2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
「尖閣諸島棚上げ論」の検討

 前回話題にした宮古島市長選(1月22日投開票)は残念ながら宮古島への陸上自衛隊配備を容認している自民推薦の下地敏彦現職知事が再選された。しかし東京新聞は報道していなかったが、同時に行なわれた宮古島市議会議員補欠選挙(欠員2名5人立候補)では陸自ミサイル部隊の配備に伴う新基地建設反対の石嶺かおりさん(36歳 3児の母)が初当選した。(詳しくは田中龍作ジャーナルの記事『新基地反対の母親が当選 「生命の水を守れ」』をご覧下さい。)

 ところで、「中国脅威論」の検証を始めることにしたが、奇しくも田中龍作ジャーナルの記事がこの問題を取り上げていた紹介しておこう。
『【煽られる脅威】 漁師「(中国に対する)危機感はまったくない」 ~上~』
『【煽られる脅威】 要塞化する観光の島 ~下~』


 さて、私がこれから用いる参考論文は『21世紀中国総研』というサイトに連載されている岡田充(おかだ たかし、共同通信客員論説委員)さんの『海峡両岸論』という論文で、その第1号は2009年2月7日に書かれている。最新号は第74号「脅威論が生む排外主義「日本ボメ」現象再論」(2017年1月17日)である。実は岡田さんの論文『海峡両岸論』を知ったのは、サイト「ちきゅう座」が2017年1月18日に岡田さんの最新号を転載したのを読んだのがきっかけだった。克明に事実を調べ上げ、それを元に堅実な論考を進めている。是非他の号も読んでみたいと思った。

 まだ全部に目を通しているわけではないが、今回からのテーマに直接関係していると思われる論考は「第69号~第74号」のようだ。関心のある方はこれらを直接お読みになればよいわけだが、各号ともかなり長い論文だ。例によって何よりも私自身の勉強のため、岡田さんの論文を用いて今までに疑問を持っていたことを纏めて見ようと思った。

 まず論文の題名『海峡両岸論』について。
 論文の第1号は台湾問題(独立か統一か)を取り上げている。この場合は台湾海峡の両岸ということで、直接には中国大陸と台湾を指している。しかし、国際問題を取り上げるとき、西岸はマレーシア・ベトナム・朝鮮半島も関係してくるし、東岸はブルネイ・フィリピン・日本も関係してこよう。この場合は南シナ海・日本海の両岸という意味に拡大することになる。

 例えば、「中国脅威論」の主要軸の一つである「南シナ海紛争」では中国が管轄権を主張してきた「九段線」は次の上の図とおりであり、関係各国も主張を併記すれば下の図のようになる(南シナ海地図で検索して表れた地図から選びました)。
中国主張の南シナ海領海
南シナ海領海主張地図

 「中国脅威論」の主要軸は「南シナ海紛争」の他に「尖閣諸島問題」があるが、「中国脅威論」の根底を支えているイデオロギー(私は「虚偽意識」と訳している)として、中国・韓国・北朝鮮へのヘイトスピーチとその裏側に付着している「日本自慢」イデオロギーがある。

 では「尖閣諸島問題」から始めよう。

 尖閣諸島の領有権については「棚上げ」という用語がニュースで取り上げられていたが、これの経緯は次のようだ。
 1972年の日中国交正常化時、尖閣諸島の領有権は日中ともに主張していたが、「領有権問題の決着を先送りすること」で日中両政府が了解した。また、1978年の日中平和友好条約調印時にも同様の合意が行なわれたという。この時の双方の首相は田中角栄と周恩来である。

 しかし、現在日本政府は
「尖閣諸島を巡って中国側と『棚上げ』することで合意したという事実はない。」
「尖閣諸島はわが国固有の領土であり、解決すべき領有権問題は存在せず、中国との間で「棚上げ」や「現状維持」で合意した事実もない」
という立場を一貫して主張している。

 「棚上げ合意」で検索すると、この政府見解を否定する記事にたくさん出会う。政府の主張が真っ赤な嘘である決定的な証拠になると思ってサイト「データベース『世界と日本』」に掲載されている『日中国交正常化交渉記録』を読んでみたが、尖閣諸島をめぐっては次のようなやり取りしか記録されていない。

田中総理: 尖閣諸島についてどう思うか?私のところに、いろいろ言ってくる人がいる。

周総理: 尖閣諸島問題については、今回は話したくない。今、これを話すのはよくない。石油が出るから、これが問題になった。石油が出なければ、台湾も米国も問題にしない。


