FC2ブログ
2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
歴史隠蔽偽造主義者たち(10)

「慰安婦強制連行」捏造論(3)

 前2回の今田さんの論考によれば「慰安婦強制連行」捏造論など全く無知にして無恥な者たちにしか為し得ない妄言であることは明白だ。だが哀しいかな、そうした無知にして無恥な連中が政界にはびこっている。『週間金曜日1014号』(2014年10月31日刊)が「歴史修正主義 日本の政治家に蔓延する病」という特集を組んでいる。その特集の巻頭論考を書かれているのは、このブログに何度も登場して戴いている能川元一さんである。その論考を取り上げよう。その論考の表題と枕の文は次の通りである。
なぜかくも愚かで低次元な議論がまかり通るのか
国会内外の妄言に見る「自民党・右派の醜態」

自民党や右派は、『朝日』バッシングによって自分たちの「慰安婦」をめぐる主張が正当化されたとでも思っているのか。その言動を検証すると、あまりに見当外れの暴論ばかりだ。こうした結果、世界での日本の評価を決定的に貶めている現実を彼らは理解できないのか。

 では本文を読んでいこう。無知にして無恥な政治家が続々登場する。

 安倍内閣は、『朝日新聞』が8月5日付朝刊で故吉田清治氏の「証言」を取り上げた過去の記事を撤回したのを最大限利用し、「慰安婦」問題を歪曲する試みを今日も続けている。

 自民党の石破茂幹事長(当時)は早くも8月5日当日、「検証を議会の場で行うことが必要かもしれない」と発言、『朝日』関係者を国会招致する可能性を示唆した。その後10月に、『産経新聞』の前ソウル支局長が朴槿恵(ぱくうね)大統領への名誉毀損容疑で起訴されるとメディアに強権的に介入しようとする韓国政府への批判が強まったが、自民党前幹事長がメディア関係者への恫喝ともとれる発言をしていたことも記憶されるべきだろう。

 またこの日の石破発言についてもう一つ指摘しておきたいのは、「国民の苦しみや悲しみをどう解消するか」などという転倒した課題を設定してみせている点である。これは、安倍晋三首相のお気に入りのフレーズともなった。『夕刊フジ』9月5日付の単独インタビューで、
「(「誤報」で)多くの人が悲しみ、苦しみ、国際社会において日本の名誉が傷つけられている」
と発言している。

 10月3日には、衆院予算委員会で自民党政調会長の稲田朋美議員が「吉田証言をもとに日本の名誉は地に落ちている」とし、党内に吉田「証言」の影響を検証する特別委員会を設置すると表明。これに対し首相は、
「多くの人々が傷つき悲しみ、苦しみ、怒りを覚え、日本のイメージは大きく傷ついた」
「いわれなき中傷がいま世界で行われている。誤報によって作り出された」
と答弁した。

 しかし『朝日』の「誤報」は日本軍「慰安婦」問題の全体を認識するうえでは些末なものにすぎず、国際社会に与えた影響が微々たるものであることは本誌が再三指摘してきたとおりだ。

「強制連行」はあった

 野党側からも、いち早く『朝日』の検証記事に反応した一人が、大阪市の橋下徹市長だったことは驚くにあたらない。日本軍「慰安婦」について「必要だった」などとした発言が、当人が代表をしていた旧「日本維新の会」の党勢衰退につながったと見られていたからだ。

 8月8日の登庁時の会見では、
「少しでも僕が発言したことが(『朝日』の訂正の)きっかけとなったんであれば、それはもう僕は政治家冥利に尽きます」
と自画自賛した。さらに「挺身隊」との混同や、吉田「証言」の紹介は他紙にもあったとする『朝日』の反論について、橋下市長は
「読んでいて不快に思った。自分を正当化している」
と激しく非難している。しかし橋下市長は、同じように他国にも「慰安婦」のような女性はいたとして、日本軍を「正当化」しようとしたのではなかったのか。

