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《「真説・古代史」拾遺編》(36)

壬申の乱(8):「壬申紀」も改ざん記事だった。


 古田さんの『壬申大乱』は2001年のに出版されている。それまでは古田さんは「壬申の乱」を正面から扱ったことがなかった。そのことを古田さんは「うっかり壬申の乱に手を出すと大やけどする。やばい!。警戒心を深くずっと持っていた」と言っている。そしてその理由を二つあげている。

 一つは『日本書紀』天武紀の壬申の乱の記事が異常に詳しい。何月何日どういう行動をした。日記みたいに詳しく書いてある。あれは歴史を書く人間に非常に有り難い。それに基づいて書いておられる歴史家や、また小説家もおられる。しかし私の目から見ると、全部『日本書紀』が日記みたいに詳しく書いてあれば良いが。また全部とは言いませんが、天武紀や持統紀が全部日記で詳しく書いてあれば良いのですが、壬申の乱だけが異常に詳しいと思いませんか。壬申の乱だけが異常に詳しい。私はそのように感じた。そういうことは壬申の乱だけ、何か別史料をはめ込んだような違和感を覚えた。うっかりそれをまともに信用して扱うと大やけどする。史料を扱う人間の警戒心。私はそのような人間の警戒心を拭ぬぐうことは出来なかった。これが第一の理由です。

 もう一つ、第二の理由はもっと大きな理由です。白村江で敗れて、郭務悰(かくむそう)が唐の軍隊を連れてきた。郭務悰以外の人も来ていますが、二千人、二千人と書いてある。・・・二回二千人来ている。少なくとも四千人筑紫に来ている。そうすると『日本書紀』ように壬申の乱が、近江と大和吉野と美濃の三角地帯で行われたとします。そこで天下の中心権力が一変した。革命か維新かは知りませんけれども日本の中心権力が一変した。そうするとその時唐の軍隊は何をしていたのか。何をとぼけていたのか。



 このように考えていた古田さんが壬申の乱に本格的に着手したきっかけが二つある。一つは、持統の31回にわたる吉野行きが大嘘であることが分かったこと。持統の吉野行きは単なる個人的な趣味といった意味しか持たない。歴史の記録としては無意味な記録だ。元の記録そのものは、九州王朝の天子の吉野閲兵という重要な歴史的な記録であった。それを盗用して、なぜあんな大嘘をはめ込む必要があったのだろうか。

 「偽装・壬申の乱」では大海人皇子(天武)は妃(後の持統)を伴って吉野に行っている。天武の吉野行きは「持統紀」の吉野行きの原点に当たっている。「持統紀」の吉野行きが大嘘ならば、天武の吉野行きも眉唾ものと考えるのが自然だ。それでは天武の吉野行きは一体何なのだろうか。

 もう一つは三森堯司氏の論文『馬から見た壬申の乱─騎兵の体験から「壬申紀」への疑問─』(1979年発表)との出会いであった。三森氏は上海派遣戦闘指令部所属騎兵部隊で実際に騎馬行軍の経験豊富で、馬の能力についても確かな知識をもっている方だ。その論文での三森氏の分析結果を、古田さんは『壬申大乱』で丹念にたどっているが、ここでは結論だけを紹介する。

 古田さんは「壬申紀」から馬に関する記事を抜き出しているが、実に27例もある。「壬申の乱」は騎馬軍を使っての戦いが主戦だった。三森氏は、「壬申紀」に出てくる騎馬による行軍の「経過と距離と時間」を克明に調べ上げて「壬申の乱での乗馬による踏破行路は、古代馬のみならず品種改良された強靱な現代の馬でも困難である」と結論している。つまり、壬申の乱での天武等の行動記事は虚構だったことが科学的に証明されたのだ。この三森論文の出現により、『日本書紀』を下敷きに書かれた「壬申の乱」についての従来の全ての論説が反古になったことになる。しかし、三森氏のこの重要論文も無視されている。大和一元主義者たちはいまだに「壬申紀」を下敷きにした論文を得々として書き続けている。

 以上の二つの根拠から、古田さんは、「壬申の乱」の舞台も、「大和の吉野」ではなく「肥前の吉野」であるとの確証を得て、「壬申の乱」の全体像の見直しを行うにいたった。その結果、従来の近畿を中心として理解されてきた「壬申の乱」のスケールは拡大され、九州と近畿を含む「壬申の大乱」であったとする真説が解明された。著書名を『壬申乱』としたゆえんである。次回から「真説・壬申大乱」の論証を読み進めることになる。

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