 なるほど、これでは「棚上げ合意」していたとは言えないだろうと思っていたら、岩上安身さんによる矢吹晋さんへのインタビュー記事『外務省が削除した日中「棚上げ」合意の記録 尖閣諸島問題の核心について』に次のような解説があった。

削除された「田中発言」

 『チャイメリカ』『尖閣問題の核心』『尖閣衝突は沖縄返還に始まる』などの著作があり、日米中関係に詳しい元東洋経済新報社記者で横浜市立大学名誉教授の矢吹晋(すすむ)氏は、岩上安身のインタビューの中で、当時の外務省中国課長・橋本恕氏が、田中角栄首相の発言記録を削除したと指摘した。

 矢吹氏によれば、外務省が公表している「田中角栄・周恩来会談」の記録では、尖閣諸島の棚上げを持ちかけた周首相に対する田中首相の返答が残されていないのだという。

 矢吹氏は、大平正芳元総理の追悼文集『去華就実 聞き書き大平正芳』(大平正芳記念財団編、2000年)に収録された「橋本恕の2000年4月4日 清水幹夫への証言」における、次のような記述を引用した。

「周首相は『これ(尖閣問題)を言い出したら、双方とも言うことがいっぱいあって、首脳会談はとてもじゃないが終わりませんよ。だから今回はこれは触れないでおきましょう』と言ったので、田中首相の方も『それはそうだ、じゃ、これは別の機会に』、ということで交渉はすべて終わったのです」

 このように、田中角栄首相の側も、周恩来首相の「棚上げ」提案に対し、「それはそうだ」と合意していたというのである。矢吹氏は、「日本政府は、『尖閣諸島に領土問題は存在しない』という立場と矛盾するという理由から、田中角栄の発言を削除したままにしている」と説明。日中間で尖閣諸島に関する「棚上げ」合意は確かに存在し、約束を反故にして現状を変更しようとしているのは日本側であると指摘した。

 それでは日中平和友好条約の時はどうだったのだろうか。日本の担当者は園田直外務大臣だった。外務省の次の記録記事td bgcolor="yellow">『第087回国会 外務委員会 第13号(1979年5月30日)』によると、その委員会で園田大臣は次のように答弁している。(「棚上げ合意」問題については社会党の土井たか子議員と井上一成が質問している。少し長くなるが土井さんの部分を転載する。)

○塩谷委員長
 土井たか子君。

○土井委員
 私は、まず尖閣列島問題についてお尋ねをして、さらに金大中氏事件に対しての質問に入りたいと存じます。
 園田外務大臣、中国側は口頭で遺憾の意を表明しておられるようであります。その中で、中日両国間の了解に違反していることは明白という旨の部分があるわけでありますが、日中平和友好条約締結の際にはそのような了解があったというふうに考えてよろしいわけでありますか。

○園田国務大臣
 北京における日中友好条約交渉の際、鄧小平副主席と私との間にこの尖閣列島の問題は出たわけであります。私の方から問題を切り出しまして、私が言ったのは、尖閣列島に対するわが国の従来の立場の主張、これを申し述べ、さらに先般のような漁船団のような事件があるのは困る、こういうことを申し上げたわけであります。
 これに対して鄧小平の言われた言葉、そのまま申し上げますと、この前のようなことは今後起こさない、尖閣列島は二十年、三十年いまのままでよろしいと、こう言われただけであります。
 したがいまして、その後来られた鄧小平副主席が、共同記者会見の際、これはたな上げだ、こういう言葉を使われたわけでありまして、北京では全然私の主張に反発もされず、たな上げという言葉も出さずに、両方からそういう言葉を言い合ったままで打ち切ったわけでありますから、ここに若干の食い違いはあると存じます。私は、日本古来の領土であると主張をして、この前のような事件は困る、こう言ったのに対して鄧小平副主席は、ああいう事件は起こさない、尖閣列島は二十年でも三十年でもいまのままでよろしい、こういうことを言われたのであります。


○土井委員
 そうすると、いまの外務大臣の御答弁の中では、北京においては、外務大臣は日本の領有権を明確に主張されたということがはっきりうかがえるわけでありますが、去る二月二十七日の予算の第二分科会の席で、同僚議員がこの尖閣列島問題に対して質問をいたしました節、外務大臣の御答弁はまことにきっぱりしたものであります。その内容は、「有効支配をするために施設をすることは絶対に反対である、」「有効支配のためにやるということになれば、」「外交的な儀礼はなくなるわけでありますから、今後ともその点については、私は自分の所信を貫徹するつもりでございます。」こういうふうに述べていらっしゃるわけでございます。今回のヘリポート建設並びに調査は、先方である中国から見ますと、有効支配の誇示というふうに見て抗議してこられたのではないかと思うわけでありますが、いかがでございますか。

