2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
『続・大日本帝国の痼疾』(78)

自由民権運動(32)―自由党と改進党の軋轢(3)


 改進党の「気風」については次のように論じている。

 然れどもこの他に一隊の党派あり。彼らの智は能く時勢を識別し、今日は到底、腕力を以て政府に打ち勝つ能わざるを知れり。政府との争は言論の武器に止るべしと決心せり。

 彼らはその身に多少の地位あるを以て、軽挙妄動、天下の笑となりて、既に得たる者を失わんことを恐れ、沈重自ら持して、容易に他に雷同せざるなり。彼らは前者のごとく義侠敢為の胆略なしといえども、政治家の識見を具え、その議論を言うべく行うべき普通平易の範囲に止め、中等人民の常識に訴えて改革を成就する、英国の政治家のごとくせんと欲したり。

 彼らは当世の学者紳士多かりしかば、現在の社会を根本より撹乱して、秩序を破り、自ら波瀾中に巻きこまるるの愚なるを知り、改革を主張するも、秩序を重んじたり。而してその結果、いわゆる改革なるものは、単に政府より参政権の一部を取り、これを自家と同一階級の人民中に分配せんとするに過ぎざるに至れり。

 これらの分子はかつて自由民権の運動の天下を震動するや、共に与に周旋せりといえども、到底他の敢為勇往の分子と相一致す可らざりしなり。此に於てか大隈の朝廷を出でて民間に下るや、この徒は好首領を得たりとなし、相率いてこれに投じ、枝を連ね、蔓(つる)を引きて改進党を作りたれは、安芸に於て、越後に於て、備前に於て、讃岐に於て、駿河に於て、大坂に於て、東京の近傍に於て、かつて自由党に投じたる平和、智恵、財産の分子は、相率いて脱して改進党を組織せり。

 ここに於てか改進党の成るや、一朝にしてその信用と政治上の実力は、殆んど自由党と匹敵するに至りしかは、一点不和の火は、この時に於て已に両党の間に入れり。



 続いて、その目指すところは同じでも、両党の「気風」の相違が大きな溝を作り、それが政府のつけいる隙ともなり、やがて決定的な相互憎悪にまで至る様相を記述している。

 彼らは均しく明治政府が国家万能主義を持して人民に臨み、これよりして中央集権、官尊民卑、民業保護、租税過重、軍隊政治、政府人民の相反を生ずるを悪みて崛起(くっき)し、個人的自由主義、地方分権、民業上の任他政略、官民同等、民力休養を主張して、政府の国家主義に反対せるなり。

 然れども自由党は仏国風の政論にして、敢為活達を尚(たっ)とび、改進党は英国風の政党にして、沈重和平を尚とぶ。一は人権論者にして、一は実利論者なり。一は政党というよりも、むしろ社会改革組合というべき有様にして、社会の大根底より改めんとし、一は万事の改革巳に成りたる英国にある政党のごとく、ただ現実の問題によりて相争わんとす。一はその主義を社会に吹き込まんとするが故に、社会の活火たる青年に近づき、一は意見を政治の上に実行せんとせるが故に、勢、政治上の勢力たるべき、老実家を求む。彼らは各々その為すべきことを為したるなり。

 然れどもその気風の異なるが為に、一毫(いちごう)の差、千里の別を生じ、両党の勢力進むに従ってその憎悪いよいよ甚しく、自由党は改進党の勇なくして狡獪(こうかい)に陥るを責め、改進党は自由党が思慮なくして軽奔(けいほん)し、粗暴過激に陥るを卑(いや)しみ、不和争闘の種は久しく熟したり。

 改進党の新聞紙が、板垣の事を論ずるや、政府の策士は得たり賢(かしこ)しと、政府に出入する自由党員を教唆(きょうさ)せり。火は薪に移れり、油は薪上に注がれたり。

 ここに於てか自由党員古沢滋は『自由新聞』に於て、先ず改進党の総理大隈が政府にありし時の過失を掲げてこれを論じ、誇張の筆を以て陰私を発(あば)けり。次で偽党撲滅の演説あり、奸党退治の集会あり。改進党もまた自由党の過激疎暴を撃って容赦せず。

 ここに於てか政府の策その図に中り、民間の両党、相争ってその公敵たる政府、政府党に当るを忘れたり。己に争う、抜くべからざるの怨恨を種(う)えたり。ここに於てか十年以来、政府に対して攻撃同盟を組み、席巻の勢(いきおい)を以て進み来りたる民間党の気焔、殆んど全く消滅し、政府をしてもはや民間党憂うるに足らずとして、十六年の秋を以て、帝政党を解かしむるに至れり。これ実に民間党に取りては終生の大失策にてありき。



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