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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
権力と反権力の現在(7)

官僚専制国家


 「権力と反権力の現在」と題して始めたこのシリーズは論文『権力について』を読み終わった時点で終える予定だったが、ポーランド「連帯」運動への興味が強くなり、さらに論文『ポーランドへの寄与』を読み続けることにした。

 さて、「連帯」が指し示した「本格的な社会主義の構想」を、吉本さんは「史上いちばん遠くまでいった」ものと評価している。そして「〈連帯〉の労働者、知識人、市民、学生たちの運動がどんな構想をもち、なにを実現しようとし、そして何にぶつかって大破しつつあるのかを検討することは、わたしにできる最上のかれらへの寄与のようにおもえる。」と述べている。その検討は、「連帯」が軍事政権の弾圧にさらされていた当時、ポーランドと遠く離れた国の一知識人として、せめてもの連帯を表明する意味を持っていた。論文を『ポーランドへの寄与』と題したゆえんである。

 ソ連型「社会主義」国家(官僚専制国家)は姿を消したが、どの国家も同じような人民抑圧国家に陥る可能性を持っている。ソ連型「社会主義」国家の実態を知ることは現在においても反面教師として有効だ。ソ連型「社会主義」国家の一例として、「連帯」運動時のポーランドの実態を覗いてみよう。もって「他山の石」とすべきだろう。

 また、「連帯」が提示した「本格的な社会主義の構想」を知ることも理想の社会主義のイメージを明瞭にするのに役立つだろう。理想の社会主義を実現するには「現在の世界の二つの体制はあらぬ方向へ、あまりに踏みこみすぎ」てしまっているとしても、理想は継承されねばならない。

「もし私たちが空想家のようだといわれるならば、救いがたい理想主義者だといわれるならば、できもしないことを考えているといわれるならば、何千回でも答えよう。「その通りだ」と。(チェ・ゲバラ)」

 「連帯」運動で中心的な役割を果たしたグダンスク企業連合ストライキ委員会(MKS)が、政府委員会に突きつけた21項目の要求は、社会主義の原則に照合できる水準をもつものであった。「すくなくともつぎに示すいくつかの項目が、社会主義の方向へポーランド国家の軌道をおき直そうとするモチーフを含んでいた。そこまでは云えないばあいでも無意識のうちに、社会主義に接近しようとする労働者、市民、知識人の運動のモチーフを潜在させたものに相違なかった。」と言い、吉本さんは次の項目を抜き出している。


 党および雇用主から独立した自由な労働組合の承認。同組合は、ポーランドが批准したILO(国際労働機関)第87号条約に基くものとする。

 ストライキの権利およびストライキ参加者全員と支援者の安全の保証。

 ポーランド憲法に保証された言論、出版の自由を尊重し、独立出版物の弾圧を中止し、すべての宗教の代表者にマス・メディアを利用する権利を与えること。

 マス・メディアを通じてMKSの存在を報道させ、その要求を公表すること。
6のb
 すべての社会集団に対し、改革計画の討議に参加する可能性を与えること。
12
 党員であるか否かではなく、能力に基いて管理職に選抜すること。党機関、警察(MO)、国家保安警察(SB) の一切の特権を次の方法によって廃止すること。
  -家族手当の平準化。
  -消費財の排他的分配制度の廃止。

 要求内容から、このような要求が出てくる社会背景のおおよそは想像できるが、吉本さんの説明を読んでみよう。

 ポーランドでは、それぞれの企業レベルの労働組合には、工場の副長と管理責任者は加入することになっている。また労働組合の指導者は無記名の投票で選ばれるが、組合役員は候補者リストを提案する権限をもっており、それを通じて党支配をおしつけることができる。

 工場の機構についていえば、工場長、工場長補佐、班長、建設作業の組長、倉庫長、職長、建設技師などの任命には、党の執行委員会の承認がいる。そのほかの任命については、企業の党執行委員会の承認がいる。

 企業管理者と労働者は、毎年9月~10月に、来年度の経済計画の大綱を協議することになっている。労働者側から計画にたいする批判や変更要求があっても、それが実行されることはすくなく、国家が批判や変更要求を拒否して、きめたままの計画が押しつけられたばあいには、受けいれるほか道はのこされていない。

 おなじことは農業でもあらわれる。

 ポーランドの自営農民は農村人口の85%を占め、国民消費の80%を供給している。これにたいし国営農業は生産物の20%を供給している。国家は自営農業を絶滅させようとして、土地所有を零細化し、自営農業の土地相続税は地価の80%にもなり、そのうえ相続者には国家試験が課されて、それに合格しなくてはならない。耕作状態が悪く収穫が不良だとみられたら、土地は国家に接収されることが法律できめられている。

 こういった権限は国家から任命された村長と村の党書記に与えられているが、村長らの悪意的な配剤を制御する手段も、上訴の方法も与えられていない。〈連帯〉運動のさ中にでた自営農民からのアピールをみると、村長と村の党書記は無制限の権力をもち、土地を取上げるために、農民の子弟たちを遠くの学校へ転校させたり、住宅建設を中止させ、子弟を国営農場で働かせるために軍隊に徴集したりする。農業資財の援助そのほかの特権は、国営農業だけに与えられ、自営農民は資財を購入するためには申請書をかき、村長の許可をうけ、認可がおりるまでまたなくてはならない。

 わたしたちがすぐに手にできる新聞、雑誌、書物の情報と知識から組立てられるポーランドの生産社会幾構としての国家は、かなりむき出しの、平板な国家官僚専制とかんがえることができる。そしてこの平板で直接的な生産社会機構としての国家の外側に、文化や芸術や消費社会としての市民や労働者の日常が営まれている。すぐにわかるように、これで官僚機構から自立した企業労働組合や、自主的管理の農民組織をつくろうとする要求が起らなかったら、よほどどうかしている。

 日常の消費社会の方では、どんなことが起っているのか、わたしたちにはよく伝わってこない。せいぜいいまの〈社会主義〉圏のなかでは、ポーランドには芸術や文化や消費社会としての市民や労働者の日常に、比較的自由な雰囲気があると常識的に伝えられているだけだ。



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