○園田国務大臣
 そういう気配が見られたから申し入れをされたものと理解をいたします。

○土井委員
 そういたしますと、先ほど私が申しました二月二十七日の、まことにきっぱりとした外務大臣御答弁からいたしましても、今後、外務大臣としては、これにどういうふうに対処なさるかというのは大変大事なことになってまいります。この種の問題は、話がだんだん大きくなっていきますと、双方ともなかなか引っ込みがつけがたくなってまいります。したがって、話がこじれないうちに、穏便に処理しなければならないということは、鉄則とも言えると思うわけであります。日中間の友好関係にひびが入らないことを大前提として考えて、外務大臣は中国に対してどのようなアプローチを行うというお考えをお持ちになっていらっしゃるのか。いかがでございますか。

○園田国務大臣
 先ほど井上委員の御質問にお答えしたとおりでありまして、この申し入れに対してどのような対処をするか、現在の尖閣列島の問題をどう扱うかという問題はきわめてむずかしい問題でありますから、慎重に十分検討してやりたいと思いますので、いましばらく時間をおかしを願いたいと存じます。

○土井委員
 慎重に十分御検討ということでありますけれども、しかし現実の問題として、今回の運輸省や総理府の行為というものがあるわけであります。私たちは、これは運輸省や総理府のこれ見よがしのやり方だというふうに思います。外務省として、これに対してどうお考えなんですか。また、田中六助官房長官は、わが国の有効に支配している領土でもあるわけだから当然の措置であり、調査の中止などは考えないと言って、非常に強腰で述べていらっしゃるわけですが、私などこれを見ておりますと、外交的な配慮というのは全く足りないのじゃないかという気がしてなりません。これでは、園田外務大臣が政治生命を賭してがんばられたあの日中平和友好条約締結の際の御努力に水を差すものじゃないかというふうな意見が出てくるのも、至極当然だと思いますが、外務大臣、どのようにお考えになっていますか。

○園田国務大臣
 官房長官の談話は、私も新聞で拝見しただけでありますが、これは一般原則で日本古来の領土であるという立場をとっておりますから、そこで、日本がこれに対する必要な措置をするのはという意味のことを言われたんだと思います。したがいまして私は、この問題によって日中友好関係が阻害されないようにどのようなことをやるか、こういうことを慎重に検討したいと考えております。

○土井委員
 幾ら日本の国内における外務委員会で外務大臣がそのように抗弁されましても、相手方である中国から見れば、そのようには考えられないであろう。非常に強腰のあの発言というのは、私は外交関係からするとまことに刺激的だと言わざるを得ません。したがいまして、今回の調査などは有効支配の誇示ではないということを、中国に対して十分に理解が行き渡るように説明をするということの必要性も出てまいります。外務大臣は、その点についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。

○園田国務大臣
 きのう、とりあえず申し入れのときに伴公使が申しておりますが、今後そういう点も含めて十分検討いたします。

 園田大臣の答弁にはぬらりくらりとした曖昧な部分もあるが、「尖閣列島は二十年、三十年いまのままでよろしい」という提案はそのまま受け入れているし、共同記者会見での鄧小平副主席の「これはたな上げ」という発言を批判したり抗議をしたりしていないのだから、尖閣諸島問題は「棚上げ合意」していたと読むほかないだろう。
スポンサーサイト
宮古島市長選の争点

 関東大震災(1923年)の時に「朝鮮人が暴動を起こした」という流言が拡がって朝鮮人が多数虐殺されたという事件があった。今日(1月20日)の東京新聞が取り上げていた次のような記事を読んで、すぐこの事件を思い出した。

 私は知らなかったのだが、東日本大震災直後に宮城県内で「被災地で外国人犯罪が頻発している」という流言が流布されたそうだ。そのウワサは次のようである
 当時はSNSで「被災地で外国人窃盗団が横行している」「外国人が遺体から金品を盗んでいる」(遺体損壊)といったデマが飛び交い、被災者の間でささやかれていた。宮城県警はこのウワサが事実ではないこと確認している。

 郭基煥(東北学院大教授・共生社会論と言う方がこのデマを聞いた人たちの反応を調査した。調査方法と結果は次のようだった。

 日本国籍の20~69歳、計2100人を対象に実施。質問を郵送し、770人から回答を得た。回収率は36.7%。
 「被災地で外国人の犯罪があるといううわさを聞いた」と答えた人は回答者全体の51.6%で、情報源(複数回答)は「家族や地元住民」が68.0%と口コミが最も多く、次いで「インターネット」が42.9%。うわさとなった犯罪は「略奪、窃盗」97.0%、「遺体損壊」28.0
 うわさを聞いた人たちの内そのうわさを信じた人は86.2%で、年齢や性別で大きな差はなかったという。少ないながら外国人犯罪を「確かに見た」と答えた人(0.4%)、「そうだと思われる現場を見た」と答えた人(1.9%)もいたという。

