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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
永遠の不服従のために(33)

国家テロリズム(10)

 狂気のブッシュが訪日(2002年2月17日-19日)して、19日に国会で演説をしている。辺見さんは「戦争ⅲ節」では、前回のブッシュの一般教書演説に続けて、ブッシュの国会演説を取り上げている。憂鬱な日常の出来事と絡めながら、ブッシュの演説によりさらに憂鬱さが高じていく自らの心情を見つめながら書き継いでいる。

 ちなみにその時のブッシュ演説の草稿全文が「アメリカンセンターJAPAN」というサイトで読むことが出来る。紹介しておこう。
『ジョージ・W・ブッシュ アメリカ大統領 国会演説』

 では「ⅲ節」を読んでいこう。

 2002年2月19日朝、テレビでその男の顔を見ていたら、うわべは柔和そうだけれど、そのじつ性根の腐った公卿とか幇間(ほうかん)とか陰間(かげま)を連想した。陰間にしては、ま、歳がいきすぎてはいるか。その男が、重そうな目蓋をしばたたきながら、べちゃくちゃと絡まりつくような口調でしやべくっている。ワシントンからブッシュの訪日にくっついてきたのだ。9・11の同時テロ以来、ばかのブッシュにさも深遠なる哲学でもあるかのように報じ、ペンタゴンの戦争政策をまったく無批判に宣伝してきた腰抜け記者。いままた、聞くに堪えない米国ベッタリの"解説"をしている。もしこんな手合いが私の同僚だったら、職場で殴るなり小突くなりしていただろう。私は今朝も寝起きが悪い。いったんテレビを消してトイレヘ。小便というより、まだそれになりきっていない酒がこれでもかこれでもかとでてきた。急に躰が軽くなる。寒くなる。セサミンを飲み、コーヒーを淹(い)れていたら、ガスレンジ・フードのフィルター屋がきて、インターフォン越しに、特別セール期間中だからとねばる。「私は留守の者だから」といって追い返す。もうかれこれ6年も、この手で物売り、勧誘を撃退している。留守ったって、だれか帰ってくるわけじやないけど。外を竿竹屋がスピーカーのボリュームを目一杯上げて通りすぎていく。再びテレビのスイッチを入れたら、ブッシュの国会演説がもうはじまっていた。

「昨秋、上海で小泉首相が私に特別な贈り物をくれた。『悪をくじき、地球に平和をもたらす矢』と首相自ら書きこんだという鏑矢(かぶらや)だった。彼はこれは自由を守り抜くために勝たなくてはならぬ戦いだ』と私にいった。私はそのとき、彼に確約した。自由は勝つ、と。文明とテロリズムは共存しえない。テロをうち負かし、われわれは世界の平和を守るだろう」。

 私の税金は、鏑矢代になったりするのか。唐突に、確定申告の準備をしなければならないことを思い出す。気が滅入る。「サオヤー、サオダケー。二本で千円、10年前のお値段です」の大音響が、ところどころブッシュの声をかき消す。手下のコイズミが親分ブッシュの演説に聴き入っている。感に堪えない顔をして。狂(たぶ)れ心の著しい宗主国の頭目が、従属国の国会でいいたい放題だ。

「日本と米国はいま、テロリストの組織を探し、破壊する作業の途上にある。あなた方の外交努力のおかげで、世界的な反テロ同盟を構築することができた。自衛隊は重要な後方支援を提供してくれている」。

 この文脈だと、日本もいわゆる「反テロ戦争」の重要な一翼を担い、米国とともにテロ組織を「破壊する作業」にいそしんでいることになる。日本の積極的な戦争加担をブッシュはしきりに誉めているのだ。それでいいのか。野党席からはヤジーつ飛ばない。ブッシュはなおもつづけた。

「テロリストの脅威に対する日本の姿勢が、日米両国の同盟を強固にし、日本のかけがえのない役割を示した。それはアジアにはじまり、地球規模の位置を占めるようになった」。

