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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
歴史隠蔽偽造主義者たち(9)

「慰安婦強制連行」捏造論(2)

前回『「慰安婦強制連行」捏造論(1)』の引用文の続きです。
動員対象に「軍慰安婦」

 一方、当時の「動員」の対象職種に「軍慰安婦」があったことを示す、いくつかの公文書が存在する。その一つが、43年の公文書〈文書B〉だ。厚生省関連の「動員」業務の中に「軍慰安所に於ける酌婦女給等の雇入就職の認可に付ての厚生大臣への稟伺(りんし 労務調整令に依るもの)」があることを明記している。

 「労務調整令」とは、「国民徴用令」とともに、「動員」を国民に強制する法的根拠になった法令だ。日本の植民地・朝鮮にも適用された。違反すれば厳しい罰則があった。

 この公文書によると、「慰安婦」にするための「供出」の認可権限は同年12月から、それまで厚生大臣(あるいは朝鮮総督)であったものを廃止し、地方長官(内地では各県知事、朝鮮では道知事に該当)に委譲した。

 さらに、44年の公文書〈文書C〉では同年1月から、その権限を県(道)内に限り廃止した。実態の後追い措置だろうが、軍の命令と日本内地の知事の認可だけで、官憲が朝鮮で「慰安婦狩り」をできるようにしたと考えられる。

 上文中に「稟伺(りんし)」という初めて出会う熟語が出てきた。「伺」の意味は「うかがう」だから、おおよその意味は分かるが、念のため手元にある国語辞典と漢和辞典を全て調べてみたが、どこにもこの熟語はなかった。官吏だけに通用した用語なのだろうか。
 念のため、「新漢和辞典(大修館版)によると「稟」の意味は7点挙げられているが、ここで使われている意味としては「⑥つつしむ」「⑦申し上げる。奏上する」が該当する。


「極秘」の通牒が示すもの

 44年の公文書〈文書C〉には、不可解な個所が二つある。
 一つ目は、「動員」先の労働の職種を示す文字の一部が、黒い墨で消され、「(×××××××)慰安所的必要に依り酌婦女給を雇入れの場合」となっていることだ。
 二つ目は、根拠法令として示されている「昭和十六年十二月十六日」の厚生省の「第一八六号通牒」がどういうものであるのか不明なことだ。

 一つ目の疑問は、国立公文書館で、現物の公文書をよく透かして見ることで解決した。墨で消されている文字は、「○の要求に依り」だと、なんとか判読できる。「○」とは「軍」の伏せ字だろう。
 二つ目の疑問は、「極秘」という印のついた、戦中の厚生省の通牒〈文書D〉の発見で解決した。ピンク色の表紙の裏には「注意」と題して次のような文章がある。
 〈本書は労務調整令関係事務遂行上の参考資料として同令関係通牒を集録したるものなるも何れも秘及極秘扱の通牒なるを以て取扱に付ては万全を期し秘密保持に特に注意を要す〉

 通牒には12の「業態」が列挙され、その4番目に「酌婦、女給」がある。その下の説明文「認可標準」には、「○の要求に依り慰安所的必要ある場合に厚生省に禀伺して承認を受けたる場合の当該業務への雇入のみ認可す」とある。

 14歳以上25歳未満で、専門技能もなく、国民学校(小学校に相当)を卒業もしていない女子の「動員」先の職種を、官庁が指定したものだ(労務調整令第7条)。当時の朝鮮は日本内地と違って義務教育制が導入されず、朝鮮人女性の大半が国民学校に行けなかった(注4)。

(注4)
 植民地朝鮮の教育事情は、『証言・未来への記憶・アジア「慰安婦」証言集I」所収の金富子氏の論文に詳しい。


 この「極秘」の通牒は教育を受けた一部の女性を除き、未成年を含む大半の若い朝鮮人女性を「軍慰安婦」として、日本の官憲が強制連行したことを示す決定的証拠である。ちなみに、同通牒は、戦中の内務省職員、故・鈴木僊吉(せんきち)が秘蔵していたものだ。

 公文書集〈文書A〉には、「国民動員計画」による朝鮮人の「供出」が急増し、朝鮮人の逃亡や抵抗が激増するとし、次のような官憲による取り締まりの強化を説くくだりがある。

日本官憲こそ大うそつき

 〈未婚女子の徴用は必至にして中には此等を慰安婦となすが如き荒唐無稽なる流言巷間に伝はり此等悪質なる流言と相挨って労務事情は今後益々困難に赴くものと予想せらる…鮮内外に於ける労務者の供給確保の為には労務動員手段の強化……は必至にして……国民徴用令、労務調整令違反の根絶……労務に関する悪質流言の取締……等警察力を以て指導取締を強化する……を必要とす〉

 しかし、これまで明らかになったように、「慰安婦となす」という「動員」目的は「荒唐無稽なる流言」ではなく、官憲が必死に隠そうとした"軍事機密"だった。朝鮮人女性を強制連行した当時の日本官憲こそ、大うそつきである。

 いま、「慰安婦の強制連行を示す証拠はない」などと、戦中の日本官憲と同じ立場に立った言説を、安倍政権や右翼タカ派の学者らが繰り返している(注5)。歴史を歪曲することは許されない。

(注5)
 秦郁彦氏『慰安婦と戦場の性』(99年、新潮社)は、「慰安婦となすがごとき…流言」を「(朝鮮)総督府では単なるデマではなく、一種の反日謀略ではないかと疑っていた」と、当時の日本官憲の発言を正当なもののように紹介している[368頁]。


 またしても歴史隠蔽偽造主義者の破廉恥親玉・秦郁彦が登場している。
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