 人は非常時には根拠のないウワサを信じてしまいやすくなるものだろうか。では多くの人々が、アベコベ軽薄姑息うそつきカルト政権が「集団的自衛権行使容認・戦争法強行採決・海外派兵・高額兵器購入(例:オスプレイ5機、1機当たり約103億円)・沖縄辺野古新基地と高江ヘリパッド建設工事強行」などの悪政の根拠にしている「中国の脅威」を疑おうとしないらしいのはどうしてなのだろうか。今、宮古島市長選挙(22日投開票)で大きな争点になっている自衛隊基地へのミサイル配備の論拠も「中国の脅威」である。東京新聞のこちら特報部(1月16日)はその経緯と基地規模を次のように報道している。

 陸自のミサイル配備計画が明らかになったのは2015年春ごろだ。国の「中期防衛力整備計画(14~18年度)」は南西諸島の防衛強化をうたっており、宮古島へのミサイル配備によって沖縄本島以南の防衛上の「空白」を埋めるのが狙い。中国を念頭に、本島との間の宮古海峡を突破して太平洋へ進攻する艦船をけん制するという。

 計画地は、宮古島中央部の航空自衛隊宮古島分屯基地にほど近いゴルフ場「千代田カントリークラブ(C)」。「こちら特報部が入手した計画案には「宮古島駐屯地(仮称)への配置予定として「部隊」のほか、「島しょに対する進攻を可能な限り洋上において阻止し得る対艦誘導弾部隊」「重要地域の防空を有効に行い得る地対空誘導弾部隊」と物々しい部隊名が並ぶ。部隊総数は700~800人だ。

 折しも、夕刊ゲンダイ(1月19日)で高野孟さんの『安倍政権 離島防衛のためのミサイル基地建設という欺瞞』という論説に出会った。歯切れがよく論拠にも全く虧損(きそん)がない。転載しよう。

 15日に告示された宮古島市長選の焦点は、陸上自衛隊のミサイル基地の建設を認めるか否かである。賛成・反対両陣営とも候補を一本化できず、4人が立つ乱戦模様だが、翁長雄志知事は反対派の前県議を支持している。

 安倍政権は盛んに「中国脅威」論をあおり、今にも中国軍が尖閣を手始めに南西諸島を“島伝い”に攻め上ってくるかのような時代錯誤も甚だしい(太平洋戦争の米軍ではあるまいし!)危機シナリオを振りまいて、まず与那国島に昨年、陸自の沿岸監視隊駐屯地を進出させたのをはじめ、石垣島、この宮古島、そして奄美大島にも基地を造ろうとしている。

 「離島防衛のための南西諸島戦略」というわけだが、これが当初、90年代にいわれ出した時には、「北朝鮮が国家崩壊し、一部武装した難民が大挙して離島に押し寄せる危機が切迫している」という“お話”だった。私はこれについてテレビやシンポジウムで何度も議論して、第1に、北朝鮮はそういう様態では崩壊しない(理由は今は省略)、第2に、仮に崩壊しても難民は99%、鴨緑江を歩いて渡って中国東北へ向かう――なぜなら中国東北には朝鮮族100万人が住むからで、なぜわざわざ海を渡って「資本主義地獄」と教えられている日本に向かうのか。第3に、そもそもそんな大量の難民が乗り組むだけの船がない、と指摘した。

 当時、ある公開の場で、後に防衛大臣となる森本敏にこの意見をぶつけ、「離島防衛なんてまったく架空の話じゃないか」と問うと、彼は苦笑いしながら「いや、実は旧ソ連が攻めてこなくなったので、北海道の陸自がやることがなくなっちゃったんだよ」と言った。

「なーんだ、用済みの陸自の失業対策だったんですか」と私がちゃかし、会場は笑いに包まれた。そんなことで、一時は下火になっていた離島防衛論だったが、野田政権の尖閣国有化の愚挙をきっかけに、東シナ海の“緊張”が高まると、それを利用して安倍が一気に基地建設の具体化を図った。

 マスコミは「宮古海峡を突破して太平洋に進攻する中国艦船を牽制」(16日付東京新聞)などと書き立てるけれども、ご存じですか、あの海峡は日本の領海でも接続水域でもなく公海なので、どこの国の軍民艦船が通過するのも自由であって、「突破」とかいう問題は、そもそも存在しないのだ。