 忠太コイズミは飼い主ブッシュにどんな約束をしたのだろう。死ぬまでついていきますとでもいったか。日本は米国による反テロ戦争のグローバル化の、もっとも忠実な随伴者と見なされている。

 社民党はなぜ抗議しないのか。共産党はなぜ退場しないのか。静聴するのがこの場合エチケットだとでもいうのか。宗主国の親玉に睥睨(へいげい)されて、肝が縮んでしまったか。その程度の野党か。ブッシュにはエチケットなどないのだ。アフガニスタンに対する一方的軍事攻撃、あれに一片のエチケットでもあっただろうか。あれは人間に対する礼儀もへちまもない戦争犯罪ではないか。現役の戦争犯罪者に国会演説をさせていいのか。結局、野党もまた、この国がかつてない戦争構造を形成していく過程での、あくなき抵抗者などでは決してなく、ものわかりのいい立会人にすぎないのではないか。などとくさぐさ考えていたら、電話が入り、反射的に受話器を取ったら、ディスプレーに「コウシュウデンワ」の表示がでた。受話器を取ったのは失敗だ。公衆電話から私に連絡しようとする者たちのほとんどは、右にせよ左にせよ、発信元をトレースされるのを恐れている連中ばかりだ。つまり、なぜだか私か警察に盗聴されているという前提で電話をかけてくる。むろん、愉快な電話などあるわけがない。今回は中年の男の押し殺しただみ声で、「ばーか、死ね」。これだけで切れた。アフガンから帰国して間もない先月にも、同じ声の電話があった。そのときは「死ね、ばか」だったが。ただでさえ鬱気味なのに、いっそう気が塞ぐ。心の片隅では、これはかならずしも右翼筋ではないのかもしれない、と思ってみたりする。昔つきあった女の愛人とか亭主とかではないか、などと。どちらにせよ、警察に警護を頼むわけにはいかない。だいたい、洒落にもならない。受話器に向かって、私も「ばーか、死ねよ」と低くいってみる。だれにともなく、薄い殺意のようなものがわいてくる。胸底がなんだか酸っぱくなる。呆然としていたら、またインターフォンだ。ソファーを届けにきたという。忘れていた。今日が搬送日たった。不機嫌なおやじとこれも不機嫌な茶髪の若者が茶色の安物のソファーを運んでくる。私は家具屋でサイズを見誤ったらしい。ソファーは部屋の空間のほとんどを占拠している。私は超強力粘着剤(従来比二倍)つきの家具専用フェルトを、約束どおり、ソファーの脚に張りつけてくれるよう頼む。おやじはしぶしぶその作業に取りかかる。一方、若者は私にトイレを貸してくれという。茶髪はトイレに入ったきりなかなかでてこない。その間、おやじが茶髪の悪口をいいまくる。「あんなのは馘(くび)だよ。やる気がねえんだから」。戦争狂ブッシュの演説はまだつづいている。

「太平洋地域を自由主義諸国の共同体にするという将来像を実現するため、日本と米国が今まで以上に緊密に行動していかなければならない。目的は明確だ。幸い、われわれの同盟関係はもっとも強い」。

 おやじはテレビを一瞥もせず、茶髪の悪口をいいつづけている。茶髪はまだトイレにいる。ブッシュはいう。

「われわれは韓国への侵略を抑止し、日本と米国は安全保障の関係を強めるだろう。米国は台湾への関与を忘れず、この地域の人々を守るために実効的なミサイル防衛計画を進めていく」。

 フェルトの張りつけ作業が終わった。いかにも大げさなソファーが、いま部屋にある。きょうはここで昼寝をしよう。このソファーに横たわっている私の死体を想像してみる。戦争はもうはじまっている。いずれそれがもっとはっきりと眼に見える日がくるであろう。若者がトイレからでてきた。おやじが聞こえよがしに舌打ちをした。

 十日ほど前から辺見さんのブログの記事が全て消去されている。まさかと思うけど、辺見さんをバカ呼ばわりするようなバカな奴の仕業だろうか。あるいは辺見さんの身辺に何か不幸でも起きたのだろうか。気掛かりである。
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