 この旧「日本維新の会」から分かれた「次世代の党」幹事長の山田宏衆院議員も、以前から「河野談話」の取り消しを要求しているが、今度は「談話」発表時の河野洋平官房長官(当時)の記者会見での発言が、「強制連行」に言及していことが問題だと主張し始めた(『産経』10月20日ほか)。これについては、菅義偉官房長官も10月21日の参院内閣委員会での答弁で、
「私どもはそこ(注=河野元官房長官の「強制連行」発言)は否定し、政府として日本の名誉、信頼を回復すべく、しっかり訴えている」
と同調。政府の公式な意思として、「強制連行」を否定する結果となった。翌22日付の『朝鮮日報』電子版は「菅長官が河野元長官の発言を明確に否定したのは今回が初めて」と報じており、今後反響が国外で拡大する可能性は高い。

 しかし、これまで国内の研究者、被害者の支援団体の間だけではなく国際的にも、吉田「証言」には依拠せずに就業詐欺や甘言、人身売買により、本人の意に反して「慰安所」に送られたことが「強制連行」と認識されている。また、日本軍の占領地で直接的な暴力や脅迫による、安倍首相の言う「人さらい」のような「強制連行」があった事実も明らかになっている。

 こうした前提を無視し、「強制連行」の否定にこだわればこだわるほど、首相や右派の「慰安婦」問題理解の歪みは国際社会での孤立を招いている。

 安倍首相は9月14日にNHKの番組に出演した際、『朝日』の「誤報」により「日本兵が、人さらいのように人の家に入っていって子どもをさらって慰安婦にした」ことを国際社会が「事実」だと受けとめたため、各地で「慰安婦」碑ができているなどと語った。

被害者への「二次加害」

 だが米国パリセイズ・パーク市で最初に「慰安婦」碑が設置されたのは、吉田「証言」が報じられたはるか後の2010年10月で、そのきっかけは皮肉にも第一次安倍内閣時代の07年、首相の「狭義の意味での強制性を裏付ける資料はなかった」という発言が米国で批判を浴びたためだ。事実、碑文などに用いられている「abduct」という語は、被害者を騙して誘拐する行為も指す動詞だ。

 なおこの07年には、訪米した安倍首相はブッシュ大統領(当時)の共同記者会見で「慰安婦」問題を追及された挙げ句、
「元慰安婦の方々に、人間として、また総理として心から同情するとともに、そうした極めて苦しい状況におかれたことについて申し訳ないという気持ちでいっぱいである」
などと発言。今になって「慰安婦」問題は「言われなき中傷」などと口にする安倍首相は、7年前と同じ発言をできるのか。

 一方で政府は、すでに「強制連行」否定への具体的な一歩を踏み出している。外務省のホームページから、「アジア女性基金」への「拠金呼びかけ文」が削除されていたことが翌10月11日に明らかとなった。菅官房長官は10月15日の会見で「政府作成の文書とそうでない文書が混在」していたため「整理」したと説明。だが、削除のきっかけとなったのは、前出の山田議員が同月6日の衆院予算委員会で、呼びかけ文の「十代の少女までも含む多くの女性を強制的に『慰安婦』として軍に従わせた」という表現を問題視する質問をしたことであり政府の意図は明白だ。

 現に韓国外務省報道官は12日、「河野洋平官房長官談話を継承するという日本政府の発言が信じられるのか疑問だ」と、呼びかけ文の削除を批判している。

 自民党の動きはさらに露骨だ。同党の外交・経済連携本部国際情報検討委員会(原田義昭委員長)は9月19日、「慰安婦」問題に関する決議を採択したが、そこでは「いわゆる慰安婦の『強制連行』の事実は否定され、性的虐待(、、、、)も否定された」(傍点引用者)と、日本軍の責任はもとより、何と「慰安所」における人権侵害そのものを否認している。すべてを吉田「証言」の「誤報」に還元する、暴論の極地というべき主張だろう。

 さらに同党の萩生田光一総裁特別補佐は10月6日に出演したテレビ番組で、「河野談話」について「見直しはしないが、新たな談話を出すことで結果として骨抜きになる」などと発言した。しかし内容面で後退した新談話を出せば事実上「河野談話」を否定したものと受けとられるのは確実で、こうした姑息な方法で内外の批判をかわすことは到底不可能だろう。

 このような政府・与党の動きは日韓関係の改善を妨げるのみならず、いまだ世界各地に生存している日本軍による戦時性暴力被害者に対する悪質な二次加害であることを、決して忘れてはなるまい。
スポンサーサイト