 高野さんの文中にも(16日付東京新聞)からの引用文があるが、この引用の仕方ではこれが「こちら特報部」の記者の意見のように読めるが、私が引用した通り、これは記者が語った言葉ではなく「中期防衛力整備計画(14~18年度)」で語られた主張である。信頼している「こちら特報部」のために付言しておく。

 しかし、高野さんがこの引用文を批判している意図は、政府が垂れ流すウソを検証なしでそのまま引用するのはそのウソの拡散に手を貸しているという点にあると思う。そういう観点からは私も賛成する。今日(1月21日)の東京新聞の社説「首相施政方針 同盟を不変とする誤り」にもその例があった。その部分を引用する。
『中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発など厳しさを増す地域情勢を考えれば、紛争を抑止する警察力としての米軍展開の必要性は当面、認めざるを得ない。』
 これでは「中国の脅威」と「北朝鮮の脅威」を検証なしで認めていることになる。せめて「…地域情勢観…には検証が必要だが」ぐらいの付記があったらよいと思った。

 「中国脅威論」の検証は難しいが、この問題を取り上げているすばらしい論考に出会ったので、次回からそれを読んでみることにする。

(今回の記事から新たにカテゴリー「中国脅威論の信憑性」を設けることにしました。)
マスゴミが報じる世論調査は信用できるか

 私は現在の政権をアベコベ軽薄姑息うそつきカルト政権と呼んでいるがこれが決して誇張でも不当でもないことは、この無知で無恥な連中がやってきたトンデモ政策を俯瞰してみれば明らかだろう。第1次政権時の悪政も含めて列挙して見よう。

教育基本法改悪・特定秘密保護法・自虐史観攻撃・靖國神社公式参拝・従軍慰安婦の強制性否定・内閣法制局人事介入・武器輸出三原則の撤廃・集団的自衛権行使容認・戦争法強行採決・海外派兵・高額兵器購入(例:オスプレイ5機、1機当たり約103億円)・沖縄辺野古新基地と高江ヘリパッド建設工事強行・アベノミクス失敗・GPIF大損隠し・原発輸出と原発再稼働・マスコミへの圧力と言論統制・マイナンバー制度導入・カジノ合法化・TPP強行採決・(消費増税、解雇規制緩和、サービス残業自由化)など貧困格差拡大の諸政策・一方で「地球儀を俯瞰する外交」と称して約70兆円のバラマキ外交・・・

 これまでの報道によると、これらの悪政の支持率は全て不支持率を大幅に下回るが、アベコベ政権の支持率は不支持率を上回っている。例えば、アベコベ軽薄姑息うそつきカルト政権の最終目標のスローガンは「戦後レジームからの脱却」つまり「改憲」である。今日(1月14日)に東京新聞に時事通信が6~9日に実施した1月の世論調査の次のような結果が報道されていた。

(*)安倍政権が目指す改憲は優先的に取り組む政治課題かどうか。
「優先しない」49%
「優先的に取り組む」36.5%
「分からない」13.9%
これに対して (*)安倍内閣の支持率
前月比2.0ポイント増の51.2%
不支持率は3.0ポイント減の26.5%

 報道は「2ヵ月ぶりに五割に戻った」と言い、その理由を「日米両首脳による真珠湾訪問などが評価されたとみられる。」と推測している。確かに安倍の打算的な言動に振り回されている単細胞的な判断をする人が多いのだろう。こういう単細胞的な判断の本質を論じている論文二つに出会った。

 一つは金子勝さんの『残業なし、賃上げ、経済成長というバラ色の虚構が安倍政治』である。金子さんは単細胞的な判断の本質を「安倍首相が「息を吐くように」繰り出す嘘に求めている。核心の部分だけを転載しよう。

 2014年12月に総選挙において、リーマンショックか東日本大震災級のショックがないかぎり、消費税増税の再延期はないと断言しました。ところが、アベノミクスが失敗したことを認めない安倍首相は、伊勢志摩でのG7サミットにおいて、「リーマンショック並みの緊急事態」であると言い出し、国際メディアから袋だたきにあうと、前言を翻し、公然と公約を投げ捨てました。しかし、そのことで責任をとる気配は全くありません。

