2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
『続・大日本帝国の痼疾』(57)

自由民権運動(11)―都市民権派の潮流(1)


(今回の資料は教科書B)

 「V NAROD ! (ヴ・ナロード!」(人民の中へ!)という運動を担ったロシアの革命家たちをナロードニキという。

 色川さんは都市民権家たちを「若き日本のナロードニキ」と呼んでいる。彼らは民衆の啓蒙・覚醒こそを自らの使命と信じ、全国を駆け巡り、民衆の中に飛び込み、無償の遊説活動に自らの青春を捧げたのだった。

 彼らは馬の背にゆられ、あるいは人力車をはせ、泥濘や雪道で足をとられ、丘をこえ、北風の吹きあれる北浦や霞ケ浦を舟で渡り、利根川を下り、町から村へと倦むことなく走り回った。

 目的地に着くと、少しでも多くの聴衆が集まれるようにと、会場も豪農の屋敷などはできるだけ避け、学校や社寺や辻堂や倉庫などに設営してもらって熱弁をふるった。


 ある辻堂では老婆から賽銭を投げられる光景も見られたという。『朝野新聞』の末広重恭(しげやす)の演説紀行を読むと、沼津の近くの演説会で一村全員が参加したのに驚いている。また、茨城県の真壁郡関本村の演説会では、七十をこえた老人が感激して涙を流し、わしらはもうすぐ死ぬが、死んでもなお貴下らの戦いを応援したいと叫んで演説者を絶句させている。

 接待するものはその土地の民権家で、演説の後、懇親会で酒肴を供されることもあったが、その宴とて深夜までの激論の場になるのがふつうであった。竹内正志(せいし)など、厳寒の越後、佐渡で、じつに52日間にわたり、二十数回の演説会をこなしている。

 野村本之助によると、旅費は多く自弁であったため、車代を節約して徒歩で行くこともあったという。しかも、今日と違って、言論、思想の自由が極端に制限されていたため、会場は警官の立ち会い、臨検をうけ、演説中止を命じられたり、解散を命じられたり、時によっては投獄を覚悟して話さなくてはならなかった。



 兄から聞かされたのかラジオでだったか記憶は定かではないが、私は少年の時に「オッペケペー節」というのを知っていた。その歌の創始者の名が川上音二郎といったのも記憶していた。おもしろい歌を歌うおもしろいおじさんだと思っていた。ところが、この人、なんとすごい人だったことを今回初めて知った。

 川上は新派劇の創始者でもある。民権家としても「自由童子」と名乗って遊説に奔走している。また『日本立憲政党新聞』(1882年創立)の名義人でもあった。その関係で、出版条例違反で投獄されている。さらに、集会条例違反、官吏侮辱の罪などに問われ、170回も検挙されたという。

 民権家に対する弾圧は“過激”であった。いつだってはじめは民衆運動が過激派なのではなく、国家権力の弾圧が過激派なのだ。当時の内務省総務局の統計によると、

1881(明治14)年
 演題認可数12,000件のうち全会解散禁止171件  新聞の発行停止・禁止46件
 新聞記者の罰金182件  禁獄15件、併罪(へいざい)11件

検挙理由事例

 千葉県人山田島吉は「廟堂の暴虐官吏は天子様を横道に引込み」と演説して重禁錮2年・罰金50円

 山梨の『峡中(きょうちゅう)新報』記者野中真(まこと)はその演説中に官吏侮辱の文句があったと告発されて重禁錮1年・罰金50円

 『東京横浜毎日新聞』記者小松渉(わたる)も同じ罪で重禁錮8ヵ月・罰金30円

 群馬に演説にいった堀口昇は、「政府は悪人の肩をもつことなきはず」と一言いって集会条例違反、演説禁止1年

 山口県人熊谷成三は水戸の演説会で不敬の言辞ありといわれて重禁錮1年・罰金50円、

 静岡の『東海暁鐘(ぎょうしょう)新報』社長前島豊太郎は演説中天子を賊徒と呼んだと臨検の警官に強弁されて重禁錮3年・罰金900円

 だが、これによって民権家が沈黙しなかった事実は、翌1882(明治15)年に演説会数が倍増してゆくという勢いの中にも示されている。このとき〝自由か死か″の叫びは、彼らにとって単なる美辞麗句ではなかったのである。

 こうした民権派ジャーナリストや都市の演説団体の活動の他に、権力の弾圧から人民の人権をまもる民権派代言(弁護)事務所などが大きな役割をはたしていた。中でも自由党系の広徳館の本支部や改進党系の修身社は有名である。こうした法律団体に所属する気骨ある代言人たちが、どのような奮闘をしたかは、最近の研究でも明らかにされている(森長英三郎『裁判自由民権時代』)。



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