2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
権力と反権力の現在(11)

「連帯」の構想・まとめ


 前回までで明らかにされた「連帯」の構想を、社会的国家あるいは政治的国家の権力掌握を構想の中に含む度合いに焦点を当ててまとめると次のようになる。

1 ワレサの構想
 〈連帯〉の運動を国家、党、企業管理者から独立した労働組合運動の連合体に限定し、政治的にはもちろん、生産社会機構としての国家の権力を掌握しようとする意図はまったくない。

2 クーロンの構想
 〈連帯〉の運動を、労働、社会、文化の総合的な領域で国家、党、管理者層と独立に、これと対抗しうる権力、あるいは共同管理形式の対立する一方の勢力たらしめるための機構の創設を目指そうとしている。

3 ビピフとシュライフェルの構想
 〈連帯〉の運動に組織された労働者層を、国家権力の所有者にまで普遍化しようとする政治革命の構想をもっていた。

 これらの構想はさまざまの差異をはらみながら、不安定な流動のうちに均衡を求めつつあったといえよう。

 1981年年10月7日に採択された〈連帯〉の綱領のなかでは、自主管理労働組合である〈連帯〉は、1980年のストライキ運動のなかから生れたポーランド史上初の大衆運動で、30年のあいだに経験した人権、市民権に対する侵害、イデオロギー上の差別、経済的搾取にたいする怒りから生まれ、現存権力形態への抵抗だと規定している。それと同時に広義の〈連帯〉の概念も同在していて〈連帯〉は学生、青年、労働者の人間性をもとめる戦いのなかから生まれた労働組合と、社会運動とを統合する組織で、ポーランド再生の推進力であり、多くの社会的傾向、政治的信条の結合でもある、とも述べられている。〈連帯〉が行動方針として綱領のなかでうちだした項目のうち、とくに大切なのはつぎのいくつかであった。

1  すべての企業で労働者による自主管理と民主的改革を求める。

 危機打開と経済改革は、社会の管理下で実行されなければならない。

 法的、組織的、財政的に独立した地方自治団体が、地域住民の其の代表とならなければならない。

 自主管理と自治の発展は、社会、経済を担当する国会第二院の設立を要求する。

 これらはどれも〈連帯〉指導者や理論家たちが、運動の初期に語った構想のどれかに含まれる。それをよりあいまいな表現で述べているだけだといっていい。むしろ逆にいえば、ビピフとシュライフェルによって語られた、労働者が国家の所有者だといった政治革命の色調はここでは却けられている。

 〈連帯〉の綱領をみると、30年のあいだ半ばはソ連の従属下で、統一労働者党の失政を耐えつづけてきたポーランドの労働者と大衆、市民の企業現場の次元から掘りかえされた鬱積の流出といった側面におおくの意味が与えられている。生産社会機構の現場からはじまって国家そのものにまで及ぶ自主管理方式の貫徹というモチーフは、むしろ「社会、経済を担当する国会第二院の設定」といった間接的な表現のうちにこめられた。生産社会面で労働者の意志の反映をはかる場所を獲取するというモチーフが、足が地についた最大限の要求だったとみることができよう。

 私見をいわせてもらえば、どうやって国家を〈開かれた〉状態におくかという、現在の〈社会主義〉国に共通した最大の課題にたいする回答はここでは示されていない。この回答を欠けば、どんな生産社会機構の形式を案出しても、国家官僚専制の社会主義(ファシズム)形態が、悪代官によって実施されるか、慈悲深い代官によって執行されるかという差異にしかならず、その本質が国家社会主義あるいは、国家専制資本主義にしか収斂しないことははっきりしている。ただこんどは別の新しい「ノメンクラトゥラ」が形成されてゆくだけだ。たとえ〈連帯〉に結集した労働者や左翼反対派的な理論家たちが、綱領の次元を超えて政治的国家を掌握したとしても、担当者が交替しただけの官僚専制が実現し、生産社会機構を貫いてゆくほかない。そして官僚専制下の国家社会主義の欠陥に飽きあきした〈連帯〉運動の出発時のモチーフを実現したければ、まだしもクーロンのいうように、国家のソ連出先型官僚による支配を蹴って「民族独立と議会制民主主義」を最終目標に設定するほかなくなってしまう。ここまで循環してはじめて、一見すると西欧資本主義の政治形態に逆もどりしたいモチーフのようにみえるポーランド労働者、市民、大衆の希求は、本来的な意味を把握できるものとなった。



 後に、結局ポーランドは「理想の社会主義」への道ではなく、「西欧資本主義の政治形態に逆もどり」する道を選ぶことになる。

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