 アベ政治の特徴は、失敗がバレそうになると、つぎつぎと別の嘘をつく点にあります。つぎつぎと嘘をつくことで、前の嘘を検証させるスキを与えないためです。これまで安倍首相はアベノミクスが目標を達成できないことを批判されると、「道半ば」と言って、失敗の原因を追及させません。失敗しても「道半ば」、永遠に「道半ば」。失敗の原因が明らかにされなければ、同じ失敗が延々と続くことになります。そして責任逃れが永遠に続くのです。メディアが批判をすれば、さまざまな圧力を加えます。まるで北朝鮮のようです。

 もう一つは醍醐聡さんのブログ記事(2017年1月2日)『「和解」という名の歴史の抹消に抗って』で、まさに『「個別の政策では政権が目指す方向に反対の意見が過半であるにも関わらず、安倍内閣支持率が横ばいか、上向く傾向さえある」のはなぜか、』という私が常々考えていた問題に対して納得のいく解答に出会ったと思った。これも核心の部分だけを転載しておく。

 まず、醍醐さんは次のように東京新聞の記事を紹介している。
『ベルラーシのノーベル文学賞作家でジャーナリストのスベトラーナ・アレクシュエービッチは昨年11月に来日し、東京外語大で学生と対話した。その時、彼女は「福島を訪ねて何を思ったか」と尋ねられ、「日本社会にはロシアと同様、抵抗という文化がないように感じる」と語った(『東京新聞』(2016年11月29日)。』

 そして『「抵抗の文化」の日韓落差』を論じながら、次のように述べている。

 個別の政策では政権が目指す方向に反対の意見が過半であるにも関わらず、安倍内閣支持率が横ばいか、上向く傾向さえある有力な理由として、現政権に代わる受け皿が有権者に見えてこないという政治状況がある。

 それとともに、安倍首相が巧みに駆使する情緒的話法―――「和解」、「寛容」、「将来の世代にまで過去の罪を背負わせてはならない」、「未来志向で世界の平和を語るべき」といった情緒的な語りかけ―――に漠然と共感し、歴史を直視する理性がへたれてしまう日本国民の心性が安倍政権への支持を繋ぎとめる一因になっているように思える。

 そして、安倍を退場させるための方策を次のようにまとめている。

 安倍政権の「棄民政治」と対峙し、退場させるには、安倍政権の個別の主要な政策に過半の有権者が反対している民意の受け皿を作ることが緊急の課題である。目下、野党各党が唱えている「野党と市民の共闘」がそれに応えるものか、私は懐疑的であるが、懐疑しているだけでは現実は動かない。今の政権がダメというなら、それに代わる政権構想とそれを担う主体作りの形を指し示す必要がある。

 一介の研究者に何ができるかと言われるとそれまでだが、論壇をハシゴする口まかせの「著名人」に任せては市民の災禍は加重しかねない。「有識者」などという官製用語、マスコミ愛用の呼称を跳ねつける気概を持って、一人一人の市民が「主人なし」の自律した立場に徹して、意見を発信し、行動を起こす以外ない。

 その際には、「アベ政治を許すな」と唱和するだけでなく、自分たちも情緒的安倍話法に毅然と対峙できる理性と知力を研ぎ澄まし、安倍話法に染まりがちな世論を対話の中で変えていく努力が不可欠である。


 ここで私には常々持っている疑問がある。金子さんや醍醐さんはマスゴミが報道する支持率に関する記事をまともな調査結果と考えて論じているのだが、私はその世論調査そのものに疑いを持っている。その観点からネット検索をしていたら、Facebookで安倍内閣支持率を調査するというおもしろい試み『≪Facebook調査≫』に出会った。その結果は

投票は終了しました。ご参加いただきありがとうございます。

あなたは、安倍内閣を支持しますか?
9,282 answers(投票数)
支持しない。8,596 votes(票)92.6%
支持する。 461 votes(票)5.0%
どちらでもない。 225 votes(票)2.4%

 参加者はほとんど若者と考えられるが、圧倒的に不支持者が多い。

 もう一つ「oradaeさん」という方の『安倍晋三の本当の支持率』という記事に出会った。世論調査の裏事情を論じている。私には少し疑問に思う点もあるが、大筋に於いて賛同できる議論だと思った。「安倍晋三の本当の支持率は非常に低い多分5%はありません。」と結論している。長いので転載はしないが、興味のある方は直接ご覧下さい。
「協同組合」思想が世界的な規模で実践されるようになっていた

 《『羽仁五郎の大予言』を読む》の『「独占資本主義の終末」補充編(3)~(19)』(2015年8月15日~2015年10月9日間記事)の中でマルクスが到達した理想の未来社会像を取り上げたが、それは「アソシエーション(協同組合的社会)」と呼ばれている。アソシエーションについては色々な所で取り上げてきたが、『吉本隆明の「ユートピア論」』で吉本さんがその理想モデル像を提示しているので、それを再掲載しておこう。

