回想という壮大な解釈をしている。しかし、後に阿波近海と考えを変えているという。(この説の論文を読んだことがないので、その根拠は不明です。)


 西村秀己・水野孝夫さんは『倭姫命世記』に見える「淡海浦」の地勢記事を根拠に、熊本県八代市の球磨川河口付近という説を提示している。


 梨田鏡さん「會見の海」(鳥取県美保湾)を候補地をとしている。(この説の論文も読んだことがないので、その根拠は不明です。)

 これらいずれの説も決め手に欠けているようだ。表題に「?」を付けたのはそれが理由でした。しかし私は、1の「博多湾内」説が妥当だと考えている。そこで新庄さんの論証を検討しようと思ったが、今回も新庄さんの論証には飛躍や論証なしの断定が多々あった。特に『万葉集』の中の歌を用いた論証にその傾向が強い。その瑕疵を修復できないかと、いろいろ調べているうちに数日が過ぎてしまった。『万葉集』の中には「淡海の海」と言う表記を持つ歌は8例あるが、その海がどこかを比定できる歌はないようだ。しかし、新庄さんが提示している『古事記』の記事による論証は有効だと思われる。それを分析してみよう。

 淡路島の多賀に、伊弉諾命が祀られていると聞きます。これまで、関西の淡路島と混同してきたようですが、やはり伊弉諾命は発祥の地、博多湾内能古島が本拠であり、『古事記』真福寺本には「淡海の多賀」となっている由。今、滋賀県にある有名な「お多賀さん」は、大和政権の手によって移動させられたものでありましょう。

 『記紀』の国生み神話で最初に登場するのが「淡道之穗之狹別(あわじのほのさわけ)嶋」(『日本書紀』では「淡路洲」)。これに兵庫県のあの島に比定して、ヤマト王権はその島名を「淡路島」とした。それ以前はなんと呼ばれていたのだろうか。

 『古事記』の「須佐之男命の涕泣」の段の最後に「故(かれ)、その伊邪那岐大神は、淡海の多賀に坐(ま)すなり。」とある。「淡海」では淡路島(兵庫県)は該当しない。そこで「定説」(というよりヤマト王権が)はこの「淡海」を近江としている。近江の多賀大社に伊邪那岐・伊邪那美が祀られている。

 『日本書紀』では「是を以って幽宮(かくれみや)を淡路の洲(くに)に構(つ)りて、寂然(しずか)に長く隠れましき。」(6段)とある。この『日本書紀』の記事を受けて、淡路島(淡路市多賀)に伊弉諾命神宮(「伊弉諾命」は『日本書紀』での表記)が設けられたのだろう。『日本書紀』にはその場所は淡路のどことも書いてないのに、なぜか、「多賀」なのだ。「多賀」という地名が先にあったのか後から地名を付けたのか分からないが、神名は『日本書紀』の表記に従っているのに、『古事記』の記事と整合性をもたせようと苦心したのだろう。

 『「古事記」対「日本書紀」』 で確認したように、『記・紀』の史料性格から、「古事記」と「日本書紀」の内容が異なる場合は「古事記」の方を正とするのが妥当である。しかし、いま扱っている問題では、どちらをとっても同じである。「地名奪還大作戦(1)」でみたように、謡曲『淡路』が描く初源の国生み神話では、国生みの舞台は「淡路島=能古島」であった。伊邪那岐命・伊邪那美命を祀る神社は全国中にあるが、伊邪那岐命・伊邪那美命を祀るのには博多湾周辺こそふさわしい。つまり、『古事記』が言う「淡海の多賀」の「淡海」とは博多湾周辺のことである。難波の海(博多)から志賀島に至る湾内の海が「淡海の海」。そして、この淡海を舟が行き来する道を「淡路」というのであろう。なお、福岡市南区に多賀という地名がある。
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