①賃労働が存在しないこと
②労働者・大衆・市民がじぶんたち相互の直接の合意で、直接に動員できないような軍隊や武装弾圧力をもたないこと
③国家は、存在しているかぎりは、労働者・大衆・市民にたいしていつも開かれていること。いいかえれば、いつでも無記名の直接の票決でリコールできる装置をもっていること
④私有では労働者・大衆・市民の障害や不利益になる「生産の手段」にかぎり、「社会的な共有」とすること

 そして『「独占資本主義の終末」補充編(6)』ではフランスでの協同組合的組織の成功例を取り上げると共に、日本でも「協同組合的組織」へとつながる運動が生まれているという岡田知弘(京都大学教授)さんの知見を紹介している。

 さて、いきなり古い記事の紹介を始めたのは、1月3日に「ちきゅう座」というサイトで吉川駿(よしかわすすむ 元・日本農民新聞社社長)という方の記事『協同組合がユネスコ「無形文化遺産」に申請したドイツと無視する日本』に出会ったからでした。「協同組合」思想が世界的な規模で実践されるようになっていたのを知って嬉しくなったのでした。と同時に、日本政府とマスコミの体たらくに今更ながらあきれ果てました。多くの人に知ってもらいたいと思い、吉川さんの記事を全文転載しておきます。

 ユネスコが昨年11月30日、「共通の利益の実現のために協同組合を組織するという思想と実践」を「無形文化遺産」として登録されていたことが、二週間後の12月14日になって、日本協同組合連絡協議会の発表で分かった[後掲]。登録理由は「共通の利益と価値を通じてコミュニティづくりを行うことができる組織であり、雇用の創出や高齢者支援から都市の活性化や再生可能エネルギープロジェクトまで、さまざまな社会的な問題への創意工夫あふれる解決策を編み出している」とした。協同組合関係者にとって、極めて誇らしいことであり、そのレーゾンデートルが、一地域でなく世界的広さで認められた意義は大きい。しかしなぜかマスコミは、同じ日に登録された日本の「山・鉾・屋台行事」については華々しく報じたが、「協同組合」の登録報道はほとんど無視された。政府各省庁も「歓迎」のコメントすら発表することもなかった。

 今回の申請はドイツから出されたものだそうで、わが国政府も団体も思いもよらなかったもののようだ。日本はこれまで「無形文化遺産」登録を「和食」も含め22件も有しているようだが、地域限定でなくあまねく世界全体の遺産という視点から申請したドイツの姿勢を多としたい。無形文化遺産とは「世代から世代へと伝承され、社会及び集団が自己の環境、自然との相互作用及び歴史に対応して絶えず再現し、かつ、当該社会及び集団に同一性及び継続性の認識を与えることにより、文化の多様性及び人類の創造性に対する尊重を助長するもの」としているそうだ。すなわち、協同組合の存在そのものに普遍的意義を与えるのだ。だが、残念ながら日本の風潮は、度量が狭い。

 とりわけ経済界や政府の主流は、昨今の農協バッシングにみられるように、協同組合を経済成長戦略、農業の成長産業化にとってしか位置づけておらず、したがって成長の足枷と捉えているのではなかろうか。日本政府はこれまで国連が制定した2012年の「国際協同組合年」、2014年の「家族農業年」にも極めて消極的ないし冷淡な対応しかしてこなかった。政府も財界も学会も改めて協同組合を本質的領域から位置づけなおしが必要ではなかろうか。

 上の記事に続いて、2016年12月19日に『「協同組合がユネスコの「無形文化遺産」に登録されました』と題して「日本協同組合連絡協議会」が次のような声明文を発表していたも紹介されていた。


  世界100カ国以上に10 億人の組合員

 国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)は11月30日、エチオピアのアディスアベバで開催された無形文化遺産保護条約第11回政府間委員会において、「協同組合において共通の利益を形にするという思想と実践」のユネスコ無形文化遺産への登録を決定しました。

 決定にあたってユネスコは、協同組合を「共通の利益と価値を通じてコミュニティづくりを行うことができる組織であり、雇用の創出や高齢者支援から都市の活性化や再生可能エネルギープロジェクトまで、さまざまな社会的な問題への創意工夫あふれる解決策を編み出している」としています。協同組合は、人々の自治的な組織であり、自発的に手を結んだ人びとが、共同で所有し民主的に管理する事業体を通じて、共通の経済的、社会的、文化的なニーズと願いをかなえることを目的とした組織です。

 19世紀に英国やドイツなど各国で生まれた協同組合の思想と実践は、全世界に広がり、現在は、世界100ヵ国以上で10億人の組合員が協同組合に参加しています。

 日本には農林漁業協同組合、労働者協同組合、労働金庫などさまざまな協同組合があり、生活協同組合(略称:生協)も数ある協同組合の一つです。

 日本生協連は、協同組合の無形文化遺産への登録を喜びを持って受け止めるとともに、今後も世界の協同組合の仲間と連帯しながら、日本において協同組合の思想と実践をさらに発展させ、よりよい社会づくりに貢献してまいります。

 続いて『ユネスコ「無形文化遺産」について』の解説文が掲載されているので、それも転載しておきます。

 無形文化遺産の保護に関する条約(無形文化遺産保護条約)は、無形文化遺産の保護や無形文化遺産の重要性に関する意識を高めることなどを目的として、2003年10月のユネスコ総会において採択され、2006年4月に効力発生の条件となっていた30ヵ国の条約締結により発効した条約です(日本は2004年6月に世界3番目に条約を締結しました)。

 ここで「無形文化遺産」は、「世代から世代へと伝承され、社会及び集団が自己の環境、自然との相互作用及び歴史に対応して絶えず再現し、かつ、当該社会及び集団に同一性及び継続性の認識を与えることにより、文化の多様性及び人類の創造性に対する尊重を助長するもの」とされています。

 この条約は、ユネスコにおいて「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表(代表一覧表)」や「緊急に保護する必要がある無形文化遺産の一覧表(緊急保護一覧表)」を作成することなどを定めています。

 今回ドイツからの申請に基づき登録が決まった「共通の利益の実現のために協同組合を組織するという思想と実践」は、前者の「代表一覧表」に登録されます(2013年に日本からの申請に基づき登録された「和食」もこの代表一覧表に登録されています)。

年頭のご挨拶

 昨年の1月1日のブログ再開の記事で、アベコベ軽薄姑息うそつきカルト政権の所為で、「年賀状に「おめでとう」のような言葉を書けなくなったと報告して、2014年以来の年賀状の文章を掲載しました。ますます状況は悪くなり、私としては今年も「おめでとう」という言葉を発することが出来ない。で、今年の年賀状は、一休さんの狂歌「門松は冥土の旅の一里塚めでたくもありめでたくもなし」からヒントを頂いて、次のようなりました。


冀望平和

六人に一人の子供がまともな食事を
とれていないと言われています
全ての子供たちがすくすくと豊かに
育っていけるような国になることを
願ってやみません

すると、一休さんが眼を細めて
口ずさむ言葉が聞こえてきました

そうなったら心から
明けまして
目出度くもあり
目出度くもあり


でもね、
無知にして無恥なる愚者どもが
強行採決する悪法の数々は
冥土の旅の… いや違った
戦争への道の一里塚なのだ

すると、一休さんが眼を怒らして
吐き捨てる言葉が聞こえてきました

これでは明けましても
目出度くもなし
目出度くもなし



 そういえば、ここ数日の新聞で「平和」という言葉に随分出会った。今日(5日)の東京新聞の社説の表題は『平和こそ「希望の光」』だったし、同じ面の「読者部だより」の表題は『平和への願いが平和をつくる」だった。それぞれから一部を引用しよう。

「読者部だより」より
『戦争のない世界、仕事や学校の目標、行きたい場所、健康な暮らし。どんな願いも、願うことが実現の第一歩です。平和な社会は、平和が続いてほしいという願いかつくると思います。』

「社説」より
『平和こそが国づくりの基礎であり、今を生きる私たちを照らし、将来世代に引き継ぐべき「希望の光」です。それをないがしろにした「新しい国づくり」など許されません。』
『気掛かりなのは「安倍一強」とされる政治状況です。政権の言動はすべて正しいと受け取る易(やす)きに流れ、異を唱えづらくなってはいないか。』
『衆院議員の任期は昨年十二月、四年の折り返し点をすぎました。首相は会見で「解散は全く考えていない」と否定しましたが、首相がいつ衆院解散・総選挙に踏み切ってもおかしくない状況です。』
『国会での憲法改正論議の進捗(しんちょく)状況次第ですが、仮に総選挙になれば憲法改正を含む「新しい国づくり」を進めるのか否かが争点になる可能性があります。
 私たち有権者にとっては重大な選択です。そのときに備えてしっかり考えておかねばなりません。私たちの心構えも問われる一年になるのです。』


 東京新聞の社説を全文お読みになりたい方は下記をクリックして下さい。
『平和こそ「希望の光」』